2013 Fiscal Year Annual Research Report
健康の行動・認知的研究:比較健康科学の構築に向けて
Project/Area Number |
23650135
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
森村 成樹 京都大学, 野生動物研究センター, 特定准教授 (90396226)
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Keywords | 健康 / 比較認知 |
Research Abstract |
自己の健康状態を正しく理解することは、実際のところ容易ではない。健康状態に関連して新しい行動を獲得したり、今まで出来ていた行動を失ったりすることは、ヒトにおいては受け入れがたい事実を理解し、代替機能を発見・習得する複雑な認知的過程と見なすことが出来る。程度の違いはあっても、すべての動物が行動の獲得・喪失を経験し、非言語的手続きで問題解決を図る。そこで本計画では、チンパンジーを主な対象として、代替機能の発見・習得に関わる認知機能について実験的に検討した。認知的実験(パズル実験と道具使用実験)および社会的実験(集団編成の操作)を様々な難易度で熊本サンクチュアリにおいて実施した。また、環境要因や種差を検討するために、国内3箇所の動物園でチンパンジー、ニホンザル、ゾウの行動観察を実施した。実験操作が難しいため、外気温に対する体温調整行動について調べた。さらに、左腕を麻痺した野生チンパンジーの道具使用行動の事例も検討した。チンパンジーでは、正答率が増加する行動の獲得過程では単独行動が中心であるのに対し、逆に難易度が上がり解決困難な場面では情動的・社会的行動がより多く出現した。その一方で、外気温の低下/上昇といった物理的環境変化にともなう行動抑制では、動物3種で情動表出は乏しかった。ヒトには暑さ・寒さにも “恨めしい”と感じる心の働きがあり、行動の獲得・喪失にともなう情動的・認知的行動の発現は動物種ごとの関係性の理解の深さと関連していると示唆された。加えて野生チンパンジーで、複雑な手足の組み合わせ動作によって麻痺した左手の代替機能を習得した事例が見つかった。ヒト以外の動物には、非言語による代替機能の習得という行動の柔軟性がある。ヒトは行動の高い柔軟性により多様な健康状態が実現しており、ヒト以外の動物にもその萌芽を認めることができる。
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[Journal Article] A case of maxillary sarcoma in a chimpanzee.2013
Author(s)
Fujisawa M, Udono T, Nogami E, Hirosawa M, Morimura N, Saito A, Seres M, Teramoto M, Nagano K, Mori Y, Uesaka H, Nasu K, Tomonaga M, Idani G, Hirata S, Tsuruyama T, Matsubayashi K.
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Journal Title
Journal of Medical Primatology
Volume: 43
Pages: 111-114
Peer Reviewed
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