2013 Fiscal Year Research-status Report
肥満に関与する腸内菌群の特定と腸内菌叢の改善による肥満予防の試み
Project/Area Number |
23617003
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
平山 和宏 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (60208858)
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Keywords | 腸内菌叢 / 肥満 / HFAマウス / 無菌マウス |
Research Abstract |
本研究は、肥満と腸内菌叢構成の特徴を解析するとともに、無菌動物技術を応用して肥満に関与する腸内菌群を特定し、さらに肥満の予防や治療法の研究のためのモデル動物を開発することを目的としている。 本研究では、これまでにBMIが高い被験者と低い被験者を選定して糞便を採取し、高度な嫌気培養を含む培養法を中心として腸内菌叢の構成を解析した。また、無菌マウスに採取したヒト糞便を経口投与して菌叢を移植したヒトフローラ定着(HFA)マウスを作製して内臓脂肪の蓄積量などを比較した。その結果、検体によって菌叢構成に明らかな違いは見られたものの、BMIに特徴的な菌叢構成や菌群は特定できなかった。また、投与する糞便によって内臓脂肪の量に有意な違いが認められるHFAマウス群が存在することを見出したが、投与した糞便提供者のBMIとHFAマウスの内臓脂肪の量との相関は明らかではなかった。 そこで、平成25年度ではさらにHFAマウスを作製する糞便試料の数を増やし、内臓脂肪量等の比較を行った。また、肥満や腸内菌叢構成は食事や生活環境など様々な環境要因の影響を受けることを考慮し、作製したHFAマウス群に、肥満の動物モデルに用いられる高脂肪飼料を給与して内臓脂肪の量を比較した。その結果、通常飼料を与えた場合と高脂肪飼料を与えた場合とでは腸内菌叢の違いが宿主の肥満におよぼす効果が異なっている可能性が示唆された。ただし、平成25年度はHFAマウスの作製の基本となる無菌マウスの生産が予定通りに進まなかったために十分な数のHFAマウス群を用いて検討することができず、観察された腸内菌叢の違いによる効果を確認するには至らなかった。無菌マウスの繁殖成績が不良となった原因は特定できていないが、現在は繁殖が回復しつつあり、糞便提供者のBMIとHFAマウスの内臓脂肪との関連、およびそれに対する食餌の影響に関して、確認とさらなる検討を行う準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究では、平成23年度にBMIが高い被験者と低い被験者を募ってその糞便を採取し、糞便の菌叢構成を解析することによって、宿主のBMIと腸内菌叢構成との相関を探り、それらの中から選ばれた糞便を無菌マウスに投与することによってHFAマウスを作製した。24年度には採取された糞便からさらに多くの糞便を選んでHFAマウス群を複数作成し、それぞれのHFA群の内臓脂脂肪の量を測定することによって、ヒトの腸内菌叢と肥満との関係を解明する糸口とすることを目指した。平成23年度および24年度の成果により、腸内菌叢の構成は個体により大きな違いがあること、ヒトの糞便を投与してHFAマウスを作製すると投与する糞便によって有意にHFAマウスの内臓脂肪の量が異なる例があることなどが明らかとなった。ただし、糞便提供者のBMIの違いに応じた特徴的な菌叢構成や肥満者に特異的な菌群は見出すことができなかった。また、HFAマウスの内臓脂肪量の違いは、投与した糞便の提供者のBMIとは相関していなかった。 そこで平成25年度においては、さらにHFAマウス作製例を増やし、肥満に特異的な菌群あるいは菌叢構成の検出を試みた。また、菌叢の代謝活性の違いや給与する飼料の組成による肥満への影響についても検討した。しかし、当初は平成25年までに計画した研究を終了する予定であったにもかかわらず、HFAマウス作製の基礎となる無菌マウスの繁殖が不良となってしまったため、検討に十分な数のHFAマウス群を作製することができず、研究計画を終了することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画の遅れの大きな要因となった無菌マウスの繁殖の低下については、その原因を特定することはできていないが、現在は繁殖成績が回復しつつあり、HFAマウス群の作製も徐々に行うことができるようになっている。これまでに、内臓脂肪の蓄積に有意な違いが認められるHFAマウス群も見出すことができており、今後はさらにHFAマウス群の例数を増やし、内臓脂肪の蓄積に特徴のあるヒト糞便の特定を進めていくとともに、これまでに得られた肥満実験における結果の再現性を確認する。さらに、異なるBMIの被験者から得られた糞便を用いて作成したHFAマウス群に肥満の動物モデルに用いられる高脂肪食を給与し、肥満の重要な環境要因である食餌の違いにおける腸内菌叢の効果を検討する。 また、内臓脂肪の蓄積に特徴のあるHFAマウス群を見出し、それらの腸内菌叢構成について、分子生物学的な手法を含めたより詳細な分析を試み、肥満に重要な役割を果たす腸内菌(群)の特定を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究は、無菌動物技術を応用してマウスを用いながらヒトの腸内菌叢の肥満における役割を研究することを可能とすることを最大の特徴としているが、平成25年度においてその基礎となる無菌マウスの繁殖成績が低下し、計画していた研究に必要な数の無菌マウスを確保することができなかった。そのため、研究計画の一部が次年度に延長となり、次年度使用額が生じた。 使用予定額は、主として前年度に計画していた動物実験ならびに細菌学的および生化学的な解析のための消耗品費として使用する。また、一部は研究成果を公表するための費用として使用する。
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