2013 Fiscal Year Research-status Report
酸化型・還元型チオール類同時計測法の開発と生体内レドックスバランス評価への適用
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23615009
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
吉田 秀幸 福岡大学, 薬学部, 准教授 (20301690)
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Keywords | レドックス / 分析化学 / α-リポ酸 / クロマトグラフィー / エキシマー蛍光 / 蛍光誘導体化 |
Research Abstract |
本研究は,α-リポ酸の特異的分析法を基盤とした,生体内の酸化還元状態(レドックスバランス)を評価するための新規計測技術の確立を目指すものである。生体内において酸化型・還元型の両形態で存在するα-リポ酸を,それぞれの形態のままで一斉に計測する分析法を構築し,生体計測を実施することで,生体内レドックスバランスの簡便・高感度・高選択的な分析化学的な評価が可能となるだけでなく,食品栄養学や環境科学,医薬品開発等,幅広い分野への展開も期待される。当初の計画では研究最終年度となるはずだった平成25年度は,前年度までに構築した分析システムを生体試料計測に適用した結果との相関性を確認するため,以下の項目について研究を実施した。 (1)生体試料中α-リポ酸分析への適用:レドックスバランス評価のため,前年度に最適化した実試料計測法を多数の健常人試料の測定に適用した。α-リポ酸を含有するサプリメントの服用により,血液や尿中のリポ酸濃度の上昇が確認され,酸化型・還元型リポ酸の血中濃度推移を効率的に追跡することも可能だった。 (2)分散液液マイクロ抽出法に関する予備検討:実践的なレドックスバランス評価のため,新たな試料前処理技術の導入を試みた。「分散液液マイクロ抽出法」という前処理技術の導入に関する予備的検討として,ヒト唾液中及び血清中のストレス関連物質の抽出・濃縮に適用し,極めて簡便かつ再現的に良好な結果を得ることに成功した。 なお社会情勢変化のために,平成24年度に参加を予定していた中国杭州での国際学会の開催が順延されており,平成25年度中にも実施されなかった。それに伴い,研究期間延長に関する申請を行い,承認を受けた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の研究項目として,(1)前年度までに開発した方法論の生体試料中α-リポ酸分析への適用,(2)新たな前処理技術となる分散液液マイクロ抽出法に関する予備検討,(3)実試料中チオール化合物の分析,(4)新規抗酸化化合物の探索,を計画した。連携研究者からの協力もあり,前記「研究実績の概要」にも記載した(1)及び(2)は極めて良好なペースで進めることができた。しかしながら,参加・発表を予定していた国際学会(中国杭州)の開催が,社会的情勢の変化を受けて延期されたままであり,それに伴って(3)及び(4)に関しての十分な成果を上げることが出来なかった。 良好な状況と不十分な面が混在しているが,当初の研究期間内に予算の執行を完遂できなかったことからも,達成度は「やや遅れている」と判断せざるを得ない。
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Strategy for Future Research Activity |
研究期間の延長に関する承認を受けた平成26年度は,これまでの研究期間と同様,連携研究者の協力を得ながら,これまでの研究成果に基づいて,いくつかの実試料を対象としたレドックスバランス評価に関する検討を行う。具体的には,以下の研究項目を実施する。 (1)実試料中チオール化合物の分析:これまでにバリデートした実試料分析法を用いて,生体試料(ヒト尿,血液等)だけでなく,食品サンプルや環境試料等に存在するα-リポ酸関連化合物計測への適用実験を行う。いずれの試料に対しても,可能な限り簡便な前処理法とを組み合わせることで,方法論の有用性・実用性を検証する。 (2)既知抗酸化化合物(酸化化合物)共存下でのレドックスバランス評価:既知の抗酸化(あるいは酸化)化合物の共存下における各種実試料中α-リポ酸及び関連化合物の酸化還元状態を精査解析する。本検討の結果を従来法と比較することで,リポ酸計測に基づくレドックスバランス評価システムの有効性を検証する。 [連携研究者]轟木堅一郎(静岡県立大学・薬学部・准教授):抗酸化能の評価
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度に予定されていた「第5回日中分離科学合同セミナー(中国杭州)」への参加を要請されていたが,社会情勢が変化したために開催が延期され,平成25年度末の時点でも開催されていない。 未使用額は,本セミナーへの参加費(交通費・滞在費)並びにセミナーでの討論を踏まえた上での追加実験を実施するための消耗品費として計上していたものである。 平成26年度の初旬までに上記セミナーの年度内開催が決定されれば,当初の予定通り,繰越金を国際学会への参加と関連の追加実験を遂行するための経費に充てる。 一方,更にセミナーの開催が先延ばしされるような場合には,この研究課題に対する更なる事業期間の延長が不可能なため,当該セミナーと密接に関連する国内の学会(日本分析化学会やクロマトグラフィー科学会が主催する全国規模の大会)への参加のための国内旅費に振り替え,残額は追加実験のための消耗品費に充てる。
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