2011 Fiscal Year Research-status Report
視神経再生中に見られる山中因子の活性化機構と神経再生における役割について
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23650163
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
加藤 聖 金沢大学, 医学系, 教授 (10019614)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | ゼブラフィッシュ / 網膜神経節細胞 / 視神経再生 / sox2 / klf4 / c-myc |
Research Abstract |
魚の中枢神経は哺乳類と異なり、神経が損傷を受けても修復再生する。しかし、何故再生できるかについては現在も不明である。他方、京都大学の山中教授らのグループにより、sox2、klf4、oct3/4、c-mycの4つの転写因子を体細胞に導入すると、多分化能を持ったiPS細胞が誘導されることが知られている(2006年)。そこで我々は、魚の視神経が損傷した後、網膜神経節細胞(RGCs)にこの4つの因子(山中因子)が発現し、RGCsが幼若化し、リプログラミングされ、軸索が再生されるのではないか、という仮説をたて実験を行った。その結果、oct3/4を除くsox2、klf4、c-mycの3つの因子が、RGCsで損傷後3~5日に約2倍発現が上昇することが分かった。一方、oct3/4の発現は、その間不変であった。次にRGCsの視神経損傷後の状態を検証するため、分化マーカー(MAP2)、未熟な幹細胞マーカー(ネスチン)、増殖のマーカー(Ash-5)の3つの分子マーカーの発現を見たところ、ネスチンの発現が3~10日にかけて増加し、MAP2の発現はその間に減少した。一方、Ash-5の発現は不変であった。以上から魚のRGCsでは視神経損傷後、内在性に山中因子のうちの3つ(sox2、klf4、c-myc)の発現が上昇し、RGCsが成熟細胞から未分化な幹細胞様に変化し、その結果、視神経軸索が再伸長できるのではないかと考えた。この様なリプログラミングの機構は世界で初めての現象である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
網膜神経節細胞(RGCs)において、視神経損傷後、山中因子のうちsox2、klf4、c-mycの3つの因子の発現がmRNA、蛋白レベルで上がることが確認された。更に、これらの因子に先駆けてLIF遺伝子の発現が確認されているなど、視神経損傷後の各因子の上昇とそのシグナルが推定でき、概ね当初の計画が達成できた。
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Strategy for Future Research Activity |
視神経損傷後、山中因子発現上昇に至るシグナルカスケードとして、前年度に見つけたLIF(leukemia inhibitory factor)のsiRNAないしはモルフォリノによる遺伝子発現抑制実験を、エレクトロポレーション法により実施する。LIF発現を抑制した時の視神経再生への影響を見ることで一連のシグナルの解析が行える。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
消耗品費(試薬類、抗体類、実験動物等)として100万円、及び成果発表のための国内旅費として20万円使用する予定である。
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