2012 Fiscal Year Research-status Report
遺伝学的手法によるゲノムDNA脱メチル化因子の網羅的探索
Project/Area Number |
23616002
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
菊池 裕 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (20286438)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
穂積 俊矢 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (10597222)
|
Keywords | ゼブラフィッシュ / 変異体 / スクリーニング / 脱メチル化因子 |
Research Abstract |
DNA脱メチル化に異常を示す新規変異体のスクリーニング:DNA脱メチル化に関与する遺伝子を遺伝学的手法により同定するため、国立遺伝学研究所川上浩一博士らにより開発されたトランスポゾンTol2を用いた遺伝子トラップ法による挿入変異体作製を行った。遺伝子トラップ法は、変異体の作製が容易であり、変異体の原因遺伝子を非常に短期間に決定することが可能である。遺伝子トラップベクターは、トランスポゾン内部にスプライスアクセプターとプロモーターを持たないGAL4遺伝子が組み込まれているため、遺伝子トラップベクターが遺伝子の中に挿入された場合に遺伝子の破壊が生じる。本年度は、遺伝子トラップベクターとTol2転移酵素のmRNAをゼブラフィッシュ受精卵に共注入し、高効率でゲノムに挿入される条件の検討を行った。更に、遺伝子トラップベクターが挿入されたゼブラフィッシュとUAS-GFPラインとを掛け合わせ、トラップラインの同定を行った。 Ten-Eleven-Translocation(Tet)タンパク質の機能解析:最近多くの研究者により、Tetタンパク質が5―ヒドロキシメチルシトシン (5hmC)を介してDNA脱メチル化に関与する事を示唆する研究成果が報告された。そこで私は、ゼブラフィッシュのTet2, 3遺伝子をクローニングし、発生過程における発現パターンを調べた。特に発現が神経系に限局していたTet3遺伝子に対するモルフォリノアンチセンスオリゴ(MO)設計し、ノックダウンによるTetタンパク質の機能解明を試みた。 発生・再生過程におけるDNA脱メチル化の変化の解析:発生・再生過程におけるDNA脱メチル化の変化や脱メチル化関連遺伝子の発現に関しては、多くのモデル生物において十分に解析が進んでいない。そこで発生過程・再生芽におけるメチル化度や脱メチル化関連遺伝子発現の変化に関する解析を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ゼブラフィッシュを実験動物として、DNA脱メチル化が異常になる新規変異体の探索を行い、遺伝学的にDNA脱メチル化機構を明らかにすることが、本研究の目的である。本年度は、遺伝子トラップベクターのインジェクションにより、Tol2がゲノムに高効率で挿入される条件の検討を行い、約80匹の成魚の作製に成功した。現在、UAS-GFPラインと掛け合わせることにより、遺伝子がトラップされたラインの同定を行っている段階である。今後は、トラップラインのF2ファミリーを作製し、F3でのスクリーニングに移行する予定であることから、おおむね順調に進展していると考えている。 最近1~2年の間に、Tetタンパク質が5hmCを介したゲノムDNA脱メチル化に関与する報告が数多くなされた。そこで本研究においてもゼブラフィッシュTet2, 3遺伝子をクローニングし、in situ hybridization法により発生過程における発現を解析した。その結果、 Tet3遺伝子が神経系に局在して発現していたことから、Tet3 MOによるノックダウン実験を行った。現在は様々なマーカー遺伝子の発現により、ノックダウン胚の解析を行っている段階である。更に発生・再生過程におけるメチル化の変化やTetを含めたDNA脱メチル化関連遺伝子の発現を、抗体染色やin situ hybridization法により解析を行った。その結果、5―メチルシトシン(5mC)と5hmCが、切断後30時間に一時的に減少することを明らかにした。また、再生芽においてDNA脱メチル化関連遺伝子が発現しており、能動的脱メチル化によりメチル化度が減少している可能性が示唆された。これらの解析は、当初の研究計画に無かったものであるが、本研究課題の目的に合致するものであり、現在のTetタンパク質の研究進展状況を考えると、当然実験を進めるべき課題であると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
遺伝子トラップ法による挿入変異体の作製に関しては、数多くのトラップラインを作製し、早くF3でのスクリーニングが行えるように実験を進める予定である。 更に、発生・再生過程におけるDNAメチル化の変化やTetを含めたDNA脱メチル化関連遺伝子の発現・機能解析を行っている。その結果、再生過程において一時的に5mCと5hmCが減少すること、再生芽においてDNA脱メチル化関連遺伝子が発現していることが明らかになった(DNA脱メチル化関連因子として以下のものを解析している;cytidine deaminase family: activation-induced deaminase, apolipoprotein B mRNA-editing enzymes、G/T mismatch DNA glycosylase: methyl CpG binding domain protein 4, thymine-DNA glycosylase、methylcytosine dioxygenase: Tet)。再生過程における一時的なDNA脱メチル化が能動的脱メチル化であるのか、もし能動的脱メチル化であるのなら、どの様な因子によりDNA脱メチル化が生じるのか、再生過程における細胞脱分化とゲノムDNA脱メチル化には関連があるのか、等に関して今後解析を進める予定である。もし、DNA脱メチル化関連因子とDNA脱メチル化との関連が解明できれば、本研究目的の一端を達成することが出来ると考えている。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
以下の項目に関して、研究費を使用する予定である。 1.変異体作製・スクリーニングに必要な消耗品 2.5mC,5hmCの抗体及び2次抗体の費用 3.遺伝子発現解析に必要な試薬・阻害剤などの費用 その他、実験に必要なプラスチック製品・分子生物学的試薬・化学試薬など、ほぼ全てを消耗品に使用し、研究課題を推進する予定である。
|
-
[Journal Article] DEAD-Box Protein Ddx46 Is Required for the Development of the Digestive Organs and Brain in Zebrafish.2012
Author(s)
Hozumi, S., Hirabayashi, R., Yoshizawa, A., Ogata, M., Ishitani, T., Tsutsumi, M., Kuroiwa, A., Itoh, M. and Kikuchi, Y.
-
Journal Title
PLoS One
Volume: 7
Pages: e33675
DOI
Peer Reviewed
-
-
-
-