2012 Fiscal Year Annual Research Report
視覚野におけるシナプス可塑性と経験依存的機能発達のサイトカインによる調節
Project/Area Number |
23650165
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
小松 由紀夫 名古屋大学, 環境医学研究所, 教授 (90135343)
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Keywords | 神経科学 / 脳・神経 / 視覚野 / シナプス可塑性 / スケーリング / 眼優位可塑性 / サイトカイン |
Research Abstract |
感受性期に片眼遮蔽すると、遮蔽眼の視覚刺激に対する反応が減弱し、非遮蔽眼刺激に対する反応が増強する。我々は、非遮蔽眼反応の増強を担うのはT型Caチャネル依存性長期増強(T-LTP)であることを提唱しているが、TNF-α欠損マウスを用いた研究から、スケーリングによる興奮性シナプスの増強が担うという説も提唱されている。本研究は、この2つの可能性のどちらが正しいかを明らかにすることを目標とした。 昨年度のラットを用いた薬理学的研究はTNF-αがT-LTPに必要であることを示した。本年度は、スケーリング説を提唱しているグループが使っているものと全く同じ由来のTNF-α欠損マウスを使って、ラットで得られた結果を確認する実験を行った。野生型マウスにおいて、2Hz刺激を15分間与えるとラットと同様にT-LTPが誘発された。TNF-α欠損マウスではT-LTPは全く起こらなかったが、3 µMのTNF-α存在下では野生型と同様にT-LTPが生じた。これらの結果は、マウスにおいてもT-LTPの誘発にTNF-αによる活性化が必須であることを示す。 片眼遮蔽開始後3日で先ず遮蔽眼反応の減弱が起こり、4日以降に非遮蔽眼反応の増強が起こる。この所見を踏まえて、3日と6日間片眼遮蔽したラット及び遮蔽なしのコントロール・ラットから視覚野スライス標本を作製し、両眼視領域の2/3層錐体細胞から微小興奮性シナプス後電流を記録し、その振幅を比較することにより、片眼遮蔽によりスケーリングが起きるかを検証した。両眼視領域からサンプルしたことを注意深く確認した細胞を用いて解析した結果、3群間に量子振幅の大きさに差は全く認められない結果が得られ、スケーリングは起きないことが判明した。 以上の実験結果は、非遮蔽眼刺激に対する反応の増強を担うのはスケーリングではなく、T-LTPであることを強く支持する。
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