2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23650154
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
岡田 眞里子 独立行政法人理化学研究所, 細胞システムモデル化研究チーム, チームリーダー (10342833)
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Keywords | 細胞不均一性 / シグナル伝達 / 乳がん / エストロゲン受容体 |
Research Abstract |
本研究では、乳癌細胞における薬剤耐性機構を明らかにするため、単一細胞レベルでの分子ネットワークを実験と理論解析を通じて明らかにすることを目的とした。文献情報や細胞実験をもとに、エストロゲン受容体ネットワークに関わる35種の分子種を選定した。薬剤耐性MCF-7乳がん細胞では、野生株と比較して、EGFR、ErbB2、ErbB3膜受容体、エストロゲン受容体、GSK3 beta、E2F1、CREB、Fos、Jun、JunBのリン酸化またはタンパク量の変化がウェスタンブロット解析の結果、見られた。興味深いことに、エストロゲン受容体や膜受容体活性およびその下流の転写因子の発現量や活性が2細胞間で大きく異なるのにも関わらず、中間のシグナルであるERKおよびAkやアダプタータンパクのリン酸化には大きな違いはなかった。この原因として、ウェスタンのような細胞集団の平均ではそれぞれの個別の細胞の活性が平均化されてしまって変化が見えなくなっていることが考えられた。よって、HRG刺激条件の時間と濃度を変えて一細胞レベルでの分子活性を観察することとした。野生株を用いて、ERKの成長因子依存的なリン酸化をフローサイトメトリーで観察すると、ERK活性が全くない細胞と活性の高い細胞の2つの集団に分かれることがわかった。さらにこの2峰の活性ピークごとに細胞を分取し、ウェスタンブロットを行うと、細胞の高い集団ではErbB3およびAktリン酸化が高いことが示された。すなわちMCF-7では、細胞の不均一性にErbB3受容体活性そのものが大きく関与する可能性が示された。これらの情報を理論的に整理するために、膜受容体から転写制御までのシグナルネットワークの数理モデルを作成した。この野生株モデルの作成後、エストロゲン受容体やタモキシフェン耐性株のパラメータ(受容体の高活性等)を変えてシミュレーションを行っていく。
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