2011 Fiscal Year Research-status Report
ロービジョンと色弱の色認識特性に基づくカラーユニバーサルデザイン原理の研究
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23650161
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊藤 啓 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 准教授 (00311192)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 色覚 / 色弱 / 弱視(ロービジョン) / バリアフリー / ユニバーサルデザイン / CIE xy色度図 / 混同線 / シミュレーション |
Research Abstract |
色弱やロービジョンの人が混同する色の組み合わせを従来より詳細に解析するため、xy色度座標の上で等間隔に並ぶ様に色調整した色票を高精度なカラープリンターで多数用意した。これを用いてまず色弱の人について、混同する色がどのように並ぶかを解析したところ、従来の理論とは異なり、混同する色がxy色度図の上で一直線ではなく、場所によってわずかにカーブすること。また、混同線が色度図の全域にわたって伸びるのではなく、一部の色域では混同が見られないことを見いだした。 周囲とのコントラストが鮮明で黄色を含むというロービジョン者からの要望と、景観を刺激せず彩度が高すぎないものが好ましいという建築デザイナーからの要望を両立する点字誘導ブロックを開発するため、ベースの色8種類と突起の色4種類を試作して組み合わせた誘導ブロックのサンプルを試作し、さまざまな照明下でロービジョン者による実地評価を行い、高評価だった3つの配色を絞り込んだ。さらに、車椅子利用者から寄せられている誘導ブロックの形状と設置間隔についても検討を行った。こうして配色と形状に工夫を加えた誘導ブロックを、東京大学施設部の協力を得て実際にキャンパス内に敷設し、褪色等による経時変化の影響を見るための長期試験を開始した。 並行して、気象庁からの委嘱を受け、気象庁が気象情報の提供に用いている全情報画面の配色を再検討して指針の原案を作成した。このために、気象庁や国内外の各種機関が用いている気象情報画面を蒐集し、色弱、ロービジョン、高齢者の被験者を用いて見分けにくい色の組み合わせや色の違いを認識できる色差の許容範囲を調査した。得られた情報は指針作りの基礎資料として利用した。これらの情報はさらに今後行う実験の情報と組み合わせ、各種色覚の色知覚特性の比較にも利用する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初1年目に予定していた色票を用いたロービジョン者の特性調査は、色票の精密化を図るために若干延期し、新たに作成した色票を用いてこれまで不明だった色弱者の精密な混同色比較をまず行った。この結果、色弱者の混同色について従来と異なる知見が得られた。これは従来の色弱シミュレーションで一部の色域でシミュレーションがうまく実現できない理由を説明しうるものであり、今後さらに解析を行うべき重要な研究課題が見つかった。またロービジョン者の特性調査は、色票の代わりに実際に社会で用いられている気象情報画面を用いて、異なる視点から実施した。結果はこれまでの研究から予想された方向の上に乗っており、今回の研究アプローチの大筋での正しさを証することができた。 今回の研究の大きな目的のひとつであった点字誘導ブロックの作成は、32通りの配色候補から3通りを絞り込んだうえで、大学施設部の協力により、人通りが多い場所に実際に敷設することができた。これによって、単に一時的なサンプルを用いた配色調査でなく、長期的な色の変化による見分けやすさの変化を追うことが可能になったとともに、従来から問題になっていた「点字誘導ブロックが車椅子利用者の障害になる」という問題を解決するための突起形状や配置の改良も実地試験することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今回の研究で発見された色弱者の混同線の精密調査は、今後のシミュレーション改良に重要な知見を提供するものであるので、引き続き詳しく実施する。並行してロービジョン者の色覚特性調査も推進する。点字誘導ブロックについては、タイル等明るい色の道路における配色調査は実際の敷設までこぎ着けたので継続的調査によって効果を検証するとともに、引き続きアスファルト等暗い色の道路における配色設計と実地調査を行い、実社会に存在するすべての状況に対応した指針を作成する。また車椅子と誘導ブロックの干渉問題を解決するためのさらに細かい工夫を検証する。並行して、各種情報提供画面や案内サインの実例を蒐集し、どのような場合に見分けにくくなるのかの検証を行って、理論から予想される見分けにくさとの整合を調べる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
引き続き色弱者やロービジョン者を対象とした特性調査実験や、ロービジョン者に分かりやすく、景観に調和し、車椅子利用者に邪魔にならない点字誘導ブロックの実地試験のための色票・サンプル・試作品等を作成し、被験者による実験を進める。
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Research Products
(2 results)