2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23650004
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
小柴 健史 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (60400800)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 暗号理論 / 量子暗号 |
Research Abstract |
万能ブラインド計算とは2者(アリスとボブ)の間の計算プロトコルであり,アリスが実行したいと考えているアルゴリズムを自身で実行する代わりにボブに実行させる方式で,その際,アリスが持つアルゴリズムやその入出力をボブには漏らさないという性質を持つ.万能ブラインド計算の概念を弱めて,ボブには入出力は漏らさないがアルゴリズムは知られても構わない方式は安全な代理計算と呼ばれる.古典計算においては万能ブラインド計算の実現は不可能であることが知られているが,量子計算においては観測ベース量子計算モデルと呼ばれる新しい量子計算モデルを用いて実現できることが,2009年にBroadbentらによって示された.観測ベース量子計算のモデルにも,一方向性量子計算とテレポーテーション型量子計算の二つの方法があり,一方向性量子計算については広く研究されておりブラインド計算もこの方法に基づいて構築されている.本研究課題では,暗号理論の観点からテレポーテーション型の観測ベース量子計算の可能性について検討し,安全な代理計算方式が構成可能であることを示した.とくに,一方向性量子計算ではクラスター状態と呼ばれる量子状態を用意する必要があるが,これを用意するためにはエンタングルオペレータが必要である.このエンタングルオペレータの代替として2キュービット観測を利用している点が従来方法と技術的に異なる点であり,この性質により拡張性が高くなっていると予想される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定では,ある量子状態とインタラクティブハッシュプロトコルの関連に関する研究を発展させる予定であったが,暗号理論的な観点からのテレポーテーション型の観測ベース量子計算の可能性が,本研究課題に別の視点を与えてくれると予想されたためである.本来予定の研究は一時休止したものの,テレポーテーション型の観測ベース量子計算における暗号理論研究は大きく進展し,本研究課題全体としては順調に進展していると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
暗号理論の観点からのテレポーテーション型の観測ベース量子計算についての研究を発展させる.また,同時に量子状態とインタラクティブハッシュプロトコルとの関連に関する研究も同時に進展させる.両者の研究はセキュア計算という枠組みの要素技術として議論できるため,互いの関連について見極めつつ研究を遂行する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
テレポーテーション型の観測ベース量子計算にもとづいた安全な代理計算方式をさらに発展させ研究成果としてまとめ,その成果を国際会議や国内のワークショップで発表する予定であり,そのための旅費および学会参加費として利用することを計画している.また,研究遂行上必要な書籍や会議録などの購入を予定している.
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