2011 Fiscal Year Research-status Report
酸化型・還元型チオール類同時計測法の開発と生体内レドックスバランス評価への適用
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23615009
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
吉田 秀幸 福岡大学, 薬学部, 准教授 (20301690)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | レドックス / 分析化学 / リポ酸 / エキシマー蛍光 / クロマトグラフィー / 蛍光誘導体化 |
Research Abstract |
本研究は,α-リポ酸の特異的分析法を基盤とした,生体内の酸化還元状態(レドックスバランス)を評価するための新規計測技術の確立を目指すものである。生体内において酸化型・還元型の両形態で存在するα-リポ酸を,それぞれの形態のままで一斉に計測する分析法を構築し,生体計測を実施することで,生体内レドックスバランスの簡便・高感度・高選択的な分析化学的な評価が可能となるだけでなく,食品栄養学や環境科学,医薬品開発等,幅広い分野への展開も期待される。研究一年目である本年度は,連携研究者の協力の下,標準物質を用いる基礎的検討として以下の三項目を段階的に実施した。(1)ポストカラム誘導体化LCシステムの開発:α-リポ酸及びその関連化合物の酸化型・還元型を対象とした同時計測のためのオンライン還元-ポストカラム誘導体化-LC蛍光検出システムを構築した。分子内エキシマー蛍光誘導体化法の活用により,目的化合物計測のための極めて高い選択性が達成された。(2)オンライン還元カラムの開発に関する研究:(1)で開発したLCシステムについて,更にオンライン還元ユニットの改良に取り組んだ。迅速・強力な還元作用を有し,かつ安定性に優れた還元カラムの作製を試み,24時間以上の安定な連続運転が可能なユニットの開発に成功した。(3)分析法バリデーションに関する研究:開発したオンライン還元・誘導体化システムについて各種条件の最適化を行い,感度や選択性だけでなく,操作性や再現性,耐久性も比較検討した。生体等の実試料計測に適用可能な新しいLCシステムを構築することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究項目として,前記概要に記載した(1)ポストカラム誘導体化LCシステムの開発,(2)オンライン還元カラムの開発に関する研究,(3)分析法バリデーションに関する研究,を計画した。それら三項目のうち,(1)及び(3)については,連携研究者からの協力もあり,極めて良好なペースで研究を進めることができた。一方,研究期間内に入手できなかった試薬がいくつか存在し,(2)は検討予定項目の半分ほどしか消化できなかった。しかしながら,次年度以降の研究を行う上で支障のない程度データは得られている。 総じて,おおむね順調に進んでいるものと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究二年目は,研究初年度と同様,連携研究者の協力の下,実試料計測を行うための導入的研究として以下の三項目を段階的に実施する。(1)前年度未達成項目の補完:試薬入手遅れのために前年度に十分な検討ができなかった還元ユニットの改良について,試薬を入手し次第,再検討・評価を実施する。本年度に得られた結果より優れた効果を有する還元剤を見出した場合には,分析法バリデーションについて再度,詳細に検証する。(2)実試料中チオール化合物の分析に関する研究:本年度並びに(1)でバリデートした分析法を用いて,生体試料(ヒト尿,血液等)や食品サンプル等に存在するα-リポ酸計測への適用実験を行う。可能な限り簡便な前処理法とすることで,方法論の有用性・実用性を検証する。(3)既知抗酸化化合物(酸化化合物)共存下でのレドックスバランス評価:(1)及び(2)で確立した技術・計測システムを用いて,まず既知の抗酸化(酸化)化合物の共存下における各種実試料中α-リポ酸及び関連化合物の酸化還元状態を精査解析する。本検討の結果を従来法と比較することで,リポ酸計測に基づくレドックスバランス評価システムの有効性を検証する。 [連携研究者]轟木堅一郎(静岡県立大学・薬学部・准教授):既知物質を用いた抗酸化能の評価
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度,研究期間内に入手できなかった試薬がいくつか存在し,それらに関連する研究が十分に行えなかった。そのため連携研究者との打合せの回数も予定より少ないものとなっていた。そこでその繰越金については,手配に手間取った試薬の調達と,その関連研究に要する消耗品(試薬,LCパーツやプラスチック製品等)の購入に充てる。あわせて,得られたデータについての連携研究者と打合せを行うための旅費や研究成果を論文投稿する際の投稿費や別刷印刷費として利用する。 本来から計上していた研究費は,上記(2)及び(3)を行うための消耗品(試薬,LCパーツやプラスチック製品等)の購入や論文投稿のために主に利用する。更に国内の関連学会での調査研究及び10月に杭州(中国)で開催されるThe 5th China-Japan Joint Seminar on Separation Sciences(日中分離科学セミナー)での成果報告のための旅費等として支出する。
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Research Products
(4 results)