2013 Fiscal Year Research-status Report
母子親和行動中枢の発達における脂質栄養素の役割の解析
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23617034
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Research Institution | Yasuda Women's University |
Principal Investigator |
森田 規之 安田女子大学, 家政学部, 准教授 (50239662)
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Keywords | 視床下部 / 養育行動中枢 / 愛着行動中枢 / ビタミンE / エストロゲン受容体 / 脂肪酸結合タンパク質 / 免疫組織化学 / ハイブリダイゼーション |
Research Abstract |
母子の絆の深まり、愛情や信頼の感情の育みが、生涯を通じて健全な食生活を送るための本質的な基盤になると考えられる。養育行動中枢や愛着行動中枢、不安情動制御の神経回路に注目し、その発生や発達、機能の発揮に際して、脂溶性ビタミンや多価不飽和脂肪酸等の脂質栄養素が及ぼす影響を研究している。ビタミンE欠乏食の摂取、脳内ビタミンE濃度の低下によって動物に不安行動を誘発できるとされる機構の一端として、ビタミンEが乳がん細胞株でエストロゲン受容体β(ERβ)のリガンドとして作用するという報告に基づき、脳内でもビタミンEがERβシグナリングに関わる可能性を検討してきた。緑色蛍光タンパク質標識ERβの発現系を用いて、細胞内あるいは細胞核内でのERβの挙動を解析したが、これまでのところビタミンEがリガンドとなるとする我々の仮説に沿わない結果となっている。ERβの免疫組織細胞化学的解析においては抗体の特異性についての慎重な検討が必要であった。今後、ビタミンE添加後の遺伝子発現や細胞形態の変化を、初代培養系に加えて脳スライス培養系も用いて解析を進める。また、多価不飽和脂肪酸などの脂質栄養素の摂取と脳の発生や機能の発達をつなぐ分子として脂肪酸結合タンパク質(Fabp)ファミリーに注目した。神経発生への関与を知るため、胎仔期のマウス脳における遺伝子発現を in situ ハイブリダイゼーションによって検討した。標識の異なる複数のプローブを併用する多重染色法によって、脳の領域マーカー遺伝子をランドマークとして発生途上の視床下部におけるFabp遺伝子ファミリーの時空間的発現動態を解析している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究では、1)多価不飽和脂肪酸による脂肪酸結合タンパク質(Fabp)を介した間脳視床下部領域の神経発生の制御、2)脂溶性ビタミンEのエストロゲン受容体βシグナリングへの関与による情動行動の調節、に着目して、脂質栄養素が母子親和行動や不安情動制御の脳中枢の発達に影響を及ぼす可能性を追究することが目的である。 胎生期の視床下部におけるFabp遺伝子発現の in situ ハイブリダイゼーションによる分子形態学的解析については、プローブを新たに設計して調製し特異性を検討しつつ進めた。標識の異なるプローブを併用する多重染色によって、視床下部発生過程において神経管腹側で発現が維持されているShh遺伝子をランドマークとして、Fabp遺伝子ファミリーの時空間的発現動態を解析している。一方、ビタミンEのエストロゲン受容体βシグナリングへの関与については、GFP標識受容体の挙動などの細胞レベルでの解析にとどまり、ビタミンEが受容体リガンドとして作用する可能性を示唆する結果がこれまで得られていないことから、当初の計画にあった、動物個体レベルでの特殊飼料を用いた栄養素摂取実験に着手できていない。視床下部、背側縫線核の培養において、初代培養系に加えてスライス培養系での解析を進め、ビタミンE添加による遺伝子発現、細胞形態への影響を評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画の準じ、生体の構造と機能の階層性に沿うべく、分子から細胞、ニューロンからネットワークレベルでの解析を進展させる。小脳、視床下部、背側縫線核の培養系では、初代培養系に加えて脳スライス培養系を用い、より生体に近い三次元構築を保持しつつ、遺伝子発現、形態変化を評価する。脳スライス培養系の導入にあたっては前年度から準備を進めており、ビタミンEのERβシグナリングへの関与について、エストロゲン受容体β選択的アゴニストであるジアリルプロピオニトリル添加と、各種トコトリエノール添加の影響を比較しつつ解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
トコトリエノールがエストロゲン受容体βのリガンドとして作用する可能性を、受容体挙動解析など細胞生物学的に追究してきたが、これまでのところ、我々の仮説と相容れない結果となっている。計画を変更し、トコトリエノールによる遺伝子発現、細胞形態の変化を、小脳、視床下部、背側縫線核の初代培養系に加え、スライス培養系を用いて、より生体に近い三次元構築を保持しつつ解析することとし、解析の遂行と成果発表を目指して、次年度使用額をその経費に充てることとしたい。 初代神経培養法に加え、脳スライス培養法を用いて、細胞生物学的、免疫組織化学的解析を遂行するため、実験動物、細胞培養試薬、プラスティック器具、抗体などの消耗品の購入に充てるとともに、成果発表のための校閲費も支出する計画である。
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