2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23617007
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
中川 敏幸 岐阜大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00271502)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 小胞体ストレス / ATF4 / メタボリック症候群 / 肥満 / 糖尿病 / アミロイドーβ |
Research Abstract |
【研究目的】アルツハイマー病の病態は遺伝子変異の解明から飛躍的な発展を遂げている。しかし、アルツハイマー病の90%以上は遺伝子変異がなく、発症機構が不明のままである。よって、治療は一時的な対症療法が主体である。そこで、病態の解明と新たな治療・予防法の解明が急務であり、世界中で関連研究がなされている。本研究は、アルツハイマー病の危険因子(糖尿病、肥満)に関連する小胞体ストレスシグナルとアミロイド-β産生との関わりに焦点を絞り、アルツハイマー病発症に対する新規知見を確立しようとするものである。ATF4は小胞体ストレス刺激により活性化する転写因子であり、アミロイド-β産生を促進させることを明らかにしている。これらの成果を踏まえ、本研究の目的は、(1)脳内の転写因子ATF4活性化がアミロイド-β産生を促進させるか明らかにする (2)ATF4によるアミロイド-β産生促進が記憶と学習の低下に関連するか明らかにする (3)ATF4の抑制が記憶と学習の改善に寄与するか明らかにする ことである。【研究成果】ヒトアミロイド前駆体タンパク質遺伝子を安定的に発現する細胞株を用い、アミロイド-β産生に対する小胞体ストレスの作用およびフラボノイドの一種であるケルセチンによる制御機構を検討し、次の成果を得た。1)小胞体ストレスは、γ-セクレターゼ活性を促進し、アミロイド-β産生を増加させた。2)ケルセチンは、小胞体ストレスによるアミロイド-β産生増加を抑制した。3)ケルセチンは、eIF2α特異的な脱リン酸化関連遺伝子(GADD34)を誘導した。4)ケルセチンは、転写因子ATF4の発現を抑制した。以上の研究成果から、アミロイド-β産生制御機構として小胞体ストレスシグナルの関与を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
初年度は、アミロイド-β産生と認知・記憶障害に対するATF4の役割を明確にするために、先行研究(科学研究費)にてFood intake experiment (FIE)※1を複数回(毎週1回を7ヶ月以上)実施した加齢マウス※2を用いて次の実験を行った。※1. Food intake experiment (FIE): 基礎餌(総タンパク質:コントロールの52%、必須アミノ酸:コントロールの32%)を与える。基礎餌からロイシンとリシンを除いた餌を朝1時間食べさせる。このFIEにて、ATF4を介した脳内プレセニリン-1の発現増加を認める (BBRC 352, 722-727, 2007)。※2. FIEを繰り返した加齢マウス: コントロールに比べ肥満を認めた。ATF4は肥満関連遺伝子と考えられFIE繰り返しの有効性が示唆された。FIEを複数回実施した加齢マウスにおける記憶学習への影響と脳内ATF4の作用を免疫染色と行動解析から解明する。現在、ウエスタンブロットおよび免疫組織科学的に解析している。これに関連し、in vitroにおいてアミロイド-β産生における小胞体ストレスシグナルとしてのATF4の役割を解明し報告した。(発表論文)Ohta K, Mizuno A, Li S, Itoh M, Ueda M, Ohta E, Hida Y, Wang MX, Furoi M, Tsuzuki Y, Sobajima M, Bohmoto Y, Fukushima T, Kobori M, Inuzuka T, Nakagawa T. Endoplasmic reticulum stress enhances γ-secretase activity. Biochem Biophys Res Commun. 416: 362-366, 2011.
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度に得られた成果を基にして、より詳細に行動解析を以下のように実施する。自発行動量と空間作業記憶(Y-迷路)、作業記憶・参照記憶(八方向放射状迷路)と恐怖条件付け記憶の変化を解析する。◇ FIEを繰り返した加齢マウス:Y迷路による行動解析では作業記憶の低下を認めたことから、ATF4活性化による肥満とアミロイド-β及び記憶学習との関連性を解明する。◇ APP23アルツハイマー病モデルマウスはヒトアミロイド前駆体タンパク質(APP)を高発現している。II型糖尿病・肥満モデルマウス(db)およびATF4ノックアウトマウス(医薬基盤研究所 実験動物研究資源バンクより分譲)との交配を行う。計画は順調に進んでおり、マウスの交配および行動解析を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度に得られた成果を基にして、ATF4のアルツハイマー病の病態との関連性を解明する。(a) APP23アルツハイマー病モデルマウスとATF4ノックアウトマウスとの交配で得られたマウス(APP23/ATF4ノックアウト)において、脳内アミロイド-β産生の変化と行動学習との関連性を解析する。(b) 前年度のモデルマウスの交配にて得られたAPP23/db/ATF4ノックアウトマウスにおいて、脳内アミロイド-β産生の変化と行動学習の解析を行う。(c) in vitroの成果を踏まえ、APP23/dbマウスにおけるレスベラトロールの効果を検証する。以上の研究計画から、アルツハイマー病の危険因子としての肥満および糖尿病の病態を明らかにし、早期に研究目標を達成する。
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Research Products
(6 results)
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[Journal Article] Endoplasmic reticulum stress enhances γ-secretase activity.2011
Author(s)
Ohta K, Mizuno A, Li S, Itoh M, Ueda M, Ohta E, Hida Y, Wang MX, Furoi M, Tsuzuki Y, Sobajima M, Bohmoto Y, Fukushima T, Kobori M, Inuzuka T, Nakagawa T.
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Journal Title
Biochem Biophys Res Commun.
Volume: 416
Pages: 362-366
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] The expression and localization of Prune2 and its novel isoform in the central neuvous system2011
Author(s)
S.LI, M.ITOH, K.OHTA, M.UEDA, A.MIZUNO, E.OHTA, Y.HIDA, M.WANG, K.YAKEUCHI, T.NAKAGAWA
Organizer
41thANNUAL MEETING Neuroscience
Place of Presentation
Washington DC, USA
Year and Date
Nov.12, 2011
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[Presentation] Endoplasmic reticulum stress leads to increase gamma-secretase activity and beta-amyloid production2011
Author(s)
K. Ohta, A. Mizuno, S. Li, M. Ueda, M. Itoh, E. Ohta, Y. Hida, M. Wang , M. Furoi, Y. Tuzuki, M. Sobajima, Y. Bohmoto, T. Fukushima, T. Nakagawa
Organizer
第34回日本分子生物学会年会
Place of Presentation
横浜
Year and Date
2011年12月15日
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[Presentation] A novel regulation mechanism of synaptic transmission by preseynapse-localizing Caymanataxia-related protein,Caytaxin2011
Author(s)
M. itoh, S. Li, K. Ohta, M. Ueda, Y. Hida, Y. Suzuki, E. Ohta, A. Mizuno, M. Wang, T. Nakagawa
Organizer
第34回日本分子生物学会年会
Place of Presentation
横浜
Year and Date
2011年12月13日