2011 Fiscal Year Research-status Report
室の伝達特性の測定を必要としない室内音響指標のブラインド推定の研究
Project/Area Number |
23650086
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
鵜木 祐史 北陸先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 准教授 (00343187)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
赤木 正人 北陸先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 教授 (20242571)
宮内 良太 北陸先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 助教 (30455852)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 室内音響指標 / 変調伝達関数 / 音声伝送指標 / ブラインド推定 / 残響特性 |
Research Abstract |
音バリアフリーやユニバーサルデザインの志向から,利用者に係わらず円滑な音声コミュニケーションを実現するための要素・統合技術の確立が急務となっている.そのため,音環境設計における質的な検討(音声の明瞭性の向上,誘導音の検知力向上など)は,最重要課題である.本研究の目的は,室内の伝達特性を測定せずに,観測された音信号(音声や音楽といった身の回りの音)そのものから室内音響指標(残響時間(T60),音声伝送指標(STI),明確性(D値))を逆推定する方略を明らかにすることである.これらの客観的な指標は,一般的な室内音響の特徴付けだけでなく,音環境設計に関する主観的な「質」(音声の明瞭性,聞き取り難さ)を問うときに必要不可欠である. 本研究では,変調伝達関数(MTF)に基づき,室内音響指標をブラインド推定する方法を確立するために,「MTFに基づいた残響時間のブラインド推定法」を足がかりとして,次の3つの課題に取り組む.(1)室の統計的な音響特性を調査して,変調伝達関数のモデル化を行なう.(2)様々な室の音響特性を網羅して,MTFの関数モデルの精緻化を行なう.(3)MTFの逆推定法を加えた室内音響指標のブラインド推定法を構築する. 平成23年度は,課題(1)と課題(3)に取り組んだ.課題(1)では,SMILE2004データベース(建築と環境のサウンドライブラリ)を利用して,多種多様な室内インパルス応答を分析し,MTFのモデル化を行なった.ここでは,MTFの逆推定で音源特性(音声の特徴)を利用するため,室内音響測定と音源特性の再分析ならびにこれらの対応関係の調査も行った.次に課題(3)として,モデル化されたMTFから室内音響指標を算出する方法を検討した.残響時間の推定法をベースに残りの指標(STI,D値)の推定法を実装し,室内インパルス応答の統計的モデル化と室内インパルス応答とMTFの対応づけを評価した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,次の三つの課題の実施を計画している.(1)室の統計的な音響特性を調査して,変調伝達関数のモデル化を行なう.(2)様々な室の音響特性を網羅して,MTFの関数モデルの精緻化を行なう.(3)MTFの逆推定法を加えた室内音響指標のブラインド推定法を構築する.この三つの課題のうち,二つ(課題(1)と課題(3))を計画通りに実施することができた.また,得られた研究成果から,様々な室の特性に関するMTFの関数モデル化とその精緻化についての具体的な解決策が見出されたため,計画を前倒しで課題(2)に取り組む準備が整った.以上から,おおむね順調に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は,平成23年度の研究成果に基づき,課題(2)として,様々な室の音響特性を網羅して,MTFの関数モデルの精緻化を行なう.様々な室のインパルス応答ならびに室内音響指標を網羅的に調査した結果から,ほとんどの室内インパルス応答の特性は指数減衰の形式になるが,室の構造上の特殊性や室内の物の移動・配置によっては,この応答特性がいくぶん複雑になる.これに対応して,MTFの関数モデルの精密化を図る.次に課題(3)として,課題(2)の精密化作業を加え,MTFの逆推定法を利用した室内音響指標のブラインド推定法を洗練化する.最後に,課題(2)と課題(3)のインタラクティブな作業として,ICE 60268, ISO 3382に準拠した室内インパルス応答測定装置等を利用して実環境における評価を行う.特に,提案法を既存の測定法を適用できない音環境(人が沢山いる教室など)にて室内音響指標を推定し,その正確さを検討する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費の使用は,主に旅費と謝金になる.まず,限られた費用内で戦略をもって効果的に研究成果を発表し,本研究成果を国内外に広くアピールする.特に,海外での研究発表に重点をおき,研究成果を最大限アピールできる難易度が高く著名な学会に絞って発表する.その他では,学術論文の英文添削や学会参加費に充当する.最後に,大規模な主観評価実験を長時間行うため,ボランティアで実験に参加させることは不可能である.そのため,実験参加者に対して,本学で決められた規則に準拠して,適切に謝金を支払い,円滑に研究を実施する.同様に,研究補助員(博士後期課程学生)に対しても,本学で定められた規則に準拠して,適切に謝金を支払い,研究計画に述べたような各タスクを円滑に実施する.
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Research Products
(7 results)