2011 Fiscal Year Research-status Report
食資源由来機能性多糖によるインフルエンザウイルス感染制御基盤の解明
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23617006
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
李 貞範 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 助教 (40332655)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林 京子 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 講師 (60110623)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 機能性多糖 / 免疫賦活 / 抗ウイルス活性 |
Research Abstract |
本研究は食用資源由来機能性多糖のインフルエンザウイルス感染制御に関する分子基盤の解明を目的としている。本年度はメカブ由来フコイダンが自然免疫系に重要な細胞の一つであるマクロファージを活性化するが、その作用機構の検討を実施した。まずマクロファージに存在するフコイダンの候補受容体に対するアンタゴニスティックな抗体を用いたところ、Toll-like 受容体4、CD14、およびスカベンジャー受容体A (SR-A) がフコイダンの認識に関与することがわかった。続いて受容体以降の関与するシグナル伝達系について、各種阻害剤を用いて検討した結果、p38やJNK、HSP90などが関与していることが示された。さらにウェスタンブロッティングにより解析したところ、フコイダン投与30分後からp38、ERK、およびJNKのリン酸化が起きていることが示された。また、フコイダンは I kappa Bのリン酸化およびNF-kappa B の活性化も示した。以上の結果より、メカブフコイダンのマクロファージ活性化機構の一端が明らかとなった。また、蛍光標識化多糖類の調製も実施した。また、新規食用資源由来機能性多糖の探索も実施したところ、ネギ Allium fistulosum L. から抗インフルエンザウイルス活性を示す多糖としてフルクタンを単離した。本フルクタンは動物感染モデルにおいて、経口投与によりインフルエンザウイルスの増殖を抑制するとともに、インフルエンザウイルスに対する中和抗体の産生を促進することを見いだした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に照らし合わせて、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。研究計画にあげている、多糖類の刺激に対して免疫担当細胞がどのように応答するか検討したところ、メカブフコイダンの認識に関わる受容体(TLR4, CD14, およびSR-A)を明らかにすることができた。また、受容体からの細胞の応答にいたるまでに関与するシグナル伝達系も明らかにすることができた。さらに、来年度以降の研究に必要な蛍光標識化多糖類も調製したことから、順調に研究が進んでいる。これとあわせて、多糖類のライブラリを充実するために食資源由来新規機能性多糖の探索も行った。その結果、ネギから抗インフルエンザ活性を示すフルクタンを単離し、これが免疫賦活化を介する作用であることを示唆する結果を得た。ネギからはフルクタン以外にも抗インフルエンザウイルス活性を示す多糖を単離しており、その構造解析と作用機構の検討も行っている。本成果は、多糖の活性発現に関わる分子基盤の解明に寄与する結果である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策として、多糖類の作用機構の解析を前年度に引き続き実施する。上述のように、免疫担当細胞であるマクロファージのフコイダンに対する応答機構を明らかにしつつあるが、これは多糖類すべてに一般化できるのか否かについても併せて検討する。これと同時に、研究計画に沿って細胞レベルでの多糖類の作用機構の解析も平行して実施する。また、個体レベルでの機能性多糖に対する応答について、解析を進める予定である。具体的には、まず蛍光標識した多糖類をマウスに経口投与し、それらの動態(吸収や代謝の有無)を解析する。また、これと同時に遺伝子発現の変動やタンパク質レベルでの発現の変動についても検討していく。 一方で、すべての多糖類に同様の作用が認められるわけではないので、活性発現に必要な多糖類の分子的特徴を明らかにすることも重要である。そのために種々の多糖類を新たに単離するとともに、各種誘導体を調製しながら、作用の比較を実施していくことを考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費の大部分は消耗品費として使用する。具体的に購入するものとしては生化学用試薬類、各種抗体や細胞培養に必要な試薬、器具類、実験動物購入費などに充てる予定である。また、研究成果の発表に必要な旅費も計上する。このほかに、動物実験の実施に必要な研究補助者への謝金、機器使用料としても充当する予定である。
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