2011 Fiscal Year Research-status Report
人間共存型ロボットにおける最適なモーションデザイン基本法則の抽出
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23650114
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Research Institution | Osaka University of Arts |
Principal Investigator |
中川 志信 大阪芸術大学, 芸術学部, 准教授 (00368557)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | モーション / デザイン / 人間共存型ロボット / 身体動作 / 感情 / 文楽 / 骨格構造 / プログラム |
Research Abstract |
研究目的である文楽人形による感情表現の基本モーションパターンを明らかにするため、文楽人形にモーションキャプチャーを装着し、一流の文楽人形遣いにアニメ映画と同じシーンを演じてもらい、その動画データを感情ごとに分類し分析する実験を行った。 成果は、文楽人形における6感情のモーションパターン(以降、6EMP)抽出を通して、従来のロボットにないロボットの身体で感情表現できる全く新しい骨格構造が明らかになったことである。それは「骨格が伸縮する」「末端部が想定外の位置に移動する」など、まさに文楽の虚実皮膜論を再現できる瞬時にフィクションの誇張した動きが再現できるロボット構造である。特に、首と肩と胴体の誇張した動きの関係性が重要であることが理解できた。またデータ分析から6感情ごとの動く部位、速度、間の長さもパターンとして抽出できた。感情強度が身体部位の動作量や加速度に比例することや、感情の混合は敢えて別々に各感情の動きを行い連続させることで観る人にわかりやすくするなども明らかになった。 この成果を検証するため簡単なストーリーを土台に、仮想のCGで新構造ロボットを再現し、文楽人形における6EMPをCGアニメーションで実装し再現した。CGロボットの身体動作による感情表現は、10名の学生被験者に提示したところ自然で違和感ないとの評価結果を得た。 今後の平成24年度の実験では、ATR所有の小型ヒューマノイドロボットに6EMPを実装し評価実験を繰り返す。モーター制御のプログラムに文楽人形の6EMPの実装を繰り返す中で、何を足し何を省けば現実のロボットにおける身体動作による感情表現が自然で違和感がなくなるかを検証する。この成果が、人がロボットに最適と思える感情豊かな人間共存型ロボットのモーションデザイン基本法則となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度はATRに共同実験を依頼し、文楽人形遣い桐竹氏らが演じる文楽人形にモーションキャプチャーを装着し、感情表現基本モーションパターンの正確なデータをとり、高い精度で桐竹氏の暗黙知をロボットへ応用できるモーションデザインの分析を行う計画は完了した。 文楽特有の型のモーションでなく、文楽人形遣いがアニメ映画を見て同じように実演していただく実験が功を奏し、人間共存型ロボットの日常動作に活用できるモーションパターンが抽出できた。その内容は多くのアニメのモーションパターンと共通するものでもあった。これらは、平成23年度の日本ロボット学会学術講演会やヒューマンエージェントインタラクションシンポジウムで発表している。 さらにモーションキャプチャーによる精細な動きのデータから、文楽人形は誇張した動きを取り入れることで感情豊かな表現をしていることが明らかになった。首や肩や胴体や腕までもが伸縮したり、人間ではあり得ない位置に関節や部位がきたりする動きが読み取れた。これが近松門左衛門が確立した「虚実皮膜論」かと感嘆した。これらを参考に、ロボットの自由度を人間以上に増やし、関節に加え骨まで伸縮自在で柔軟に変形する骨格構造をもつ文楽人形に近い新たな人間共存型ロボットの設計構想が構築できた。これは想定外であり、ロボットの感情を伝えるためには不可欠な新構造であると確信した。絵コンテや簡単なCGアニメーションで検証を重ね、この新構造のロボットの精度を高め、特許庁に意匠登録申請をした上で自らの著書「ロボティクスデザイン」にて発表している。 平成24年度科研費の新たなテーマとして、基盤研究B「人間共存型ロボットに必要な総合芸術としてのデザイン法則の抽出 ヒトとロボットの短編映画制作を通して」を申請した。一日も早く実機検証を重ね、感情豊かな人間共存型ロボットを実現したいからである。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、平成23年度科研費として採択された「人間共存型ロボットにおける最適なモーションデザイン基本法則の抽出文楽人形遣いとの共同研究を通して」を継続して行う。 具体的には、文楽人形遣いから抽出した人間共存型ロボットに応用できる6感情モーションデザイン基本法則を、実機にロボットにプログラムして実際に動作させて検証していく。この基本法則は仮想の文楽やCGアニメでは正しい感情を伝えるモーションデザインが確立しているが、実世界のロボットにそのままプログラムしても違和感が発生すると考える。その違和感を取り除くプロセスが、本来求められる人間共存型ロボットにおける最適なモーションデザイン基本法則となると考える。 おそらく実機の制御は遅く可動範囲も限られるため、文楽の自由なモーションパターンの重要な要素は残しながらも大きく変換していかねばならない。その際、何を省略して何を足さねばならないかが重要なポイントと考えている。その点が、人間共存型ロボットにおける最適なモーションデザイン基本法則の要点になる。 さらに、不採択になった基盤研究B「人間共存型ロボットに必要な総合芸術としてのデザイン法則の抽出 ヒトとロボットの短編映画制作を通して」を再申請するための準備実験も進めていく。 具体的には短編映画のシナリオを構築し、CGアニメーションで映画の見識者の意見を取り入れながら完成させる。文楽の感情の動きをロボットに取り入れながら、音や声(語り)も試行し、総合芸術としての完成度を高めていく。人とロボットのいる日常生活を舞台と考え、単に動きだけでなく音や語りまで含めた演出を取り入れ、総合芸術としての人間共存型ロボットのデザインへ発展させていく。けでなく音や語りまで含めた演出を取り入れ、総合芸術としての人間共存型ロボットのデザインへ発展させていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、平成23年度科研費として採択された「人間共存型ロボットにおける最適なモーションデザイン基本法則の抽出文楽人形遣いとの共同研究を通して」の研究費を活用した以下の使用計画を考えている。 今後の研究の推進方策でも述べたように、ロボットの実機を活用するため、ATRに依頼し小型ヒューマノイドロボットと研究員のサポートを依頼する。こられを活用してロボットに文楽から抽出した6感情の動きをプログラムしていき、違和感のないレベルにまで精度を高めていく。 そのロボットを被験者である学生たちへの評価実験を繰り返し、成果を論文にまとめ、平成24年度日本ロボット学科学術講演会にて発表する予定である。 具体的な費用としては、ATRへの委託費用が主となり、研究サポートの学生たちへの謝金が発生する。これらを極力圧縮し、翌年度以降の基盤研究B「人間共存型ロボットに必要な総合芸術としてのデザイン法則の抽出 ヒトとロボットの短編映画制作を通して」の再申請に向けた準備にも費用を活用したい。 その構想は、ロボットの自由度を人間以上に増やし、関節に加え骨まで伸縮自在で柔軟に変形する骨格構造をもつ文楽人形に近い新たな人間共存型ロボットの具体的な設計をATR研究員らと進めたい。さらに、映画の演出見識者や、音と語りに造詣の深い文楽関係者らと、ロボットの総合芸術化に向けた予備準備も進めたい。 これらを実機のロボットで実現させることが、日本の産業の活性化や復活につながると考えている。一日も早く、他国に負けないように日々頑張りたいと思う。
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