2012 Fiscal Year Research-status Report
血清中トリプトファン代謝物定量による中枢性疾患の臨床化学的研究
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23617027
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
飯塚 英昭 東邦大学, 薬学部, 助教 (10057771)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福島 健 東邦大学, 薬学部, 教授 (00272485)
一場 秀章 東邦大学, 薬学部, 講師 (80120236)
定本 清美 東邦大学, 薬学部, 教授 (00297673)
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Keywords | トリプトファン代謝物 / 蛍光誘導体化 / 中枢性疾患 / HPLC / LCーMS / DBD-PyNCS |
Research Abstract |
L-トリプトファン(l-Trp)のキヌレニン経路の代謝物であるキヌレン酸は、統合失調症の死後脳でその濃度が上昇することが報告されている。L-キヌレニン(L-KYN)は、キヌレニン経路の初発酵素(TDO, IDO)によりトリプトファンより生じる。 液体クロマトグラフ質量分析法(LC-MS法)で健常人血清中のL-TrpおよびL-KYN濃度を測定した。健常人血清中(n=18、男8, 女11)のL-Trp濃度は、女性より男性の方が有意に高濃度であった。これは、既に報告されている結果と同様であった。L-KYN濃度およびL-Trpに対するL -KYNの濃度比には、それぞれ性差はなかった。L-TrpとL-KYN濃度の間に、男性に強い相関があったが、女性には相関がなかった。女性に相関がないことは、月経周期がL-TrpおよびL-KYN濃度に影響しているのかもしれない。男女ともにL-Trp濃度と年齢には、相関が認められなかった。しかし、L-KYN濃度と年齢との間に負の相関が認められたが、30才以下の若年層の結果であり、今後、年齢を広げて測定する必要がある。これらの知見は、中枢性疾患患者の血清中L-TrpおよびL-KYN濃度と病態等の解析に重要な結果である。 マウスにフェンサイクリジン(PCP)連続投与して統合失調症モデルマウスを作成し、脳組織中のL-Trp濃度をHPLC法で測定した。マウスを断頭し、氷冷下で前頭皮質、側座核、線条体、海馬、扁桃体、小脳、視床、視床下部を摘出し、そのホモジナイズの上清を試料溶液とした。コントロールマウス(生理食塩水を投与したマウス)と比較した結果、側座核、海馬においてL-Trp濃度が有意に減少した。これらは、トリプトファンの代謝物のキヌレン酸、セロトニン等の生理活性物質がPCP連続投与マウスの異常行動に関与していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
患者および健常人の血清中のトリプトファンおよび代謝物の定量、患者のカルテ調査もほぼ終了している。報告されている統合失調症に関連するD-セリンなどの定量は、進行中である。また、病態との関連について、解析に必要な多変量解析についても準備を開始している。
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Strategy for Future Research Activity |
フェンサイクリジン連続投与マウスにトリプトファン代謝酵素阻害剤を投与し、脳内のトリプトファン代謝物の変動について検討する。また、ヒト血清については、トリプトファンの脳内取り込みに関連する他のアミノ酸等の定量を行う。すでに報告されている統合失調症に関連する物質を定量し、総合的に病態との関連を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
蛍光誘導体化試薬、HPLC及びLC-MSに使用するガラス器具、有機溶媒、検体の前処理に使用する器具などの消耗費の購入に使用する。
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Research Products
(8 results)