2011 Fiscal Year Research-status Report
新たなリスク管理体系のための多層カーボンナノチューブ曝露評価へのアプローチ
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23615014
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Research Institution | National Institute of Occupational Safety and Health, Japan |
Principal Investigator |
小野 真理子 独立行政法人労働安全衛生総合研究所, 環境計測管理研究グループ, 上席研究員 (60333374)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
篠原 也寸志 独立行政法人労働安全衛生総合研究所, 環境計測管理研究グループ, 上席研究員 (20321896)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 国際情報交流 |
Research Abstract |
ナノ材料のうち、多層カーボンナノチューブ(MWCNT)は期待される新材料であり、使用量の増大が見込まれる。MWCNTを含むナノ材料はその健康影響も、空気中での飛散の状況も解明されていないにもかかわらず、予防原則に基づいてリスク管理を行うことが求められている。これは、毒性が明らかになってから対策をとる従来のリスク管理の体系とは異なる、新しい体系が求められていることに相当する。本研究は、この新しい体系に対応するために、MWCNTのリスク評価に資するMWCNTエアロゾルの測定法の確立を目的とする。 MWCNTは測定法自体も確立していないため、炭素分析法を中心とする曝露濃度測定法を確立する。本測定法では、金属の不純物やMWCNTの構造などが影響するため、分析に対するそれらの影響の程度を調べる必要がある。以上の、成分-形態-炭素測定結果の関連を示すデータベースを作成すれば、異なるタイプのMWCNT測定のために有効な情報となる。 対象とするMWCNTは原材料だけでなく、MWCNT含有製品までも視野に入れている。 まず、今年度は炭素系ナノ粒子MWCNTを試料として炭素分析を行った。熱分離型の炭素モニターを使用してグラファイト性炭素を分析し、ピークパターンの特徴を把握した。粒子の形態が炭素分析に大きく影響することから、電子顕微鏡による外観観察をもとに検討し、MWCNTの直径が炭素分析に影響することを明らかにした。 また、MWCNTを含む製品として、MWCNT含有ポリエステル繊維について同様の炭素分析を行い、MWCNTを分離して測定する方法を確立した。現場の粉じんについても本測定法が応用可能であることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
炭素分析装置や金属分析装置はエネルギーを必要とするため、夏期の節電対策期間には十分に稼働させることができなかった。そのために研究の進捗がやや遅れ気味である。しかしながら、入手可能な材料(MWCNT類、他の炭素材料)については炭素分析が概ね終了している。 MWCNT含有製品の炭素分析については、当研究独自の電子顕微鏡観察技術により、製品の中のMWCNTを分離して測定できていることが確認された。当初の目的に付随して、材料としてのMWCNT単独だけでなく、消費者がMWCNTを使用するレベルで、環境中のMWCNTを評価できる可能性が明らかとなった。 CNTの直径と炭素分析との関係については論文をまとめ投稿中である。MWCNT含有製品の分析方法については関連する5報の学会発表を行い、炭素分析に関しては遅れながらも進捗している。 他のパラメータについては今年度は進められなかったので、次年度以降に、炭素分析データに対応させる形で進行する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、炭素分析法を確立した20種程度のナノ炭素材料について、金属分析、X線回折による大まかな結晶構造の把握、更に透過型電子顕微鏡による詳細な構造解析を進め、データベース作成に向けて、データの収集を行う予定である。また、総合的にデータを解釈することにより、環境評価の際の留意点についてもまとめて行く。 更に、MWCNT含有製品の加工や、想定される種々の粉体取扱い作業等について測定法を検討していく方向である。上流ユーザーのみならず下流ユーザーでの評価の可能性も視野に入れる。この際には、毒性研究による評価を元にした環境を評価する基準値を整理し、国際的な環境評価やリスク評価に関する動向を視野に入れながら、適切な評価法を提案する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
夏期の節電対策で使用頻度が低下した炭素モニターの精度管理のために、昨年度末に行う予定であったメンテナンスを行う(30万円程度)。 また、独自の方法である、MWCNT粉体や、MWCNT含有製品を樹脂に埋め込んで、スライスした薄片を透過型電子顕微鏡で観察する方法は、炭素分析で測定している物質を視覚的に確認できる画期的な方法であるが、MWCNTは硬いためにスライス用のダイヤモンドナイフが消耗する。そのため、今年度はダイヤモンドナイフを購入する(60万円)。残りの物品費は、分析の消耗品の購入に充当する。 旅費としては国内学会1件を考えている。
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