2012 Fiscal Year Research-status Report
CCD型イオンイメージセンサを利用した安全に優れた非侵襲型動的イオン測定法の開発
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23615005
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
服部 敏明 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80198762)
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Keywords | イオンセンサ / イオンイメージセンサ / 動画計測 / インクジェット / 肥満細胞 / 顆粒放出 / ヒスタミン / Hela細胞 |
Research Abstract |
当該年度は,脂溶性アンモニウムに応答するCCD型イオンイメージセンサを開発した.このイオンイメージセンサをマウス腹腔内の肥満細胞の化合物刺激による顆粒放出挙動に適用し,顆粒放出に伴う細胞外のヒスタミンとセロトニンの短時間での濃度増加・減少をリアルタイムに動画観察としてとらえることに成功した.この動画計測は生物学的に興味深い現象をイオン濃度で捉えたという点で新規性が高い.また,この計測の成功により,可塑化PVC膜CCD型イオンイメージセンサを用いた計測システムが真に生きた細胞に適用できたことを示せた. 安全性に優れた非侵襲型動的イオン測定法を発展させるために,2種類の可塑化PVC膜CCD型カルシウムイオンイメージセンサを作製し,電位応答特性と可塑剤の溶出の比較およびHela細胞の増殖に及ぼす効果について検討した。Hela細胞の増殖においては,いずれの膜の場合にも,コンディショニングを行わないで平衡を保った溶液を添加したには培養液では増殖を抑える効果が見られた.しかし,コンディショニング後に別の溶液で平衡に保った溶液での培養では大きな増殖を抑える効果が見られなかった.このことは,コンディショニングを行なえば,安全性に優れた非侵襲型動的イオン測定になりえることを示すことができた. その他,インクジェット法をもちいることで,可塑化PVC膜を用いたナトリウムイオン-カリウムイオンに応答するマルチイオンイメージセンサの作製に成功した.インクジェット法は,薄い均一な膜厚の調製が可能で微細な膜の塗り分けが可能になった.さらに,膜の密着性に関しては,レーザー顕微鏡で膜の状態を観察することで,膜形成時に気泡発生が膜の密着性の低下をもたらすことを明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度に達成した疑似細胞としてのイオン交換樹脂のイオン交換の観察,およびコラーゲンを利用した培養細胞の刺激応答観察に成功し,さらに,本年度に肥満細胞の顆粒放出に対する直接センサ膜上でのイオン濃度観察に成功した.イオン交換体の実験の成功は,通常のセンサでは捉えられない現象を可塑化PVC膜CCD型イオンイメージセンサが確実にイオンを捉えていることを示しており,イオンイメージセンサの有効性を確かなものとすることができた.次に,コラーゲン膜上で培養したPC12細胞の観察での成功は,細胞環境支持母体を用いることで生きた細胞の生物現象に適用できたことを示している.さらに,肥満細胞の顆粒放出の直接観察に成功したことは,コラーゲンのような細胞環境支持母体を用いなくても細胞にダメージを与えることなく,生命現象を観察できたことを示している.これらの成果により,可塑化PVC膜CCD型イオンイメージセンサが,生きた細胞に害を与えずに非侵襲的に細胞のイオン測定ができることを明らかにした. また,本年度において,可塑化PVC膜CCD型イオンイメージセンサのさらなる安全性を確認するために,Hela細胞の培養に与える可塑剤などの漏出の影響を評価する実験を行った.コンディショニングを行わなければ,細胞培養に負の効果をもたらすが,十分なコンディショニングを行なえば,細胞培養においても影響が少ないことを明らかにした.この成果は,可塑剤の漏れがすくなく,安心して細胞計測ができることを示唆するものと言える. これらの研究実績により,現在までに当初予定した実験計画をほぼ達成している.
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Strategy for Future Research Activity |
25年度は研究の最終年度であり,可塑化PVC膜CCD型イオンイメージセンサを用いて生きた細胞の観察研究のさらなる展開し,これまでの研究成果の発表と論文の投稿,さらに研究の総括を行う予定である. 最終年度に取り組む課題の一つは,これまで細胞の変化をパッチクランプ法のような膜電位でしかとらえることができなかった生命現象にイメージセンサを適用することにある.パッチクランプ法は細胞の膜電位を調べてイオンチャンネルなどの現象を捉える非常に優れた方法であるが,細胞または細胞膜に電極を挿入することが必要になり,物理的な細胞への侵襲は避けられない.しかし,膜電位変化はカリウムイオンまたはナトリウムイオンなどが細胞への流出・流入によって起こる生命現象である.そのため,侵襲型のパッチクランプ法で膜電位変化を捉えなくても非侵襲測定法であるCCD型イオンイメージセンサでイオンの流出・流入を捉えることができれば,生きた細胞を繰り返し使うことが可能になる.カエルの卵母細胞は,特定のにおい物質に応答することが知られ,その細胞に電極を差し込んで細胞内の電位変化としてとらえられている.この生命現象をCCD型イオンイメージセンサでおきかえて測定できるようになれば,非侵襲であるため,卵母細胞は繰り返しの測定が可能になると考えられる. 上記の研究以外に,これまで行ってきた培養細胞に与える可塑剤の効果についての研究,インクジェット法での膜調製の研究,膜の密着性への改善法の研究について,さらなる考察を含めて検討し,最後に,本研究をまとめる予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該年度では,申請時に予定していた研究費を実験および成果発表費用に使用した。次年度以降も申請時に予定した研究費を実験に使用する。 すなわち,申請した研究費については,今後の研究推進方策で示した実験テーマを実施するために,センサ膜調製に必要な試薬,細胞および細胞培養に関わる試薬,新型のCCD型イオンイメージセンサの動画計測に関わる用具の購入,および,研究成果を発表するための旅費および論文掲載,まとめの冊子の作成などに用いる予定である。
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Research Products
(10 results)
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[Presentation] 化学顕微鏡による生理活性物質放出のラベルフリー・リアルタイム計測2012
Author(s)
櫻井孝司, 滝 秀範, 西本淳平, 正木良知, 服部敏明, 高橋一浩, 福司康子, 寺川 進, 石田 誠, 奥村弘一, 澤田和明
Organizer
分子イメージング学会第7回学術集会
Place of Presentation
浜松
Year and Date
20120524-20120524
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