• Search Research Projects
  • Search Researchers
  • How to Use
  1. Back to project page

2011 Fiscal Year Research-status Report

統計数理モデリングに基づく感染症拡大予測と科学的政策決定

Research Project

Project/Area Number 23650143
Research InstitutionThe University of Tokyo

Principal Investigator

井元 清哉  東京大学, 医科学研究所, 准教授 (10345027)

Project Period (FY) 2011-04-28 – 2014-03-31
Keywords感染症拡大の数理モデル / マクロシミュレーション / エージェントシミュレーション / ジョイントモデル
Research Abstract

2009年の新型インフルエンザパンデミックは記憶に新しい。このようなヒトに感染する新型の感染症が海外において発症し、日本に持ち込まれることは今後も確実に起こる。日本においては、インフルエンザは定点観測により、現状の感染拡大状況はかなりの高精度でデータとして得られる。しかしながら、今後、感染がどのように広がるかといった将来の予測を行うモデリングに対しては十分に研究が進んではいない。本研究課題において、感染症の拡大シミュレーションモデルを確率モデルとして定式化し、実際の感染者数のデータに基づいて拡大予測が出来る統計的モデリングを確立する。また、その予測モデルを用いて、例えば、ワクチン接種計画等のパンデミックコントロール政策の科学的有効性の検証を行う枠組みを確立する。新型インフルエンザなどの感染症拡大を抑制するための政策は、科学的エビデンスをもって立案されなければならない。しかしながら、2009年新型インフルエンザへの対応は、十分な科学的エビデンスに裏打ちされていたとは言えない。申請者は、空港検疫の非有効性を統計学的に証明し、海外から感染者が流入する状況の下で学校閉鎖などの社会介入の最適実施を研究し原著論文として欧州の感染症対策専門誌に発表した。しかしながら、感染拡大を予測するための数理モデルは、感染していない人々、潜伏期間にある人々などそれぞれの属性にある人々をまとめた変数を用い、その時間発展を微分方程式により表したものであったため、実際の各都道府県の新型インフルエンザ確定者数を予測するにはモデルの表現力が圧倒的に足りないことが分かった。そこで、これまでの感染症拡大シミュレーションモデルを確率モデルとして定式化し、より高い表現力を有するエージェントベースのシミュレーションモデルと融合させることで、地域毎の感染拡大を予測し、地域毎の対策の連携を構築することを目標とする。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

マクロシミュレーションモデル SEIR モデル、およびその派生モデル(Hethcote (2000) SIAM Review)を確率モデルとして定式化した。特に、感染効率パラメータに関して、ベイズ的枠組みでの推測を行い、感染症拡大予測モデルの統計科学的枠組みを非線形非ガウス状態空間モデルとして定式化した。シミュレーションモデルには、多数のパラメータが含まれる。どのようなパラメータ群がデータから推定可能で、どのパラメータはこれまでの研究から値を妥当に決めることが出来るのかについて様々な状況で数値実験を行い、その特性をまとめることができた。2009年新型インフルエンザ H1N1 の感染確定例データを地域別に再集計し、その特徴をマクロシミュレーションモデルの理論的挙動と合わせて精査した。その結果、マクロシミュレーションモデルにおける地域別感染例数の予測限界を明らかにし、モデルについて可能な拡張コンポーネントを明らかにした。2009年の新型インフルエンザ確定例を集計し、都道府県別にまとめたデータを活用して、(A)ある程度近隣の地域でデータをまとめた方が妥当なケース、およびその逆で、(B)複雑な地域的特性により県レベルの情報集約では荒すぎてモデルが妥当ではないケースについて、観測データとマクロシミュレーションモデルの理論的挙動との乖離を詳細に検討した。特に、関西圏や関東圏をまとめたような中規模のマクロシミュレーションモデルにおいては、従来のSEIRモデルでは感染者数の予測能力は極めて低いことが分かった。以上のように、予定していた既存のマクロシミュレーションモデルによる限定された地域での感染拡大の予測の限界を探り、拡張すべきモデルのコンポーネントについての知見を深めることが出来た。

Strategy for Future Research Activity

平成23年度に行った実際の観測データとの詳細な比較に基づくマクロシミュレーションモデルの確率モデルとしての拡張研究を進めると共に、構築した確率的マクロシミュレーションモデルのパラメータの自動推定について、非線形非ガウス状態空間モデルにおける Data Assimilation 法に基づく方法を開発し、関東JR沿線におけるエージェントベースシミュレーションモデルの構築研究をスタートする。具体的には次の2つの研究を遂行する。(1)確率的マクロシミュレーションモデルのパラメータ推定を非線形非ガウス状態空間モデルにおけるData Assimilation法の枠組みで完成させる。マクロシミュレーションモデルは、微分方程式により与えられ、いくつかのパラメータについて時変にし、その時間発展を例えば一次や二次のトレンドモデルなどで記述するとき、そのモデル式は一般に非線形非ガウスの状態空間モデルとして表現できる。そのパラメータ推定法としては、粒子フィルタを用いたモンテカルロ法が有効な方法として考えることができ、まずはその実装を行う。しかしながら、感染症拡大をコントロールするための政策立案とその評価を考えた際、微分方程式によるモデルを差分方程式により近似したモデルの方がより容易に感染拡大への介入操作を表現できることもある。その成果をさらに観測データからのモデルの自動学習へと大きく発展させることを狙っている。(2)関東JR沿線におけるエージェントベースシミュレーションモデルを構築し、次年度の統合モデル構築への基盤整備を進める。特に、中央線沿線、山手線沿線の主要駅周りの都市について、人口の規模を実際の10分の1とした仮想社会を構築し、人々の行動を確率的にモデル化したシミュレーションモデルを構築する。

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

本研究は、平成23年度から25年度の3年間の計画であり、次年度(平成24年度)はちょうど真ん中に位置する。従って、通常通り、配分される研究補助金を用い、研究発表やプログラムの作成に用いるノートパソコン、デスクトップパソコンを購入する。研究成果の発表や情報収集のため、国内外の研究集会に参加する予定である。

  • Research Products

    (1 results)

All 2011

All Presentation (1 results)

  • [Presentation] Estimation of macroscopic parameter in agent-based pandemic simulation2011

    • Author(s)
      M. Saito, S. Imoto, R. Yamaguchi, S. Miyano, T. Higuchi
    • Organizer
      13th International Conference on Information Fusion
    • Place of Presentation
      シカゴ、米国
    • Year and Date
      2011年7月6日

URL: 

Published: 2013-07-10  

Information User Guide FAQ News Terms of Use Attribution of KAKENHI

Powered by NII kakenhi