2011 Fiscal Year Research-status Report
利用者による明示的な評価を必要としない対話型進化計算アルゴリズムの提案
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23650119
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
石渕 久生 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60193356)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 進化計算 / 対話型進化計算 / 多目的最適化 / 利用者 / 選好情報 |
Research Abstract |
対話型進化計算では,個体評価が利用者により行われる.そのため,個々の利用者の好みに合う選好解へ個体群が進化する.このような進化計算では,多数の個体を評価しなければならないという利用者の負荷が常に大きな問題となる.そこで,本研究では,利用者の負荷の最小化を目的とした対話型進化計算アルゴリズムの開発を目的とした研究を実施した. まず,利用者の評価能力,比較能力,記憶能力に関して,対話型進化計算を実現できる最低限の能力を仮定した.具体的には,利用者が同時に評価できるのは1個の個体だけとした.すなわち,利用者に複数の個体を同時に提示することはできないと仮定した.また,利用者は,提示されている個体が直前に評価した個体と比べて優れているか,劣っているか,あるいは,同等であるかの比較だけができるとした.すなわち,利用者が記憶しているのは,直前に評価された個体だけであり,それ以前に評価した個体の記憶を持っていないと仮定した.これは,利用者の記憶容量を個体1個に設定し.記憶期間を個体提示の1サイクルだけに限定したことに対応する.このような仮定に基づき,対話型進化計算の枠組みを構築した. また,個体の細かい違いを認識できないような利用者を仮定した対話型進化計算アルゴリズム開発の準備として,目的関数の離散化が進化計算に及ぼす影響の調査を行った.このような調査は,進化型単一目的最適化から進化型多目的最適化に範囲を広げて行った.進化型多目的最適化問題に対する数値実験では,「目的関数の離散化は,離散化された目的関数を最適化する方向への進化を減速し,離散化されなかった目的関数を最適化する方向への進化を加速する」という興味深い結果が得られた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
対話型進化計算の利用者に対して,個体の進化を実現するために必要最小限の能力を仮定するという新しい研究方向を設定したことは大きな研究成果である.このような研究方向に基づき,利用者の評価能力や比較能力,記憶能力に対して,必要最小限の能力を仮定することで対話型進化計算アルゴリズムの枠組みを確立した.これは,3年間の研究期間でのアルゴリズム開発の基本構造となる枠組みである.しかし,この枠組みに基づく対話型進化計算アルゴリズムのプログラミングを行えていないため,研究計画どおりに研究が進んでいるとは言えない.しかし,一方では,研究計画に含まれていなかった目的関数の離散化の影響に関して大きな研究成果が得られたので,総合的に評価すると,研究はおおむね順調に進展していると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は,前年度に確立した対話型進化計算アルゴリズムの枠組みを実際にプログラムとして実装し,数値実験を用いて性能評価を行う.本研究の枠組みでは,利用者の負荷を最小化するという明確な目的があるため,利用者の記憶能力,評価能力,比較能力に対して必要最小限の仮定だけを置いている.このため,利用者から得られる情報は通常の対話型進化計算と比較すると圧倒的に少なく,対話型進化計算アルゴリズムが高い探索能力を持つことは難しい.このような困難な状況で対話型進化計算アルゴリズムの高速化を実現するために,過去に評価された全ての個体に関する情報を十分に利用する方法を開発する. 平成24年度以降は,多目的最適化問題への拡張も行う.複数の目的を最適化する場合,一方を良くすれば他方が悪くなるというトレードオフが存在する.そのため,優越を判断できない多数の非劣解が存在することになる.これは,提示されている個体が直前に評価された個体と比較される時,どちらが良いとも言えないという評価結果が頻繁に発生することを意味する.数値実験により,このような対話型進化計算の挙動を分析し,単一目的最適化とは異なる対話型多目的進化計算アルゴリズムの開発を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は,対話型進化計算アルゴリズムのプログラミングを行っていないため,当初予定よりもプログラミング補助の支出が少なくなり,107,845円の繰越金が発生した.次年度は,対話型進化計算アルゴリズムのプログラミングを行うため,繰り越した研究費も含めて,プログラミング補助と数値実験補助のための謝金に研究費の多くを使う予定である.また,学会等で発表できる研究成果が出ることが期待できるので旅費にも研究費の一部を使う予定である.
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