2011 Fiscal Year Research-status Report
ニホンザルにおける直立姿勢の獲得とその神経制御戦略
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23650156
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
野村 泰伸 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (50283734)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森 大志 山口大学, 農学部, 准教授 (50301726)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | ニューロインフォマティクス / 計算論的神経科学 |
Research Abstract |
平成23年度は,静止立位中のニホンザル骨格系の多リンク剛体系によるモデル化,および筋電図計測のための電極埋め込み外科手術を含む実験系の構築を実施し,床反力計上で静止立位を維持するサルの姿勢と床反力作用点(重心)の動揺,および下肢筋群の電気活動の同時計測を可能にすることを目指した.静止立位のモデル化に関しては,倒立二重振子(体幹と脚部から2リンク)を用いたフィードバック制御モデルの構築と動態の数値シミュレーションを実施した.特に,リンクの身体パラメータと腰および足関節の粘弾性係数が直立立位姿勢の安定性および重心動揺パターンに与える影響を明らかにした.また,立位姿勢および直立二足歩行を学習によって獲得したニホンザルを用い,静止立位動態(静止立位時重心動揺)の計測を実施した.この際,重心動揺は薄型足圧分布センサーを用いて行い,全身運動は高速ビデオを用いて行った.その結果,全身運動動態と重心動揺動態の関係を高精度で計測するためには,高速ビデオ撮影に加えて,マーカを用いた3次元運動計測(モーションキャプチャ)が必要であることが明らかとなった.そこで3次元運動計測の環境整備を実施した.現在,3次元運動計測,高速ビデオ撮影,重心計測の同時計測系の確立を進めている.筋電図計測のための電極埋め込み外科手術は,手術施行後の実験可能期間が長くても数ヶ月程度であるため,本年度は電極を埋め込む筋群の検討にとどめ,同時計測系の確立を待って,電極埋め込み手術を実施することとした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
多リンク剛体モデルを用いたモデル化は,静止立位姿勢に関する従来仮説に基づく制御および間欠制御を用いた倒立二重振子モデルの構築,それらのモデルの動態シミュレーション,および静止立位の安定性解析を完了することができた.その結果,パラメータの変動に対するロバスト安定性に関する間欠制御モデルの優位性を明らかに出来た.これは当初計画よりも進展した成果である.ニホンザルを用いた立位運動計測に関しては,全身運動動態と重心動揺動態の関係を高精度で計測するためには,高速ビデオ撮影に加えて,マーカを用いた3次元運動計測(モーションキャプチャ)が必要であることが明らかとなった.そこで,当初は計画していなかったが,3次元運動計測の環境整備を検討・実施した.現在,3次元運動計測,高速ビデオ撮影,および重心計測の同時計測系の確立を進めているところである.筋電図計測のための電極埋め込み外科手術は,手術施行後の実験可能期間が長くても数ヶ月程度であるため,本年度は電極を埋め込む筋群の検討にとどめ,同時計測系の確立を待って,電極埋め込み手術を実施することとした.この意味で,静止立位時の筋電図計測系の確立には至らなかった.
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Strategy for Future Research Activity |
ニホンザルの多リンク剛体モデルの構築と動態シミュレーションに関しては,現在の2リンク系を3リンク系に拡張する計画である.また,静止立維持に報酬として少量の餌を断続的に与えるが,それによる頭部の変位の効果を剛体リンクモデルに導入することを計画している.ニホンザル静止立位時の重心動揺および筋活動の計測に関しては,現在推進中の,3次元運動計測,高速ビデオ撮影,および重心計測の同時計測系の確立を完了し,平成24年度は,筋電図計測のための電極埋め込み外科手術を実施し,ニホンザル静止立位時の重心動揺および筋活動の同時計測を実施する予定である.得られた実験データを解析し,従来仮説モデルおよび間欠制御モデルの動態と定量比較することで,ニホンザルが静止立位維持のために獲得した神経制御戦略に迫る計画である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
立位姿勢の剛体リンクモデルの制御に関する数理モデルの推進、およびサルの実験データ解析を実施するために,デスクトップPC(100,000円)を1台,および数値解析ソフト(120,000円)を購入する計画である.サルを用いた動物実験に関しては,以下の消耗品(計350,000円)を購入する計画である:筋電記録用電極(MicroProbe社)150,000円(パッチ型電極,12,000円/単価)電極作成用ワイヤ(AM Systems社)100,000円,薬品等 100,000円.こられを用いて,サル二足立位モデルの直立姿勢の維持に関与する腓腹筋および前頚骨筋から筋活動を導出記録し,筋活動が持続性あるのか,一過性であるのか,その相互活動タイミング等を解析する.また,大脳皮質の姿勢制御への関与を明らかにするために,サル皮質運動領野を一時的に不活化し,その際の姿勢筋放電様式を正常立位時と比較する,また,動物管理費として50,000円を計上する計画である.成果発表,研究打ち合わせ,情報収集の旅費として,代表者と分担者を合わせて,計300,000円の予算執行を予定している.
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