2012 Fiscal Year Research-status Report
新たなリスク管理体系のための多層カーボンナノチューブ曝露評価へのアプローチ
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23615014
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Research Institution | National Institute of Occupational Safety and Health, Japan |
Principal Investigator |
小野 真理子 独立行政法人労働安全衛生総合研究所, 環境計測管理研究グループ, 上席研究員 (60333374)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
篠原 也寸志 独立行政法人労働安全衛生総合研究所, 環境計測管理研究グループ, 上席研究員 (20321896)
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Keywords | MWCNT / ナノチューブ / 労働環境 / ナノ材料 / リスク管理 |
Research Abstract |
多層カーボンナノチューブ(MWCNT)は工業用のナノ材料であり、有機化合物に導電性を付与できること、また材料の強度を上げることができることなどから、種々の分野で期待されており、使用量の増大が見込まれる。一般的に、微小粒子の健康影響は、より大きな粒子に比べて高い可能性があると言われているため、ナノ材料については予防原則に基づいてリスク管理を行うことが求められている。MWCNTのように主成分が炭素からなるナノサイズの粒子は、空気中にある排気ガス由来の炭素を含有する微小粒子との分離定量が難しい。MWCNTの定量法を確立して曝露評価を行うためには、MWCNTの炭素分析、構造解析、更には健康影響に寄与する可能性のある金属不純物の分析結果等を総合的に評価する必要がある。 本研究では過去に行ったMWCNT捕集時のデータや、模擬的なMWCNTエアロゾルを捕集したデータをもとに、実際に捕集される粒子についての情報を整理した結果、粗大粒子に含まれるグラファイト性炭素をMWCNTの代表値とし、微小粒子に含まれるグラファイト性炭素を排気ガス等に由来する炭素の代表値とすることにより、炭素系微小粒子を含む都市大気が流入するような環境においてもMWCNTが測定可能であることを明らかにした。この点について、学会発表と論文発表を行った。 リスク評価に関する文献情報等については、新規に開発されている表面を改質したMWCNTや工業利用されたMWCNTが再飛散する可能性に関する情報を中心に収集し、整理を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
金属分析以外の点については、比較的順調に進捗している。 MWCNTエアロゾルの測定法及びMWCNTを含有する製品から発生する可能性のある粉じん中に含まれるMWCNTを定量するためのプロトコルを作成した。グラファイト性炭素として検出されないMWCNTがあれば、金属の影響が大きいと考えられるが、現状ではそのようなMWCNTはないため、金属含有量はグラファイト分析に対する大きな妨げとはならないと考えられる。 その一方で、形態や結晶構造は炭素分析に影響するため、これらに関する情報は整理する必要があり、実験を継続中である。 国内では労働環境におけるMWCNTエアロゾル測定の必要性が提起されているため、本法を提案した。 更に、表面を改質したMWCNTも同様な方法で測定できるかどうかの確認も行っており、これまでの方法で対応が可能であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度は24年度に提案した測定法の実用性を確認する予定である。作業場において、この方法を利用してMWCNT濃度を測定する方向で検討している。また、幾つかのリスクアセスメント結果より、労働環境におけるMWCNT濃度の曝露限界値などが提案されつつあるため、この方法で測定する条件設定や適用可能範囲を明らかにする。 電子顕微鏡観察像やX線回折パターンと、炭素分析パターン等を整理し、データベースのひな形を作成する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
24年度後半からヘリウムの供給が逼迫し、入手が難しい状況となった。ヘリウムは炭素分析に必須のガスであるため、炭素分析装置のメンテナンスを遅らせて分析を優先させて来た。現在は、ヘリウムの供給がやや改善されたこともあり、25年度の早い時期に、炭素分析装置のメンテナンスを行い、本研究で提案している分析法の妥当性の検証の際には、装置を良好な状態に保ちたい。メンテナンスには、炭素分析装置のオーブンやヒーターの交換ならびにオーブン温度の較正作業が必要となり、50万円程度となる予定である。 当初の25年度予算は、予定の研究を進めるための消耗品、現場調査用旅費に使用する。 また、世界的に見てMWCNTを含めナノ粒子の測定法は統一されていないことから、11月に名古屋において開催される国際学会において発表し、学会に参加する専門家と曝露測定の情報の統一を図るためのワークショップを共催する。
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