2011 Fiscal Year Research-status Report
イノベーションのための効果的なアイディア生成に関する行動経済学的分析
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23650126
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
植田 一博 東京大学, 情報学環, 教授 (60262101)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清水 剛 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (00334300)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | イノベーション / 普及理論 / 創造性 / 認知科学 |
Research Abstract |
イノベーションのアイディアの多くは製品開発者(イノベータ)によって生成されるという我々のナイーブな理解に反して,ユーザ,しかも製品開発者から製品知識の深さや製品採用の速さの点でやや距離を置いた「アーリアダプタ」から出される可能性があることが既に示唆されている.本研究では,まず,そのようなアイディア生成には,先行するアイディアという情報が重要なのか,製品開発者からの距離というユーザの個人特性(イノベータかアーリアダプタかという特性)が重要なのかをアイディア生成実験により検証した.その結果,先行するアイディア情報はアイディア生成に重要であるが,その情報を効果的にアイディア生成に活かせるのはイノベータではなくアーリアダプタであることが明らかとなった. 次に,インターネット調査により,同様なアイディア生成実験を日米英の多くのユーザに実施した.その結果,日英では,イノベータよりもアーリアダプタがより質の高いアイディアを生成した一方で,アメリカでは,むしろイノベータの方が質の高いアイディアを生成することがわかった. 上記の一連の実験からユーザ視点(厳密にはアーリアダプタ視点)で技術を捉えることの重要性が示唆されたため,そのことをワークショップ形式の実験により検討した.具体的には,近未来の社会変化シナリオと現在の技術マップとを結びつけることで,実験参加者に近未来の好ましい製品・サービスを予想させた.その際に,実験参加者の半分には技術者が作成した技術マップを,残りの半分にはユーザが技術をどのように使いこなすかという観点から経営学者が作成した技術マップを与え,両群のアイディアの質を比較したところ,後者の実験参加者のアイディアは前者のものに比べて創造性の点で高く評価された.このことから,イノベーションのためのアイディアを考える際に,ユーザの視点を導入することが重要なことが示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り,アイディアの質に人の特性(商品採用速度)と先行情報のいずれが影響しているのかを明らかにする実験,ならびにその日英米での比較実験が実施できた.日英米の実験に関しては,収集したデータ量が膨大なため,まだ十分な分析ができていないが,おおむね当初の目標は達成できたと言える.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度取得した日英米のデータの分析を引き続き実施する.その上で,平成24年度に実施する予定の,アイディア生成に与える別の要因を探る実験を実施する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
アイディア生成に与える別の要因を探る実験を行うために必要な機材の購入,人件費(実験補助者への謝礼と実験謝金)に用いる.また,成果を国際会議,国内会議にて発表するために必要な旅費および会議参加費,また英文ジャーナルに投稿するための英文校閲費に用いる.
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