2011 Fiscal Year Research-status Report
整数格子点上の高信頼幾何計算のためのアルゴリズムとその統一的導出
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23650092
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Research Institution | National Institute of Informatics |
Principal Investigator |
杉本 晃宏 国立情報学研究所, コンテンツ科学研究系, 教授 (30314256)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 幾何計算 / 整数演算 / 精度保障 / コンピュータビジョン |
Research Abstract |
計算機内では3次元物体形状は整数値を用いて管理されていて、物体に対する幾何操作は整数値に対する演算によって実現され、その結果もまた整数値で管理されている。しかし、現状は、実数値に対する実数演算という枠組で幾何操作が取り扱われており、施された幾何操作によって物体が有する幾何学的な構造や性質が破壊されるという問題がある。本研究課題では、「物体は格子点(整数点)上で表現されていて、それに施される演算もすべて整数演算である」という現実から一切逃避しないという立場にたち、整数演算のみを用いた幾何計算アルゴリズムを体系的に導出する枠組を構築することを目指している。平成23年度は、2次元格子点上の回転、および3次元格子点上の回転について検討し、格子点上での回転(離散回転)が有する性質を明らかにするとともに、整数演算のみでこれらの回転を計算する手法を開発した。連続平面上や連続空間上での回転とは異なり、離散回転では、回転角度と回転結果との間に1対1対応が成り立たず、回転を施す点に依存する角度範囲が存在し、その範囲内の角度による回転結果は同一となる。この角度範囲を許容回転角度と名づけ、これを整数計算のみで効率的に求める手法を開発した。また、回転を表現するために正弦や余弦といった実数計算を要する表現法を用いずに、整数点の組として表現する方法を提案した(2次元の場合は3組の整数、3次元の場合は5組の整数)。これによって、許容回転角度の大小を整数演算のみで計算することができるようになり、2次元格子点上の離散回転、3次元格子点上の離散回転を誤差なしで正確に計算することができるようになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度に予定していた研究項目に対して、当初の見込み通りの研究成果を上げている。それに加え、本研究課題を推進することによって、格子点上に与えられたノイズを含むデータを説明する幾何モデル当てはめ問題の重要性が顕在化し、新たな研究課題の発掘につながった。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に従って、n次元回転への一般化や相似変換、アフィン変換への拡張を検討する。その際に、変換を双対空間でとらえて議論することで一般性を見出すことを考える。また、研究の推進を通して新たに顕在化した、格子点上のノイズを含むデータに対する幾何モデル当てはめ問題についても検討を加える。単純な場合として、2次元データを扱う直線当てはめや多項式曲線当てはめを考える。これらを進めるにあたって、本年度同様、フランスの海外共同研究者と密に連携をとる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
理論に重心をおく研究課題であるため、得られた研究成果を国内外で発表するための旅費、会議参加費などに研究費を執行する予定である。また、フランスの共同研究者との研究打ち合わせを行うための出張旅費として執行する予定である。
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