2012 Fiscal Year Research-status Report
クラウドを用いた日本語教育Web教材の高品質配信手法に関する研究
Project/Area Number |
23650127
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
井口 寧 北陸先端科学技術大学院大学, 情報社会基盤研究センター, 教授 (90293406)
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Keywords | クラウド / 日本語教育 / 通信遅延 / e-ラーニング / Web教材 / 遠隔教育 / Web学習 |
Research Abstract |
本研究は,クラウド上にWeb 教材の配信拠点を構築することによって,従来のWeb 教材で問題となっていた配信遅延を解消し,円滑な遠隔学習環境を提供する.日本語教育分野では,学習者の地理的密度が高くないため,Web 教材を用いた教育が期待されてきたが,通信遅延や単一のサーバへのアクセス集中によるレスポンス低下が問題となっていた.そこで本研究では,近年利用可能になってきたクラウドを用い,世界各地のクラウド・サイトに日本語教育Web 教材の配信拠点を構築することによって, 伝送遅延やアクセス集中を軽減し, 円滑な学習環境を世界各地の学習者に提供する体制の構築法を研究するのが,本研究の目的である. 2012年度は,前年度に行った日本語学習Web 教材のコース設計に基づいて,日本語の発音を中心とした学習教材を作成した.質問と回答,縮約形,会話例など,教程ごとにモデル音声を録音し,このモデル音声を発声し,聞き取り,正解をチェックするWeb教材を構築した.モデル音声の録音は,技術的には研究代表者の井口が監修し,教材の内容については連携研究者の小河原と高橋が中心となって監修し進めた. 2012年度は東日本大震災での遅れを取り戻すために,2つの教材を作成した.第一版はWeb教材化し,学会発表を行いフィードバックを得た.作成したWeb教材は,教程ごとに項目が並び,ボタンのクリックによって発声するものである.別のボタンによって正解が表示されるので,自己学習が可能となっている.海外で通信遅延を評価した所,定性的には十分実用に耐える遅延となっていることが分かった.この結果を元に,改訂と増補を行った第二版の教材を作成した. 第二版の教材の評価を今後行う予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2012年度の実施項目は,⑤ Web教材の多拠点クラウド上への実装,⑥ Web教材の供用及び学習効果の評価,⑦ 評価に基づく教材の改良,の3点である. このうち,⑤ Web教材の多拠点クラウド上への実装について,その前段階としてクラウドに配信可能な形態で日本語教育コースウェアを作成した.また,受け入れ基盤となるクラウドの基本整備を行った.⑥ Web教材の供用及び学習効果の評価 について,学会で発表し,フィードバックを得ている.また,海外からのアクセスについても,基礎的な評価を得た.⑦ 評価に基づく教材の改良について,既に改良・増補版として第二版を作成している.かなりの部分は予定通り進行しているが,研究の終盤となる海外を含む実用規模での評価がまだ未実施である. 遅延の理由は研究の核となる日本語CAI教材の収録を,平成23年8月頃に連携研究者が所属する仙台市の宮城教育大学にある録音スタジオにて予定していたところ,平成23年3月の東日本大震災の被災の影響で,当面利用不可能となったことが大きな理由である.代替スタジオなどを探したが,仙台市を含む東北地域の広範な場所が被災し,利用可能なスタジオが見つからず,収録が遅延した.県外のスタジオの利用も考えたが,声優を仙台市在住者に依頼したので,旅費の観点から予算の範囲内での執行が困難と考えた. 2012年度から仙台市内の代替スタジオが利用可能となり,現在は当初予定よりおよそ半年遅れで研究を進めている.このため,研究の最終段階のシステム評価と国際会議発表を次年度に行うことととした.
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Strategy for Future Research Activity |
Web教材としては,第一版が完成し,第二版(改訂・増補版)の収録が完了しWeb化しているところである.Web化スクリプトは第一版作成時に完成させてあり,録音データも既に作成してあるので,スクリプトに入力するデータを整えれば,第一版作成時よりもスムーズにWeb化が可能であると考えている.クラウドの基礎的なデータは構築してあるので,内容を本研究で作成した日本語教材に乗せ換えれば,世界各地のサイトに容易に展開できると考える. 世界各地でのクラウドに展開した後,協力的な日本語学習者に利用してもらい,通信遅延が受忍限度内か,発話品質は十分かなどについてアンケートや聞き取り調査を行い,評価を行う予定である. この評価結果を元に,国際会議などで発表予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究の核となる日本語CAI教材の収録を,平成23年8月頃に連携研究者が所属する仙台市の宮城教育大学にある録音スタジオにて予定していたが,平成23年3月の東日本大震災の被災の影響で,当面利用不可能となった.代替スタジオなどを探したが,仙台市内の多くの場所が被災し,利用可能なスタジオが見つからず,研究が遅延した.県外のスタジオの利用も考えたが,声優を仙台市在住者に依頼したので,旅費の観点から予算の範囲内での執行が困難と考えた.平成24年度から仙台市内の代替スタジオが利用可能となり,現在は当初予定よりおよそ半年遅れで研究を進めている. このため,研究の最終段階のシステム評価と国際会議発表を次年度に行うこととし,前年度未使用額はその経費(クラウド使用料および国際会議の旅費・参加費等)に充てることとしたい.これらの経費は,当初計画で研究の最終段階の費用として計上しているものである.
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