2011 Fiscal Year Research-status Report
気分障害の予防薬及び治療薬としてのフィトケミカルの可能性を評価するための基礎解析
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23617036
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
豊平 由美子 産業医科大学, 医学部, 講師 (90269051)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | フィトケミカル / カテコールアミン / ノルアドレナリントランスポーター / セロトニントランスポーター / アセチルコリン受容体 / カルシウムチャネル / ナトリウムチャネル |
Research Abstract |
本課題は植物由来の化学物質であるフィトケミカルの中からストレス軽減効果のある予防薬や気分障害の治療薬として適用できる可能性のある化学物質を同定し、選定したフィトケミカルの神経系への作用を評価する基礎研究である。平成23年度は交感神経系機能のモデル系としての培養ウシ副腎髄質細胞とヒト神経芽細胞(SK-N-SH)やトランスポーターを発現させたHEK-293、COS-7細胞等を用いて、カテコールアミン神経系機能に影響するフィトケミカルを選定することを目的として研究を行い、以下の結果が得られた。1.ゲニステインとレスベラトロールは抗うつ薬の標的であるノルアドレナリントランスポーターやセロトニントランスポーターによるノルアドレナリン, セロトニン取り込み活性を低濃度では促進し、高濃度では抑制した。2.ノミリン、ケンフェロール、ノビレチンはアセチルコリン(ニコチン性アセチルコリン受容体刺激)、56mM High K(電位依存性Caチャネル活性化)、ベラトリジン(電位依存性Naチャネル活性化)による刺激によって引き起こされるカテコールアミン分泌と細胞内へのCaイオン, Naイオンの 流入を濃度依存性に抑制した。3.ケルセチン、シルマリンはアセチルコリン受容体、電位依存性Naチャネル刺激によるカテコールアミン分泌と細胞内へのCaイオン, Naイオン流入を濃度依存性に抑制した。4.アピゲニン、リモニン、オーラプテンはアセチルコリン受容体刺激によるカテコールアミン分泌を抑制した。5.ルチンやアントシアニン類はカテコールアミン分泌に影響を与えなかった。以上の結果より、平成24年度以降はゲニステインとレスベラトロールに焦点をあて検討を進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究はおおむね計画に沿って遂行されていると考えている。本年度の研究計画は培養ウシ副腎髄質細胞とヒト神経芽細胞(SK-N-SH)やトランスポーターを発現させたHEK-293細胞等を用いてカテコールアミン神経機能に影響するフィトケミカルを検索することであった。イソフラボンのゲニステインや赤ワインポリフェノールであるレスベラトロールが抗うつ薬等の標的タンパク質であるノルアドレナリントランスポーターやセロトニントランスポーターの機能を二相性に調節することを明らかにした。これらは以前の研究でニコチン性アセチルコリン受容体を抑制することを明らかにしているので、中枢神経系機能を修飾する可能性が示唆された。フラボノイド類の中にカテコールアミン神経系を修飾する可能性のあるフィトケミカルが多数あることも明らかにした。神経系に作用するフィトケミカルの選定に時間が掛かったため、同定したフィトケミカルのマウスにおける摂取量・投与量と組織内濃度の検討にわずかばかり遅れが出ている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度に得られた結果を基にして、神経系への効果が確認されたフィトケミカル(レスベラトロールとゲニステイン)を投与した野生型マウスを用いた系での行動薬理学と生化学的手法を用いて有効性の評価を行う。1. 投与群と対照群マウスの脳から分離したシナプトゾームへの モノアミンの取り込みを測定し、NAT, DAT, SERT機能への薬効を生化学的に検討する。2. 大脳皮質,海馬,中脳における神経栄養因子タンパク質・mRNA量の変動を解析する。3. マウスにおける神経伝達物質の変動を検討する。4. マウスの脳における細胞内シグナルを測定し、臨床効果発現の作用機序検索の足がかりとする。5. 対照群マウスと特定機能成分を腹腔内注射や経口投与したマウス群で 投与直後、7~21日後に行動解析を実施し、薬効の出現について行動解析を基にして評価する。6. マウスにおける吸収、排泄率の解析を行い、マウスでの摂取量・投与量と組織内濃度との相関を明確にする。昨年度の未使用の金額145,367円については遅れているマウス組織内濃度の検討に用いるマウスの購入に追加配分する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
分子生物研究用試薬、Western blot用試薬、ELISAキット、放射性標識化合物、HPLC用試薬等の研究用試薬、実験動物購入と研究用器具の物品費に65万円、実験動物管理費と大学所有機器の使用料等のその他費に50万円、国際及び国内学会関係の旅費に30万円を計上する。
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Research Products
(10 results)