2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23650069
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
山村 雅幸 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 教授 (00220442)
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Keywords | 糖鎖計算 / 人工化学 / 文脈自由言語 / 糖鎖 / 糖転移酵素 / ゴルジ装置 |
Research Abstract |
糖鎖は、核酸、タンパク質に続く第三の生命鎖と呼ばれ、例えば血液型のように細胞の識別子として重要な役割を担っている。核酸やタンパク質とは異なり、枝分かれ構造を持ち、テンプレートによらないユニークな多段階の構築過程を経て合成される。本研究では、糖鎖の構築過程を一種の情報処理としてとらえ、その潜在能力を解析する。分子反応の確率過程を模したシミュレータを作り、細胞内の化学物質の分布、糖転移酵素セットの局在、チェックポイント通過条件などを変化させ、構築された糖鎖構造の集合が、細胞の識別子として機能しうるかを調べることを目的とする。 具体的な成果として、初年度には糖鎖の構築過程のシミュレータを作成した。人工化学をベースとするが、通常用いられるオートマトンではなく、反応速度の違いを反映できる確率過程を考慮したモデルを立てた。まず、問題を単純化して構築過程が1段しかない仮想的な状況を考え、糖転移酵素のセットとチェックポイント通過条件によって、形成される糖鎖構造がどれぐらい変化するか調べた。同時に、各分子種の分子数増減のダイナミックスを分析した。続いて最終年度には、反応空間を3段としてシミュレーション実験を行った。糖鎖データベースから血液型を含むいくつかの典型的な糖鎖を選んでターゲットとし、3組の転移酵素セットとチェックポイント通過条件の調整によって構築できるかを調べた。全体を通じて、理論的考察の結果、糖鎖計算は文脈自由言語を受理する能力を持つことが分かった。シミュレーションの結果、糖鎖の構築過程が3段に分かれていることが、特定のパターンを効率的に生み出すうえでクリティカルであることが明らかとなった。
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Research Products
(6 results)