2011 Fiscal Year Research-status Report
ライブ空間を共有する複合現実アドホックネットワークの研究
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23650037
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
高井 昌彰 北海道大学, 情報基盤センター, 教授 (00206707)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 複合現実感 / アドホックネットワーク / ライブ情報共有 / 映像配信 / アンドロイド端末 |
Research Abstract |
はじめに,アドホックなネットワークコミュニティにおけるライブ情報共有を実現するシステム基盤技術上の問題点を探るため,ネットワークコミュニティでの情報共有の分散アルゴリズムやデータ通信トラフィックを評価するシミュレータを開発するとともに,複視点ライブ映像共有システムのプロトタイプをLinux搭載のカメラ付きノートPC上に構築した。また,アドホックなネットワークコミュニティへの参加・退会手続きのための分散アルゴリズムの他,コミュニティに属するユーザ同士がWi-Fi通信を介して,自由にライブ映像を撮影・共有・編集・再配信する機能を実現するプロトコルを開発した。 続いて,Linux PC上に開発された複視点ライブ映像共有システムを,スマートフォンやカメラ付きタブレットPCなどのアンドロイド端末のエミュレータ及び実機上に移植し,ライブ情報共有の基盤となる機能を実証的に評価した。コミュニティを形成する複数台のアンドロイド端末(Android 3.2)の間で,最も基本的な静止画像の連続取り込みとインフラモード通信によって,毎秒10フレーム以上の通信品質でライブ映像データを共有できることを確認した。 また,ライブ映像の情報共有機能だけでなく,コミュニティ参加者がお互いに目視可能な距離範囲内にいる場合を想定し,仮想的な質量と大きさを持つ「モノ」を投げる・受け取るという身体的な動作によって情報受け渡しを実現するため,ジャイロセンサーや方位センサーを内蔵したアンドロイド端末を用いて,ユーザの身体動作によるライブ情報の受け渡し機能を実現するミドルウェアを開発した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
複合現実アドホックネットワークにおけるモデルの理論的検討やソフトウェアシミュレータ上での設計・評価実験に留まらず,調達可能な範囲で最新のアンドロイドOSを搭載した情報端末機器(Wi-Fi通信機能の他にジャイロセンサー及びカメラ等を備えたスマートフォンやタブレットPC)の実機を用いて,コミュニティ参加者のライブ空間での映像情報共有およびユーザの身振りなどの身体動作による情報受け渡しを実現する複合現実型コミュニケーションの基盤要素技術を開発し,その個々の基本機能や動作を実証している。また,それらの研究開発の成果の一部については,学術論文や学会講演等で発表され,一定の評価を受けている。 以上のことから,アンドロイド端末のメディア/ネットワーク機能を利用した複合現実型のアドホックネットワーク応用に関する実証的研究を行うという目的に沿って,本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
最新のアンドロイドOS(Android 4.0以上)を搭載したアンドロイド端末(スマートフォンやタブレットPC)を用いて,内蔵カメラで撮影された動画像の生データの取り込み及びストリーム配信(エンコーディング)のためのプログラムコンポーネントを開発し,さらに映像品質の優れた複合現実型ライブ映像情報共有の実現を目指す。また,アンドロイド端末で撮影されたカメラ映像に対するタグ付けおよび情報可視化機能の基本プログラムコンポーネントを設計し,ライブ情報共有のクラウド連携機能とともに,複合現実によるソーシャルネットワーク支援アプリケーションに必要なユーザインタフェース機能実現を目指す. さらに,システムの総合的な有効性を評価するため,イベント会場を摸した簡易なライブ空間に複数台のアンドロイド端末を持ち込んでアドホックネットワークを形成し,ライブ空間コミュニティの複合現実によるソーシャルネットワーク支援の動作試験を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度の研究経費において残金が発生しているのは,バージョンアップの著しい Android OSの最新版(4.0以上)に対応したアンドロイド端末機器(スマートフォンやタブレットPCのハードウェア)を年度内に市場調達することが実際上難しかったことが主な理由である。そのため平成24年度の研究経費の使用においては,前年度の研究費残額と合わせて,Android OS 4.0以上の最新版を搭載したアンドロイド端末ハードウェアの物品調達を優先して行い,ライブ空間の複合現実型情報共有ソフトウェアの開発と総合的なシステム動作実証を推進する。 また,当該プログラムの開発,システムの実装及びアンドロイド端末実機を用いた模擬ライブ空間での実証試験の実施にあたっては,大学院生を作業の補助員として採用するため,研究経費からそれらの補助作業に対する謝金を支出する。さらに本研究での開発成果の学会発表ならびに印刷公表等のため,出張旅費と印刷費を研究経費から支出する。
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