2012 Fiscal Year Research-status Report
規範的文法観を払拭した映像文法に基づく同時・多感覚型コンテンツ生成空間技術の研究
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23650113
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
熊野 雅仁 龍谷大学, 理工学部, 実験講師 (50319498)
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Keywords | 感性 / 同時・多感覚 / 映像コンテンツ / 映像文法 |
Research Abstract |
本研究は、メディア論の先駆者、マクルーハンの視点に触発されて、文字メディアの普及で追いやられた触覚、身体動作、音声などの同時・多感覚性を復権させるシステムの構築を目指すことで、新たな映像コンテンツの制作空間を実現することにある。マクルーハンは、文字メディアの普及によって直線的な思考が浸透したとしているが、これまでの映像コンテンツである映画やテレビなどの映像も、最初から最後までを直線的につなげるコンテンツ製作法が用いられている。この研究を始めて以来、この枠組みの範囲に制限されるかぎり、萌芽的研究から発展的に展開するには限界があると感じられるようになった。近年、インターネットの普及とWeb空間の進展により、文字メディア中心であったWebシステムから、次世代に向けて、3DWeb構想としてメタバースという考え方が存在することを知った。この構想が実現されるとすれば、次世代は、必ずしも直線的な思考による映像コンテンツ制作に制約されず、これまでの直線的思考による映像コンテンツをも包含した、新たな展開が期待される。特に、マクルーハンが示した、文字メディア普及以前の同時・多感覚的思考は、断片的情報が同時に多方面から入力される環境に影響されている。多種多様で膨大な情報が蓄積され続けているインターネットは、まさに現代における文字メディア普及以前の環境と同様の影響を人類にもたらす可能性がある。本研究は、このような状況を踏まえ、これまでの直線的思考のみによる映像コンテンツの制作空間に制約を受けず、新たな展開を目指すため、起動修正を行い、インターネットに蓄積された文字メディア以外の情報から有用な情報を抽出し、複数の情報を同時に見せる研究を始めた。まず、大量の写真に基づいて、撮影者集団の行動分析から得られた集合知的な複数の情報抽出し、同時に見せる研究方向として、CG技術を用いる情報可視化の研究を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
映像コンテンツは、何らかの情報の断片を組み合わせて、視聴者が読解可能な視聴覚的情報を提示するものである。インターネット内にも無数の情報の断片が存在する。その断片を同時・多感覚的、そしてより直観的・感覚的に操作し、新たなコンテンツを作り出す環境を構築するうえで、まず、操作の対象となる情報を発掘・抽出できるようにすることが求められる。そこで、文字メディア以外の情報から、どのような有用な情報が得られるかを探るため、写真共有サイトに蓄積された大量の写真群に注目した。写真共有サイトでは、撮影者ごとに写真が投稿されるが、投稿写真は、基本的にデジタルカメラで撮影されたデジタル写真であり、デジタル写真には、近年、EXIF情報というメタ情報が埋め込まれており、さらには、撮影した位置情報を記録できるカメラやスマートフォンが普及していいるため、撮影位置や撮影時間情報が記録されている。つまり、写真の撮影位置、撮影時間、撮影者情報がわかり、そのようなデジタル写真が共有化されるため、大量に集めることで、いつ、どこで、どのくらいの人が撮影を行っているかがわかることから、集合知的にどの空間の局所的な地域に人が集まっているかを知ることができ、人気スポットなどを抽出することができる。本研究では、空間情報だけでなく、写真撮影の対象によっては、旬の時期が存在すること着目し、時間軸上の限られた旬の期間を抽出する手法に関して研究を行った。また、その空間・時間という二つの情報を同時に扱い、情報空間に可視化する研究を行った。この点において、インターネットに蓄積された情報から、有益な情報を抽出し、視覚的に情報を提示するという観点での第一歩としての研究に到達した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに、文字メディア以外の情報を同時に見せる研究が進展しつつある。また、多種の情報を同時に視覚的に表示するテスト課題として、地球を模擬化した仮想空間を構築し、観光計画支援を行うシステムを構築し、この空間中にさまざまな情報の可視化を行う環境を構築し、このテスト課題を対象として、音声や身体情報を利用した、インタラクションを可能とする、インタフェースを構築中である。音声や身体情報を用いた制作者側の操作を支援するインタラクティブなインタフェースの実現を目指しつつも、これまでに進展した研究をより進展させるため、インターネット内の他の情報にも着目し、同時に視覚化することで、文字メディア以外の情報の同時表示方式と多感覚による操作インタフェースの構築を進める予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究は、萌芽的研究の段階にあり、より広く、情報収集が必要となるため、現状の成果を研究会や国際会議で発表することを目指しつつ、情報収集活動も積極的に行う予定である。特に、国際会議での発表先として、映像、音楽、身体的操作などの研究発表が集まる最も権威ある国際会議SIGGRAPHへの投稿を行ったところである。国際会議が採択された場合は、主に、国際会議への渡航費に用いる予定である。
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Research Products
(3 results)