2012 Fiscal Year Annual Research Report
行動特性の個体差を規定する遺伝的要因の同定と社会形成における生態学的意義の解明
Project/Area Number |
23650162
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
竹内 秀明 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (00376534)
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Keywords | 国内共同研究 |
Research Abstract |
本研究では行動特性を規定する遺伝的背景を同定する目的で、人に慣れやすい性質を持つHdrR-II近交系メダカと臆病で人から逃げ回るHNI-II近交系メダカの外部刺激依存の反応様式を比較した。その結果、連続した視覚刺激に対して、HNI-II近交系は視覚刺激に対して高頻度で逃避様反応を示すが、HdrR-II近交系はあまり反応を示さないことがわかった。このことから、両近交系は一個体レベルで視覚刺激に対する逃避様反応に違いがあり、この反応性の違いがHNI-II 近交系の臆病な行動形質を反映している可能性がある。次に、2つの系統を交配してF2個体を約100個体作出し、各個体の行動検定を行い、研究連携者(成瀬准教授)と共同して全個体のジェノタイピングを行った結果、16番染色体に存在する遺伝子マーカー近傍に反応性の差異と極めて相関の高いゲノム領域があることが判明した。この領域の尤度の強さを示すLOD (logarithm of odds) 値は10であり、5%有意水準に対応する閾値5.3と比較して極めて高い。また興味深いことにHNI-II近交系は新潟由来の野生メダカから作出されたが、同じ北日本の石川県由来Kaga近交系はHdrR-IIと同様の反応性を示した。さらにHNI-IIと同一の野生集団から作成されたHNI-I近交系ではHNI-IIより顕著に低い反応性を示した。よってHNI-II近交系の行動特性は地域固有の行動特性でなく、新潟野生メダカ集団内の遺伝的多型を反映している可能性を考えている。
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