2012 Fiscal Year Research-status Report
大規模複雑システムのための階層構造創発メカニズムの構築
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23650071
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
栗原 聡 大阪大学, 産業科学研究所, 准教授 (30397658)
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Keywords | twitter / デマの拡散 / 複雑ネットワーク / 創発モデル / SIRモデル / 感染 / ハブ / スケールフリー |
Research Abstract |
脳や人体・社会システムなどの大規模複雑システムにおいて、脳における神経細胞ネットワークと意識、そして人体における細胞と臓器の関係等は、個々の階層がある要素集合によるネットワークとして構成され、そのネットワークとしての振る舞いが別の階層における要素を生み出すというダイナミクスを持ち、階層が階層を生み出す関係にありながら、個々の階層におけるダイナミクスは階層ごとに独立しており、個々の階層にて流れる時間の粒度も階層ごとに異なる特徴を持つ、「複雑系階層構 造」である。 そして、大規模化・複雑化が加速するインターネットやアンビエントネットワーク等の情報社会インフラにおける新しいシステムを構築するに際し、従来の還元論型の工学的階層構造では大規模複雑システムを構築する手法としては限界がある状況において、これを可能とすることが期待される複雑系階層構造を工学的に利用する手法の確立を目指す。 昨年実施した,twitterにて拡散するデマ情報の拡散の様子のモデル化と,拡散を収束させるための方策の検討であるが,情報を受け取りその内容を信頼して他に拡散させるダイナミクスと,病気の感染のダイナミクスとの類似性に着目し,個人レベルでの情報感染の層から,デマ・流言・デマ訂正というメタ層が創発するモデルとして,感染症疾患の伝染モデル(SIR モデル)を拡張させたモデルを構築した.さらに,メタ層の創発に際して,デマや流言の情報としての性質と拡散の仕方との関係に着目し,拡散の仕方が大きく4種類に分類できることの確証を得た.そして,デマとその訂正の情報拡散がそれぞれ1回の大きなピークを持つ事象において,我々が提案す拡張SIRモデルで拡散を再現できることを示すことができた.最終年度においては,拡散のピークが複数存在する事象について研究を進める予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3・11大震災を契機として,急遽研究対象をtwitterやデマ拡散防止に変更したものの,このテーマも当初の研究計画に盛り込まれてたものであり,大きな路線変更ではない.加えて,SIRモデルによる再現が可能であることを示すことに成功し,効率的なデマ拡散防止に関する方策についても提案することができている. 最終年度に向けては,twitterに加え,日常生活における人の行動に関する時系列センサーデータを利用した,単位行動パターンから,より認知レベルの高い行動パターンを抽出する手法において,低レベルから高レベルを創発させる基本的枠組みの提案を目指す.
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Strategy for Future Research Activity |
複数回デマ情報や訂正情報の拡散が起こる場合の,拡散を重ね合わせたモデルを構築する部分について,今年度の成果として,デマや流言の情報としての性質からこれらを大きく4種類に分類できる知見を得たことから,複数の拡散ピークが発生する状況のモデル化についての基本方針を定めることができた.今年度はモデルの実装と,実データとの再現性についての最終的な検証を目指す. 昨年度において計画していた自律移動ロボットによる複雑階層創発モデル構築に関する研究を本年度において着手し,ロボットがセンサーの出力に応じてモーターを制御する機構の設計において、センサー出力を人における神経(感覚)層、モーター制御を意識層として階層構造を構築する方法の創出に取り組む予定である. また,日常生活における人の行動に関するセンサー時系列データを用いて,個々の単位行動パタンの層から,より認知度の高いメタな行動パタンの層を抽出する手法の提案を行う.従来のデータマイニングにおけるトップダウン型の手法ではなく,個々の単位行動パタン層から上位層を創発させる手法の提案を目指す.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
購入としては,ロボットとして,スイスK-termにより制作させている Khepera IIIを複数台購入する. また,研究室内にて複数センサーを設置して行動データの収集を行う.
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Research Products
(5 results)