2012 Fiscal Year Research-status Report
非均質マルチエージェントシステムの競合状況におけるノルムの獲得と維持に関する研究
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23650075
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
菅原 俊治 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (70396133)
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Keywords | マルチエージェントシステム / ノルム / 習慣 / 学習 / 安定性 / マルコフゲーム / 大規模分散システム / 負荷分散 |
Research Abstract |
本研究は、競合する社会における秩序生成をノルム(norm)という形で各プログラム(エージェント)が習得する手法を提案し、その性質を解明することが目的である。本研究により、たとえば、クラウドやサービスコンピューティングにおいて、(1) 要求されるサービス要素を適切に構成し実行するための優先順位を、エージェント群(社会)が自然発生的に決め、社会の効率化を自ら学習する、(2) 得られたノルムを維持あるいは改変する能力を持つこと、などを狙う。 本年度は、昨年度の結果を踏まえ、確率ゲームと進化ゲームを融合したモデルを採用し、さらなる実験として異なる価値観・戦略(異なる利得行列)を持つエージェントのノルムや習慣規則の学習可能性と安定性への影響を中心に調査した。大多数がノルム形成可能な利得行列を持つとき、少数のノルムを形成しないエージェント(以下非協調的エージェントと呼ぶ)の混入は学習可能性には大きく影響しないことがわかった。しかし、一度形成され、全体がほぼ同じ行動を示したとき、少数の非協調的エージェントは、共に行動した相手のノルムを壊す可能性があることが分かった。また、そのような非協調エージェントに対する頑健性が、利得行列の内容に大きく依存することが分かった。特に、自分のマイナスに疎いおおらかなエージェントの組織では、このような非協調エージェントはノルムを破壊しやすいことがわかった。他方、自分のマイナスに対し、ある一定の意思を示すエージェントの社会では、非協調エージェントによる混乱に対し頑健性があることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
シミュレーション環境の実装はほぼ予定通りであり、実験も順次行い評価結果もでている。モデルは、確率ゲームを用いたものに的を絞りこめ、本年度はこのモデルを中心に結果をだしている。非均質なエージェントから構成される社会での性質を探りつつ有り、実験も進んでいるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、競合する社会における秩序生成をノルム(norm)あるいはさらに強い規定となる習慣(convention)という形で各プログラム(エージェント)が習得する手法を提案し、社会(マルチエージェントシステム全体)の効率を上げること、および習得したノルムの質や安定性を解明することが目的である。この中で本年度まで、ノルムの学習と安定性について研究を進めてきた。特に本年度は、わずかながら非協調性を持ち、ノルム形成できないエージェントを少数加えた場合の安定性をしらべ、それらの性質を調査した。 次年度は、異種エージェントの混合率の影響、あるいは異種エージェント間でのノルム形成の有無を調査する。加えて、初期にネットワークを導入し、その構造に基づいたゲームを行わせて、その学習可能性と安定性に加え、生成されたノルムの統一性・非統一性を調べることを考えたい。特に、前者は、異なる機能を持つ一群のエージェント間での団体としての調整に関する研究で有り、重要な新テーマと考えている。このために、本年度に作成したシミュレーションの拡張を前半に行い、まずは上記前半の項目について調査する。これらの結果を論文としてまとめ、国内外の会議(査読付き)への投稿と発表をめざす。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主に以下の項目の使用を計画している。 (1) 研究用ハードウエア(データ保存用ディスク、データ処理用ソフトウェア)の購入(備品)、(2) 国際会議(研究発表および調査)出張旅費、 (3) 国際会議参加費、(4) 国内会議出張旅費、 (4) 英文校閲費(新規投稿用、2件程度)、(5) 実験補助者 実験補助は、シミュレーションデータの収集と整理を予定する。また、昨年までの結果および新規年度で得られた結果を国際会議および国内会議へ投稿し、その発表のための外国出張、国内出張旅費、参加費、および英文校閲費を計上する(上記(2)(3)(4))。
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Research Products
(8 results)