2012 Fiscal Year Research-status Report
光重合性ポリマーを用いる環境および医療分析用高機能マイクロチップ作製技術の開発
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23615008
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
鈴木 茂生 近畿大学, 薬学部, 教授 (00154542)
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Keywords | 環境分析 / 臨床分析 / マイクロ・ナノデバイス / 電気泳動 / 高感度分離分析 / マイクロTAS / 糖鎖分析 / 糖タンパク質 |
Research Abstract |
電気泳動用マイクロ流体デバイスの流路内に,様々な機能をもつ光硬化性アクリルアミドをゲル層をピンポイント構築し,電気泳動分析と同時にイオン選択的透過や濃縮,さらには試薬のゲル透過性を利用して流路内で目的試料成分のみをオンライン標識するなどの試みを行った。概要を以下に記す。 1. 糖鎖認識タンパク質であるレクチンをゲルに封入し,糖鎖の特異的な濃縮と電気泳動分析を行った.レクチンとしてはConcanavain AやSambucus sieboldiana agglutinin,糖タンパク質糖鎖試料には8-aminopyrene-1,3,6-trisulfonateで標識した高マンノース型糖鎖や酸性複合型糖鎖を使用した。レクチン含有ゲルを十字型流路をもつマイクロチップの交差部で重合させ,試料混合物をレクチン層に泳動させると,レクチンに認識された糖鎖だけが特異的にゲル内に濃縮され,ゲル内レクチンのおよそ70%に相当する糖鎖が捕捉された。ゲルに捕捉された糖鎖の溶出に過渡的濃縮を適用した。良好な分離が得られ,感度にして数百倍から数万倍の濃縮効率を達成できた。 2.イオンの選択的濃縮について既に酸性成分の濃縮法について完成したが塩基性物質については着手していなかった。塩基性成分はマイクロチップの素材に吸着しやくすく,,困難を極めたが,コーティング剤,およびイオン性アクリルアミド成分をを検討することで濃縮ができることを実証できた。これらについても本年中に完成させる予定である。 3. 新たな試みとして,ゲル層直近を試料の反応場として利用する方法について検討している。現在fluorescein系色素について,塩基性ゲルの透過性を調査したところ,選択的に一群の誘導体だけが透過することが判明した。そこで,本試薬を使って,アミノ酸やタンパク質などをオンラインで蛍光標識する方法を検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の進展状況 本テーマの要点はマイクロチップ電気泳動にピンポイント光重合を導入して,微量の環境成分の微小全自動分析を実現するための根幹技術を開発することである。具体的な技術内容としては「数万倍以上の濃縮効率」,「試料の特異的選別抽出」,「選択的濃縮」,「高感度検出」からなる。この内,濃縮に関しては既に10万倍という高濃縮率を達成している。また今期はゲル内に適切な捕捉分子を導入し,過渡的濃縮を併用すれば,生物学的な親和性のそうやデリケートは捕捉系を用いても,高分離能を保持したまま,高濃縮率を達成できることを示した。今まで行っていない塩基性試料の濃縮に関する技術についても目処をつけた。さらに塩基性試料についても,実現できることがわかった。しかもこれらの結果は国際的に認知された雑誌に公表しており,今後も発表を継続する予定である。 また,本研究に主体的に関与した所属学生は薬学会の支部奨励賞や分析化学会電気泳動分析研究懇談会で若手ポスター賞を受賞するなど高い評価を得ている。既に,本研究に関連した総説依頼も受けており,今後も様々な分野への応用が期待されている。
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Strategy for Future Research Activity |
マイクロ流体デバイスを用いた分析では試料をマイクロピペット等で一定量導入すれば,その全量を選択的かつ高感度で検出可能な誘導体に変換し,十分な分離能で分析できなければならない。 そのためには,現在,着手している研究を完成させることはもちろん,ポリマー基剤の選択や光硬化技術の改良など,操作性を高めるための基本的な研究を平行して実施したい。また,ここで開発した技術は電気泳動以外にも,キャピラリー電気泳動やクロマトグラフィー用マイクロデバイスのパーツとして有用であり,別の分離場,例えば遠心型マイクロチップとの融合も有効である。これら周辺技術との融合については,既に着手しているので,これらについても研究を継続していく予定である。 また,全自動チップという最終的な目的を達成するためには,現在の市販マイクロチップでは限界がある。今後は京都大学など,周辺施設にあるオープンラボを利用して,本目的に最適な汎用型マイクロチップをデザインし,実用化に向けた取り組みを行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
来年度は60万円という限られた予算内で,本研究の仕上げとして,「陽イオン試薬のpermselective濃縮法の開発」,「試料成分の濃縮とオンライン標識」を行う予定である。 また上記の「今後の研究の推進方策」に従い,継続して,ポリマー基剤,様々な官能基をもつアクリルアミド誘導体や捕捉分子の購入に本予算を執行する。 さらに,上記推進方策でも示した通り,本研究の実用化を達成するために専用流体デバイスを作成するが,それらの経費の一部としても本予算を利用したい。
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Research Products
(16 results)