2011 Fiscal Year Research-status Report
複雑なネットワーク様信号伝播経路における経路刈り込みによる信号処理機能の顕在化
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23650151
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
元池 育子 東北大学, 情報科学研究科, 教育研究支援者 (70347178)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 樹状構造 / 反応拡散 / 信号伝播履歴 |
Research Abstract |
信号伝播経路としての樹状構造に対して、刈り込みを適用する前段階の初期状態としての樹状構造を、可能な限り少ない因子で形成するためのモデルを検討した。具体的には、偏微分方程式で記述される樹状構造形成を記述する反応拡散方程式系を基に、計算資源有効活用の観点から時間・空間・状態を申請研究者が離散化したもの(セルオートマトン)を用い、枝形成の促進因子や形成因子自体の拡散係数相当のパラメータ等による形成パターンの空間充填率・フラクタル次元等の形態特性を明らかにした。これは、対象次元を2次元及び3次元とした。また当該モデルで形成された樹状構造を、固定された信号伝播経路とした場合の信号伝播の様相を、これもセルオートマトン化した興奮性の信号伝播ダイナミクスを用いて調べた。上記を通して、より「樹状」と呼べるような形態が形成されるパラメータセット、及び信号伝播の観点から容易に枝、特に分岐点を伝播しうる形態の形成条件を導出した。 また、加算的に初期樹状構造を形成するダイナミクスに対する相補的な観点から、初期状態としてランダムに樹状構造の基となる経路を配置し、信号伝播の履歴に応じて減算的に樹状となるモデルの検討を行った。具体的には信号の伝播状況に応じて、経路の補強及び縮退が起こるという条件であり、履歴が経路径の時間変化に与える影響の程度に依存して、樹状経路の疎密が異なってくることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該年度の目的の一つとしてあげていた、樹状構造形成に関する信号伝播のダイナミクスを内包した保存量の導入について、検討を重ねているが、適当な条件を未だ見いだせていないことから、やや遅れていると評価を行った。この保存量の導入によって、よりダイナミックな形態の変化が起こると考えており、引き続き検討を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
23年度の課題でもあった、系の何らかの保存量導入について、引き続き検討を行う。また、信号伝播の様式と処理機能を相関づけることを目指す。具体的には、次のステップとして、保存量を導入した場合の形態の相図及び特徴量のマップから、信号処理機能の顕在化につながる特徴的な時空間パターンを同定・抽出し、信号処理機能の解釈を行う。先行研究から、樹状構造では分岐点において、場の条件に依存した時間窓をもつ同期・AND演算や、自励発振がみられることがわかってきている。これら局所演算の多分岐パターン全体における統合演算様式を検討する。特定の時空間パターンに対して、信号処理機能の解釈を行うのは、従来の計算概念から外れた「機能」になる可能性が高く、計算論を含め既存の研究を調べ、新規な提案をする必要があると考えられる。 なお、大量のデータを取り扱うことから、画像パターンからの特徴抽出に関連して、定量化の自動アルゴリズムを検討する必要があると考えられる。申請者は定量化の一助として、統計的なデータ解析の手法や、実際の神経細胞の形態データに対する、特徴量の抽出方法についても学び、適宜導入する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費は、主に旅費と書籍等資料購入費、及び論文投稿に関わる費用とする予定である。
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Research Products
(3 results)