2011 Fiscal Year Research-status Report
CCD型イオンイメージセンサを利用した安全に優れた非侵襲型動的イオン測定法の開発
Project/Area Number |
23615005
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
服部 敏明 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80198762)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | イオンセンサ / イオンイメージ / カルシウムイオン / ニュートラルキャリヤー / アセチルコリン / インクジェット / 動画計測 / 細胞観察 |
Research Abstract |
本研究の目的はいくつかのCCD型イオンイメージセンサを開発して,細胞などの生物観察に適用し,安全性の高い非侵襲イオン計測法になることを検証することにある。本年度の成果の1つは,開発したナトリウムイオンイメージセンサを用いて,イオン交換樹一粒でのカルシウムイオンとのイオン交換反応のイメージング計測に成功したことである。イオン交換反応は生物現象ではないが,1mm以下のイオン交換樹脂に適用し,その交換速度測定に成功したことは,細胞観察の模擬実験としてミクロなの観察に開発センサが十分に機能することを示したもので,イメージセンサの妥当性を示すものとしての価値がある。もう一つは,コラーゲン膜で培養したPC12細胞に対して,開発したカルシウムイオンイメージセンサを用いて,センサ上でアセチルコリンの刺激によるカルシウムイオンの細胞内流入の動画測定に成功したことにある。実際に生きている細胞のカルシウムイオンの増減現象を観察できたことは,重要な成果である。さらに,カルシウムイオンイメージセンサに対しては,イオン交換型ではないニュートラルキャリヤー型の新たなイオン感応膜を用いたセンサを開発に成功した。続いて,脂溶性イオン対を用いたアセチルコリンに応答するCCD型イオンイメージセンサの作製に成功した.アセチルコリンに応答するイオンセンサは酵素反応を用いないため,選択性には欠けるが,酵素反応を介さない利点として迅速な測定が可能であり,また,酵素などの溶出による細胞へのダメージは起り難い。また,インクジェット法によるマルチイオンイメージセンサの作製し成功した。インクジェット法による膜調製は,従来のキャスティング法と異なり,膜の領域と膜厚の制御が可能となり,均一な膜の作製に寄与する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度までに,CCD型イオンイメージセンサを用いて,ミクロなイオン交換樹脂の観察による疑似細胞系における濃度測定の検証ができたことと,実際の培養した細胞におけるカルシウムイオン濃度変化の直接観察ができたことは,本年度までに予定していた達成度を上回る成果となった。また,カルシウムイオンイメージセンサに対して異なるイオン感応膜を調製できたことにより,異なる組成膜が細胞に与える影響を評価できるようになる下地を構築できた。今後,2種類のカルシウムイオンイメージセンサの比較により,細胞観察時に安全な膜として比較検証ができることを示している。さらに,酵素を用いないCCD型アセチルコリンイメージセンサを開発した。これまで酵素反応を用いて酵素膜を付加させたアセチルコリンイメージセンサは報告されているが,酵素の使用は共有結合によって強固に酵素を固定しない限り,必然的に細胞の存在環境を汚染する酵素の漏出が起こる。開発したアセチルコリンに応答するイメージセンサは,酵素を用いないため,細胞にダメージを与えることが少なくなるものと考えられ,今後の研究で酵素を用いないセンサの安全性が評価できる。アセチルコリンイメージセンサの作製は,当初の予定では次年度に行なう予定であったが,前倒しで本年度に研究できた。一方で,インクジェット法で膜調製が可能になったことは,イオンイメージセンサの安定性に関わる膜厚や膜の密着性の評価に対する重要な知見を与えることが期待できる成果である。しかし,当初予定した膜厚と電位応答性の評価はまだ十分にできていない。 以上の結果から,主要な点で当初予定した結果を上回る成果が得られているが,一部当初予定した結果が得られていないところがあり,全体的にみて現在までの達成度は,おおむね順調であると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では,次年度に下記の(1)から(3)の具体的なテーマについて研究し,次々年度においては,ゴースト細胞を用いた実験,塩化物イオンに応答する新たなイオンイメージセンサの作製とそれによる細胞計測を行なう予定である。(1)2種類のカルシウムイオンイメージセンサの比較:ニュートラルキャリヤー型のカルシウムイオン感応膜は,イオン交換型の感応膜と比べて検出限界が低い。イオンセンサの検出限界は膜からイオノフォアが溶出することが原因である。そのため,検出限界が低いことは膜からのイオノフォアの漏出が少ないことを暗示するものと考えられ,実際に膜からの可塑剤などの漏出量についてガスクロマトグラフィー法を用いて検討する。一方で,感応膜は脂溶性であるため,膜上で細胞培養をすることは難しいと思われる。そこで,膜上での直接細胞培養ではなく,コラーゲン膜などを用いた膜共存下においての間接的な細胞培養について評価する。(2)酵素膜を用いたアセチルコリンイメージセンサの特性評価と細胞計測:アセチルコリンは,神経伝達物質であり刺激に対して連鎖的な反応を示す。そこで,開発したアセチルコリンイメージセンサを用いて,神経細胞間でのアセチルコリンの放出をリアルタイムに捉えて,連鎖的なアセチルコリン放出動画が得られるかどうかについて検証を行なう。(3)インクジェット製膜法による膜厚と電位応答性の評価および膜の密着性の評価:当該年度に行なえなかった膜厚と電位応答特性の関係について評価する。さらに,半導体とセンシング膜との密着性を改善するためにこれまで用いてきたシルセスキオキサンについてその同族化合物について検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該年度では,申請時に予定していた研究費を実験および成果発表費用に使用した。次年度以降も申請時に予定した研究費を実験に使用する。 すなわち,申請した 1200000円(旅費 300000円,人件費100000円,その他800000円)については,今後の研究推進方策で示した実験テーマを実施するために,センサ膜調製に必要な試薬,細胞および細胞培養に関わる試薬,新型のCCD型イオンイメージセンサの動画計測に関わる用具の購入,および,研究成果を発表するための旅費および論文掲載などに用いる予定である。
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