2011 Fiscal Year Research-status Report
新規たんぱく質代謝研究法の確立とその活用に関する基礎研究
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23617016
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
木戸 康博 京都府立大学, 生命環境科学研究科(系), 教授 (50195319)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | タンパク質 / 代謝要求量 / 指標アミノ酸酸化法 |
Research Abstract |
課題1:新規たんぱく質代謝研究法として指標アミノ酸酸化(IAAO)法を確立する。SD系雄性ラット(5週齢)において、5%、10%、15%、20%、25%、30%カゼイン食を実験食とし、13C-Pheを指標アミノ酸とするIAAO法を実施した。呼気13CO2量を13C-Phe酸化量としてプロットして得られた2直線の屈曲点を、たんぱく質要求量であると判断し、13.1 g/kg BW/dayと算出した。IAAO法によるたんぱく質代謝測定法が確立された。課題2:たんぱく質の質の評価法を確立する。SD系雄性ラット(5週齢)を用いた。実験食のたんぱく質源には、カゼイン、小麦グルテン、魚たんぱく質を用いた。劣質たんぱく質である小麦グルテンはカゼインに比べたんぱく質必要量が高くなり、仮説の通り、たんぱく質の質を量で補おうとする傾向がIAAO法によって認められた。また、数種類の魚肉たんぱく質の必要量を算出した。さらに、それぞれのたんぱく質の必要量と、たんぱく質摂取量の1点(10 g/kg BW/day)の呼気13CO2量の間には正の相関が認められ、必要量の違いではなく10 g/kg BW/dayタンパク質摂取量時の呼気13CO2量によって、たんぱく質の質を評価することも可能であることが示唆された。課題3:たんぱく質栄養状態の評価法を確立する。SD系雄性ラット(5週齢)を用いた。5%カゼイン食を3週間摂取させることで、低たんぱく質栄養状態のラットを作成し、IAAO法によりタンパク質代謝測定を試みた。健康なラットと比較し、低栄養状態ラットでは呼気13CO2量が高くなる傾向となり、栄養状態は呼気13CO2量に反映されることが示唆された。低栄養状態ラットのたんぱく質要求量については算出できておらず、実験を継続中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
課題1:新規たんぱく質代謝研究法として指標アミノ酸酸化(IAAO)法を確立する研究について、研究計画は達成された。たんぱく質要求量を算出することができ、その値は予測した必要量に近く適当であったことから、IAAO法によるたんぱく質代謝研究法は確立されたと判断した。課題2:たんぱく質の質の評価法を確立する研究について、研究計画は達成された。課題1で確立されたIAAO法により算出したカゼイン、小麦グルテンのたんぱく質必要量が、それぞれの質を反映したものとなったため、IAAO法によって算出されるたんぱく質必要量によってタンパク質の質が評価できたと判断した。さらに、たんぱく質必要量の違いではなく10 g/kg BW/dayタンパク質摂取量時の呼気13CO2量によって、たんぱく質の質を評価することも可能であることが示唆され、IAAO法によるたんぱく質の質の評価法の簡易化にも発展させられた。課題3:たんぱく質栄養状態の評価法を確立する研究については、検討課題は残っている。ラットの低栄養状態がIAAO法の呼気13CO2量に反映されることは確認できたが、たんぱく質必要量算出は達成できていない。
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Strategy for Future Research Activity |
課題4:ライフステージ別のたんぱく質要求量の推定法を確立する。平成23 年度に引き続き、50 週齢および100 週齢で、IAAO 法によるたんぱく質要求量を測定する。加齢に伴いたんぱく質要求量が増えるか否かについて検討する。課題5:各種病態時のたんぱく質要求量の推定法を確立する。様々な病態の違いによってたんぱく質要求量やアミノ酸パターンが大きく変化すると考えられる。そこで、病態モデルとして、糖尿病ラット、肝疾患ラット、腎不全ラット、熱傷ラットなどを用いる。肝疾患ラットでは、指標アミノ酸としてPhe が利用できないので、いくつかの不可欠アミノ酸を用いて検討する。課題6:ヒトたんぱく質要求量の推定法を確立する。ラットを用いて確立したIAAO 法をヒトに応用する。健康な高齢者を対象とし、食事中のたんぱく質を不足から十分量に変化させ、指標アミノ酸として一定量の13C-Phe を経口摂取する。実験実施期間は実験日と2 日間の栄養維持期間の計3 日間とし、食事中のたんぱく質量を変化させて数回実施する。栄養維持期間では、栄養が過不足なく摂取できる献立を用意し、栄養状態を整える。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1.実験動物課題3:たんぱく質栄養状態の評価法を確立するために使用するラットは、成長期(5 週齢)の雄性ラット(SD 系)を用いる。課題4:ライフステージ別のたんぱく質要求量の推定法を確立するために使用するラットは、課題1 と課題2 で使用した成長期(5 週齢)の雄性ラット(SD 系)を精製飼料にて飼育して用いる。課題5:各種病態時のたんぱく質要求量の推定法を確立するために、肝障害モデルラット、腎不全モデルラット、たんぱく質代謝が異化状態の熱傷ラットなどを用いる。これらのモデルラットの作成などはすでに確立しており問題はない。2. 精製飼料課題1 と課題2 で使用したラットは解剖する必要がないので、精製飼料にて飼育を続ける。25週齢、50 週齢および100 週齢にてIAAO 法を行い、ライフステージ別のたんぱく質要求量を推定するために用いる。このために標準精製飼料の費用が必要となる。3.標識アミノ酸本研究では、標識アミノ酸として[1-13C]フェニルアラニンを用いているが、平成24 年度に実施予定の肝疾患モデルラットでは芳香族アミノ酸以外のアミノ酸を用いる必要があり、その検討が必要となる。また、ライフステージ別のたんぱく質要求量の推定には投与する標識アミノ酸の量を検討する必要がある。これらの条件は、血液中の標識アミノ酸と非標識アミノ酸濃度が一定となる条件を確認しなければならない。
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Research Products
(7 results)