2011 Fiscal Year Research-status Report
ソフトウェアシステムの柔らかな不具合の検出と修正の方法
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23650019
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Research Institution | National Institute of Informatics |
Principal Investigator |
中島 震 国立情報学研究所, アーキテクチャ科学研究系, 教授 (60350211)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ソフトウェア工学 |
Research Abstract |
本研究ではシステム運用開始後に遭遇するシステムへの期待との違いを「柔らかな不具合」と呼び、オープンなシステムの代表例であるWebアプリケーションを具体例として、「柔らかな不具合」の検出とシステム機能を修正する統一的な方法について研究を進めた。 今年度は、簡単なECサイトのWebアプリケーションを対象として、実行時検査の方法を用いて「柔らかな不具合」を自動検出するシステムを試作し、方式を確認した。また、要求工学の成果であるM.Jacksonの適切さの規則を精密化することで、「柔らかな不具合」が混入することを説明する理論を構築した。この理論は、「柔らかな不具合」検知時に不具合を避けるためにシステム自身を改変する方法を含むものである。 自己改変の実現アーキテクチャでは、時相論理で表現した性質を有限オートマトンに変換し実行時監視を行う方法と、ソフトウェアプロダクトライン工学におけるフィーチャダイアグラムとコアアセットを関係つけるモデル情報を用いる方法とを組み合わせることで、期待する機能を実現することができた。具体的には、Webアプリケーション記述言語として実用的に用いられているPHP言語とその実行環境の上に、実験システムを構築した。これによって、実用的なWebアプリケーション構築方法と「柔らかな不具合」についての技術を関連つけることができる。 以上の成果を、国際学会等で発表することで、要求工学に関わる研究者と技術的な交流を行い、本研究の意義を確認することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
計画では、「柔らかな不具合の理論」を整理すること、具体的なWebアプリケーションの試作を通して「柔らかな不具合の自動検出法」を検討すること、以上をまとめた研究成果を公表すること、としていた。今年度は、以上の計画に加えて、システム改変機能を含む方法を試作により確認することができた。このシステム改変機構は第2年度に実施を予定していた研究項目であるが、自動検出法と統一的なアーキテクチャを考案する必要から、前倒しで研究を進め、試作により提案方法を確認することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究開始時には、システム運用後の振る舞い検出について、ロジック・モデル検査の方法を適用することだけを考えていた。これは、対象とするシステムが、比較的単純なWebアプリケーションであったことが理由である。一方、より複雑なシステムでは、システム自身の振る舞いを厳密に追跡することが困難になり、確率過程としての振る舞いしか把握できないことがある。確率過程としてのシステムから、その振る舞いを推定する方法の研究が必要になることがわかった。「柔らかな不具合の理論」を広げる方向で研究を推進する。特に、試作済みのWebアプリケーションに確率的な振る舞いを追加することで、検討する理論的な方法を具体的な実験によって確認する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度の成果が学術論文誌に採択されたことから、その出版公表に関わる費用を計上する。試作済みのWebアプリケーションへの確率的な振る舞いの追加実験に必要なソフトウエアに物品費を使用する。その他は、研究開始時の予定通り、成果発表ならびに技術討議を行うための旅費、研究に利用するPC関連消耗品の購入に物品費を利用する。また、新たな研究成果についての論文投稿費や印刷費にその他費用を使用する。
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Research Products
(2 results)