2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23650147
|
Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
村上 征勝 同志社大学, 文化情報学部, 教授 (00000216)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 仏像 / 造像様式 / データサイエンス / 多次元解析 |
Research Abstract |
本研究の目的は、これまで定性的な観点からの研究が中心であった仏像の造像様式を、写真から得られる仏像の形状データを多次元解析法で解析し、数量的観点から仏像の造像様式に関し新たな知見を得ることによって、美術史の研究領域にデータサイエンスの手法を用いた仏像研究の基礎を作ることにある。さらに、仏像のように実際に計測が困難な国宝、重要宝文化財、美術品等の3次元形状の数量的特徴を、写真から得られる2次元情報で把握するためのデータ解析法の開発も目的とする。 具体的には、11世紀前半に仏師定朝により完成された和様の様式(定朝様式)と、定朝以前の造像様式、定朝以後の12世紀後半からの鎌倉様式の三つの造像様式の違いを数量的な観点から明らかにすることを試みる。 本年度は分析対象の仏像の選定、写真の収集、解析法の検討を中心に研究を進めた。データ取得・解析の困難さを考慮し、まず仏像の頭部に焦点を絞り、平安時代後期、鎌倉期の40体の仏像の正面及び側面写真から、目、鼻、口、眉、顔の輪郭など造像様式を把握するための形状に関する16か所の位置を計測し、これらのデータから仏像(写真)の大きさに関係しない3つの計測点間の角度を求めて主成分分析で解析し、造像様式の違いを検討した。 ただ計測に用いた写真が必ずしも真正面から撮影されているとは限らないという問題が考えられるため、写真撮影時の上下や左右のぶれの影響を調べ、計測値の補正方法を検討した。 また仏像頭部の部位の測定値という数量的データの解析に加え、形状の定性的データを用いた造像様式の特徴把握も検討した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は仏像写真の収集および解析方法の検討に重点を置き研究を進めたが、平安時代後期、鎌倉期の一部の仏像に関して、正面写真、側面写真が入手出来たことにより、40体の仏像に関して、頭部の正面及び側面の2枚の写真から得たデータを用い、主成分分析で、平安時代後期、鎌倉期の造像様式を比較検討する段階まで研究が進んだ。
|
Strategy for Future Research Activity |
スキャナーによる仏像写真の取り込み及び頭部の部位の計測という作業が予定より順調に進んだため、23年度は申請した額より少ない執行額となっている。24年度は分析対象の仏像の範囲を飛鳥、平安時代前期まで広げるとともに、分析対象の仏像数と個々の仏像の頭部形状に関する計測点を増やす予定である。計測値に関しては、写真撮影時のカメラの上下や左右のぶれの影響を調べ、計測値の補正方法の検討を続ける。 また頭部形状に関しては数量的データの解析に加え、定性的データを用いた特徴把握も検討する。さらに形状把握を頭部に限らず、全身像まで広げた場合の造像様式の把握の可能性も検討する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
申請時の研究計画と大きく変わるところはない。物品費は、主として書籍の購入に充てる。旅費は、資料・情報収集、研究発表に充てる。人件費・謝金は、資料整理、データ入力、解析補助に充てる。その他の経費は、主として文献複写費に充てる。
|