2011 Fiscal Year Research-status Report
数理モデルを用いた未分化細胞の分化・脱分化機構の解析
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23650152
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
古澤 力 大阪大学, 情報科学研究科, 准教授 (00372631)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 幹細胞 / 細胞分化 / 計算機シミュレーション |
Research Abstract |
本研究は、内部に発現制御ネットワークを持つ細胞が相互作用している多細胞系の数理モデルを用いた解析によって、未分化細胞の分化/脱分化機構の理解することを目的としている。可能な制御ネットワークの全探索を行うことによって、出現し得る分化過程のダイナミクスを網羅的に解析し、その過程における不可逆性や安定性の出現機構の理解を目指す。23年度は、遺伝子数が5である可能なすべての制御ネットワーク(総計でおよそ1.5億通り)について、細胞数が32となるまでの発生過程をすべてシミュレートし、細胞間の相互作用によって細胞状態が多様化するケースを抽出した。そこから、細胞の状態が遷移した後に、一部の細胞が元の状態にと留まるという幹細胞的な振る舞いをするケースを抽出したところ、そのすべてにおいて、分化能を持つ細胞は振動する遺伝子発現ダイナミクスを持つことが示された。また、そのように振動する発現ダイナミクスを持つ細胞からの分化過程は、一部の細胞を取り除くといった外部からの摂動に対して安定であることが示された。加えて、そうした幹細胞的なダイナミクスをもたらす発現制御ネットワークが持つ性質を調べたところ、特定のフィードバックループが有意に多く存在することが確認された。これらの性質は、幹細胞的なダイナミクスを持つ細胞に共通の性質であると期待することができ、今後の研究として、現実の幹細胞システムの実験データにおいて同様の性質を見いだすことが出来るかを解析する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
小さい遺伝子数からなる発現制御ネットワークの全探索を用いて、幹細胞的なダイナミクスをもたらす制御ネットワークの同定に成功した。この結果は、今後の解析の基盤となると期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度は、23年度に見いだされた幹細胞が共通に持つと期待できる性質について、そのさらなる解析を行う。特に、現実の発現制御ネットワークなどに、それらの性質を見いだすことが出来るかを検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
計算機関係の消耗品に使用するとともに、成果発表の旅費と論文投稿料に使用する予定とする。
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