2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23650001
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
田中 一之 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (70188291)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山崎 武 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (30336812)
只木 孝太郎 中央大学, 研究開発機構, 機構准教授 (70407881)
|
Keywords | 数学基礎論 / 情報基礎 / 量子コンピュータ |
Research Abstract |
本研究は、無限次元の状態空間をもつ量子系に基づいた、従来の量子計算機とは異なる仕組みの量子力学的計算モデルを提案し、その計算能力や計算効率について、旧来の計算モデルと比較しながら計算理論的に考察することを主題としている。昨年度以来、様々な量子計算モデルに関する先行研究について国内外の先端研究者と情報交換し、新しい量子計算モデルの実現化に向けて障害となる問題点を洗い出し、新たなモデルの構築に向けての有効な方策について検討している。 本年度、代表者の田中と分担者の山崎武は、NTTコミュニケーション科学基礎研究所の高橋康博博士との共同研究によって、以下のような考察と結果を得た。深さ固定の多項式サイズ量子回路において、一連の単一キュービット測定を許せば,古典計算による模倣は一般に多項式時間では困難だが,唯一の単一キュービット測定では古典計算による模倣も多項式時間でできることが知られている。しかし、後者に非有界なファンアウト・ゲートを加えた場合の古典模倣の困難さについては知られていなかった。そこで,我々はP=PPでないといった自然な仮定の下で、このような場合に古典模倣が多項式時間でできない量子回路があることを具体的に示した. また,分担者の只木は、ニュージーランドのオークランド大学のC. S. Caludeやウィーン工科大学のSvozilらと協力して,量子測定の結果がbi-immuneであることを、物理的実在に関する仮定から証明し、量子測定の困難さと不完全性定理との関係について新たな側面を明らかにした。以上により、新しい量子力学的計算モデルについての研究は順調に推進した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、従来の量子計算機とは異なる測定ベースの量子力学的計算モデルを提案し,その計算能力や計算効率について、旧来の計算モデルと比較しながら計算理論的に考察することを主題としている。とくに本年度、代表者の田中と分担者の山崎武は、NTTの高橋康博との共同研究によって、深さ固定の多項式サイズ量子回路で、唯一の単一キュービット測定、非有界なファンアウト・ゲートをもつもので、古典計算で多項式時間の模倣ができないような具体的な回路を発見した。また、分担者の只木は、ニュージーランドのC. S. CaludeやウィーンのSvozilらと協力して,量子測定の結果がbi-immuneであることを、物理的実在に関する仮定から証明し、量子測定の困難さと不完全性定理との関係について新たな側面を明らかにした。以上のような具体的な成果が得られたので、研究は順調に推進した。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果に基づき、さらに様々な量子力学的計算モデルについて検討する。とくに,平成25年度はすでに国際会議へ投稿中である論文について,改良とさらなる発展を予定している。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の使用額は、当初計画していた量子計算の古典模倣にある種の仮定が必要であることが今年度に判明したため、その分析と研究発表を次年度に延期したことにより発生した未使用額で,平成25年度の研究経費として使用する予定である。
|
Research Products
(5 results)