2012 Fiscal Year Research-status Report
利用者による明示的な評価を必要としない対話型進化計算アルゴリズムの提案
Project/Area Number |
23650119
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
石渕 久生 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60193356)
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Keywords | 進化計算 / 対話型進化計算 / 多目的最適化 / 利用者 / 選好情報 |
Research Abstract |
本研究では,個体評価を行う利用者の負荷の最小化を目的とした対話型進化計算アルゴリズムの開発に関する研究を行っている.平成24年度の最大の成果は,利用者の評価能力,比較能力,記憶能力に関して,進化計算を実現できる最低限の能力を仮定した対話型進化計算アルゴリズムの実装を行い,国際会議論文として発表したことである.このアルゴリズムでは,利用者は,現時点で提示されている個体が直前に評価した個体と比べて優れているか,優れていないかという評価だけが可能であると仮定した.現在の解が直前の解と同等の場合は,優れていないという評価に含めることにした.これは,直前に提示された解よりも良い解が提示された時だけ,利用者が反応を示すという状況を想定している. 提案アルゴリズムでは,直前に提示された解,現時点で提示されている解に加えて,最終的な解の候補となる候補解集合が保持されている.ただし,アルゴリズムの終了時点で1個の解を選択できるように候補解集合に含まれる解の数が限定される.例えば,アルゴリズムが終了する直前において,候補解集合に2個の解が含まれており,そのなかの1個の解が直前に評価されている場合では.候補解集合に含まれている別の解を最後に提示することで,最終的な解を1個に限定できる.一方,候補解集合に1個だけの解が含まれ,その解が直前に評価されていれば,最後に提示する解は,任意の方法で生成することができる. なお,今年度も,昨年度と同様に,個体の細かい違いを認識できないような利用者を仮定した対話型進化計算アルゴリズム開発の準備として,目的関数の離散化が進化計算に及ぼす影響の調査も行った.進化型多数目的最適化に対する数値実験では,「目的関数の離散化が多数目的最適化を容易にすることもある」という興味深い結果が得られた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
直前に提示された解よりも現在の解が優れているか,優れていないか,という評価結果だけが利用者から得られる状況における対話型進化計算アルゴリズムの実装を平成24年度に行うことができたので,本研究は順調に進展していると言える.このアルゴリズムでは,利用者が行うことのできる評価回数を任意の値に設定することが可能であり,設定された値に応じて候補解集合に含まれる解の数を調整することで,アルゴリズムが終了したとき,常に1個の解を選ぶことができる.平成24年度は,候補解集合に複数の解を含むことができるアルゴリズムと常に1個だけの候補解を持つアルゴリズムの比較も行い,複数の候補解をもつことの優位性を簡単な数値実験で示すこともできた. また,平成25年度における現実世界の問題への応用の準備として,2次元決定変数空間内に任意に与えられた直線からの距離を最小化する例題を作成し,提案した対話型進化計算アルゴリズムによる探索挙動の調査も行った.さらに,個体の評価回数が非常に少ないという対話型進化計算の特殊状況に対応できるような個体生成メカニズムに関する調査も進めている. このように,直前の解との評価だけに基づく対話型進化計算アルゴリズムの開発という主要な目的と共に,実際の応用において重要となる個体生成メカニズムの検討も行っており,本研究は順調に進展していると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
直前に提示された解との比較だけに基づく対話型進化計算アルゴリズムを洗練させ,進化計算分野における主要な国際会議(CEC 2014, GECCO 2014, PPSN 2014)で大きな注目を集めることができるような研究成果を挙げることを平成25年度の目標とする.具体的には,次に提示する解の生成方法,すなわち,進化計算における個体生成方法を状況に応じて選択できるような対話型進化計算アルゴリズムの開発を行う.個体生成方法としては,完全なランダム生成,候補解集合に含まれる解に対する突然変異操作の適用,候補解集合に含まれる解に対する交叉操作の適用,交叉操作と突然変異操作の適用を考えることにし,対話型進化計算アルゴリズムにおいて,次に提示される解を生成するごとに,このような生成方法のどれを用いるべきであるか決定できるようなアルゴリズムの開発を行う. 対話型進化計算を含めて,進化計算では一般に,進化の序盤では,探索空間を広く調べるために,ランダムに個体を生成することは有効であると思われる.逆に,進化の終盤では,候補解集合に含まれている解から交叉や突然変異により新しい解を生成することが有効になると思われる.このとき,交叉操作が有効であるためには,候補解集合に複数の解が含まれている必要があり,候補解集合に含まれる解の数の調整も大きな問題となる. なお,本研究の応用として,利用者の好みに依存するような意思決定問題に対する提案手法の適用を考えている.具体的には,服のデザインや色の決定問題に提案手法を適用する予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は,対話型進化計算アルゴリズムを洗練させる.そのため,対話型進化計算アルゴリズムの実装の補助,すなわち,プログラミングの補助を行ってもらうために謝金が必要となる.さらに,提案手法の現実問題への適用も行うため,利用者が評価を行い,評価結果を入力するようなインターフェース開発の補助を行ってもらうための謝金も必要となる.次年度の研究費の多くは,プログラミングとインターフェース開発の補助のための謝金となる予定であるが,3年間の研究期間の最終年度となるため,研究成果の発表のための旅費にも研究費の一部を使う予定である.
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Research Products
(2 results)