2012 Fiscal Year Research-status Report
再生途切れのない没入型コンテンツの放送型配信に関する研究
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23650050
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
義久 智樹 大阪大学, サイバーメディアセンター, 准教授 (00402743)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
後藤 佑介 岡山大学, 自然科学研究科, 助教 (10551038)
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Keywords | 没入型コンテンツ / 再生途切れ時間 / 蓄積再生 / 放送型配信 / 3D / 放送スケジュール |
Research Abstract |
近年普及している3D放送の次は没入型コンテンツである。没入型コンテンツとは視聴者が映像の空間に没入して楽しめるコンテンツであり、没入型ディスプレイに表示される。データサイズが莫大なため、従来の放送方式で没入型コンテンツを放送すると再生途切れ時間が非常に長くなる問題がある。再生途切れ時間とは、再生開始時刻までにデータの受信が間に合わず、再生が途切れている時間の合計を示す。本研究では、この再生途切れ時間を短縮するだけでなく、再生途切れのない没入型コンテンツの放送型配信を目的とする。この目的を達成するために、従来、放送帯域の無駄使いと考えられていた「蓄積再生」を用いる。 これまでに、我が国の地上波デジタル放送を想定して、没入型コンテンツを連続変化データと非連続変化データに分けて放送スケジュールを作成していた。しかし、連続的に変化するデータであっても、繰り返し用いる場合には蓄積再生が有効である。そこで今年度は、没入型コンテンツを、モデルデータと、モデルデータに変化を与える動作データに分けて配信する手法を提案した。これらのデータは、データの初めの部分に識別子を付加することでどちらのデータか認識できる。同じモデルデータを用いる部分をシーンと呼び、シーンの開始時までにモデルデータをできる限り受信完了できるように各再生端末はデータを受信する。動作データは各動作が始まる時刻までに受信完了することで没入型コンテンツを再生できる。それぞれのデータに設定された受信完了時刻を考慮して、再生に途切れが発生する原因となりえるデータを優先的に受信することで、再生途切れ時間を短くできることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、放送型配信としてテレビや衛星放送といった電波放送のみを想定していた。しかし、研究が予想以上に進展し、電波放送だけでなくインターネット放送を想定して没入型コンテンツを放送型配信する手法の提案にも至った。さらに、連続的に変化する連続変化データと変化しない非連続変化データに分けるだけでなく、連続変化データであっても繰り返し用いる場合には蓄積再生が有効であうことから、モデルデータとモデルに変化を与える動作データに分けて没入型コンテンツを配信する手法を提案している。これらの点で、本研究は当初の計画以上に進展しているといえる。 モデルデータと動作データでは、再生開始時刻が異なるため、再生途切れが発生しない最長の受信完了時刻(デッドライン)が異なる。例えば、あるシーンの初めまでにモデルデータを受信する必要があり、シーンが進むにつれて動作データを受信する。様々なデッドラインがあるため、これらの違いを考慮して受信するデータ決定する点が非常に難しい。提案手法では、データの優先度を算出し、優先度に基づいて受信するデータを決定している。優先度の算出には、再生開始時刻や、通信帯域といった再生の途切れやすさを指標として用いている。提案手法を用いることで再生途切れ時間を短くすることを確認した。研究成果は情報処理学会マルチメディア、分散、協調とモバイルシンポジウムにおいて特に優秀と認められ、論文誌への推薦を得ている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究ではこれまでに、我が国の地上波デジタル放送における再生途切れのない没入型コンテンツの放送型配信方式を進化させ、他の放送設備でも再生途切れのない没入型コンテンツの放送型配信を実現する放送スケジュールを明らかにしてきた。例えば、放送帯域や放送チャネル数の違いを考慮してきた。放送帯域が異なると現実的な解像度で配信できる連続変化データに必要な帯域幅が異なり、また放送チャネル数が異なると適切な放送スケジュールが異なるため、放送設備に合わせて放送スケジュールを明らかにする必要がある。さらに、インターネット放送における没入型コンテンツの放送型配信に関しても研究してきた。 平成25年度には、平成24年度までに提案してきた手法を進化させ、単純に最初から最後まで通常速度で再生するだけでなく、早送りや巻き戻しといった再生方法にも対応する。シーンの途中への早送りや巻き戻しも考える。あらかじめ、早送りや巻き戻しの最大速度を規定しておき、その速度で早送りや巻き戻しを行っても再生に途切れが発生しないように放送スケジュールを作成する。早送りや巻き戻しを行うことを考慮して、繰り返し用いられるモデルデータは蓄積しておく。電波放送だけでなく、インターネット放送も想定して研究を進める。研究代表者は、没入型コンテンツでない普通の映像コンテンツの放送型配信において早送りや巻き戻しを行う場合の研究をしてきており、これらの研究で得られた知見を生かして本研究をスムーズに進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため当初の見込み額と執行額は異なったが、研究計画に変更はなく、前年度の研究費も含め、当初予定通りの計画を進めていく。 物品費:プログラム開発用のパソコンや、大容量のバックアップ用HDなどの消耗品を購入するために使用する。研究内容をまとめた論文を配布して成果をアピールするため、論文別刷り代に使用する。また、放送型配信関連技術の詳細を調べるため、関連書籍の購入費にも使用する計画を立てている。 旅費:国内外の調査、国内成果発表、外国成果発表のために使用する。 謝金:放送型配信関連技術の講演謝金等での使用を計画している。 その他:論文掲載料や学会参加費のために使用する。
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Research Products
(8 results)