2011 Fiscal Year Research-status Report
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23650069
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
山村 雅幸 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 教授 (00220442)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 糖鎖計算 / 生体分子計算 / 人工化学 / 形式システム / 確率過程 / 糖鎖 / 糖転移酵素 / ゴルジ装置 |
Research Abstract |
糖鎖は、核酸、タンパク質に続く第三の生命鎖と呼ばれ、例えば血液型のように細胞の識別子として重要な役割を担っている。核酸やタンパク質とは異なり、枝分かれ構造を持ち、テンプレートによらないユニークな多段階の構築過程を経て合成される。本研究は、糖鎖の構築過程を一種の情報処理としてとらえ、その潜在能力を解析することを目的としている。本年度は、分子反応の確率過程を模したシミュレータを作り、細胞内の化学物質の分布、糖転移酵素セットの局在、チェックポイント通過条件などを変化させ、構築された糖鎖構造の集合が、細胞の識別子として機能しうるかを調べた。初期構造、細胞内の各部位での局在、および細胞表面への析出物の構造が既知である糖鎖の形成をテストベッドとした。シミュレーションの結果、(1)転移酵素の認識能力が隣接2単糖以下であるときには目的とする糖鎖構造を形成しえないこと、および(2)細胞内での局在がないワンポッドの反応では目的とする糖鎖構造を形成しえないことを示した。研究成果は2012年3月に開催されたInternational Workshop on Natural Computing (IWNC)国際会議にて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
糖鎖は枝分かれする構造を形成すること、および、細胞内で複数の段階を経て生成されることから、文脈自由言語のクラスの計算能力があるものと予想していた。研究の第一段階として、細胞内での既知の糖鎖形成過程を模擬したシミュレーションを作り、どの要素がクリティカルであるか、感度実験を行った。得られた結果は驚くべきものではなかったが、研究としては必要な段階を経ており、おおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究は2つの方向で進める。(1)開発したシミュレータを利用して、糖鎖計算の形式システムとしての計算能力を確定する。計算能力自体は万能ではないと予想しているが、生成効率の点で新たな理論構築が可能と考えている。(2)テストベッドとして用いた糖鎖形成以外の糖鎖形成過程を取り上げる。糖鎖の形成過程はまだよく調べられていないため、ミッシングリングを多く含んでいる。開発したシミュレータを利用して、未知要素が何であるかを予測する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度残額が生じた理由は、会計上の都合により支出が遅れたためであり、すでに23年度の経費は全額支出済みである。次年度以降は計算機で使用する消耗品および成果公表のための旅費を予定している。
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Research Products
(1 results)