2011 Fiscal Year Research-status Report
炎症性腸疾患患者のエネルギー代謝に関する臨床的研究
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23617008
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
佐々木 雅也 滋賀医科大学, 医学部, 講師 (40242979)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | クローン病 / 間接熱量測定 / エネルギー代謝 |
Research Abstract |
方法内容:2011年6月から2012年3月までに、入院治療を行った活動期クローン病11例(男性8名、女性3名)、平均年齢30.5±3.4歳を対象とした。病型は、小腸型3名、小腸大腸型8名であった。栄養療法は、TPN7例(成分栄養療法に移行6例)、成分栄養療法4例(PPNを全例に併用)であった。そのうち、5例にレミケード、4例にヒュミラの治療を導入した。寛解導入療法前後で、血清Alb、CRP値を測定し、CDAIを算出した。血清の炎症性サイトカインIL-6はCLEIA法で、TNF-αはELISA法で測定した。また、ミナト医科学エアロモニターAE300Sを用いて、安静時消費エネルギー(REE)、呼吸商(RQ)、糖質酸化量、脂質酸化量を経時的に測定した。 現状の結果報告:血清CRP値とCDAIは治療にともない有意に低下した。Albは有意に上昇した。BMIはほぼ横ばいであった。血清IL-6は有意に低下したが、TNF-αは一定の傾向を示さず、有意な変化は認めなかった。REEの変化には一定の傾向は認めなかったが、RQは有意に上昇した。その結果、脂質酸化量は有意に低下し、糖質酸化量は有意に上昇した。 考察と今後の課題:クローン病患者では、寛解導入療法により血清CRP値やCDAI、血清L-6が低下するとともに、RQが上昇したことから、体内のエネルギー基質が脂質から糖質主体へと変化することが確認された。これより、活動期に脂肪乳剤を経静脈的に投与することは有用と考えられた。今後、症例数を重ねて、エネルギー代謝とサイトカインとの相関関係について検討していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
活動期クローン病の寛解導入療法に伴うエネルギー代謝の変化を炎症性サイトカインとの関連について検討している。順調に症例数が蓄積されており、統計学的な有意差を証明するのに必要な症例数の50%以上がエントリーされていると考えている。呼吸商とサイトカインIL-6との関連が示唆される結果が得られており、さらに症例を重ねることで、論文化することが可能な状態である。 一方、潰瘍性大腸炎についても同時並行で研究を進めており、こちらはまだ十分な症例数がエントリーされていない。しかし途中経過ながら、クローン病とは全く異なる臨床成績が得られており、今後、症例数を増やして消費エネルギーの変化と炎症性サイトカインとの関連を検討する計画である。
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Strategy for Future Research Activity |
クローン病のエネルギー代謝と炎症性サイトカインとの関連について統計学的な有意差を証明するのには、さらに5~10例程度のエントリーが必要と考えている。これは、平成24年度中に達成可能と考えている。 潰瘍性大腸炎に関する研究は、特に重症例やそれに近い中等症を対象にしているために、症例のエントリーには時間を要している。今後は、関連施設などの協力を得て、症例数を蓄積する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の研究費は、クローン病と潰瘍性大腸炎患者の血清中の炎症性サイトカインIL-6とTNF-α、IL-1βの測定に使用する計画である。
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