2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23650168
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
稲垣 直之 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 准教授 (20223216)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 脳・神経 / 発生・分化 / 神経科学 / 膜輸送 / 成長円錐 / Singar1 / Rab33a / Golgi装置 |
Research Abstract |
本研究は、「神経細胞がいかにして過剰な軸索形成を抑制するのか」という点に絞って、脳内における神経極性の成立と維持の分子機構の解明を目指す。本研究では、培養神経細胞の過剰軸索形成を抑制するSingar1のノックアウトマウス脳内における神経細胞の形態異常を解析する。また、Singar1の機能の分子メカニズムの解明のためにSingar1と直接相互作用するRab33aの機能を解析する。 本年度は、Singar1と相互作用するRab33aの機能解析を重点的に行った。まず、Rab33aの発現抑制と過剰発現解析により、Rab33aが軸索伸長活性を有することが解った。興味深いことに、Rab33aは軸索内でゴルジ装置由来の膜に存在するSynaptophysinと共局在することが解った。そこで次に、Rab33a発現抑制させた神経細胞において、Synaptophysinを含む小胞の軸索内での局在変化や輸送への影響を解析したところ、Rab33aを発現抑制させた神経細胞では、Synaptophysinを含む小胞の突起先端への輸送量がコントロールの細胞と比較し、有意に減少していることがわかった。また、内在性Synaptophysinの軸索先端への局在も有意に減少していたことから、Rab33aがSynaptophysinを含む膜小胞を軸索に沿って軸索先端へ順行性に輸送するのに重要な役割を果たす可能性が示唆された。 また、pH感受性GFP融合Synaptophysinを用いることで、軸索先端における膜融合頻度の評価を行った。その結果、Rab33aを発現抑制させた細胞では、小胞の融合頻度が減少していることが分かった。以上の結果から、Rab33aがこれまで機能未知であったゴルジ装置から軸索先端への順行性の小胞輸送と膜融合に関わること、さらに、Rab33aが軸索の伸長に関与することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(理由)神経細胞は、軸索を伸長する際に細胞膜の面積を急激に拡大する必要があるが、その分子機構はわかっていなかった。本研究でRab33aの機能解析をすることにより、Rab33aがこれまで機能未知であったゴルジ装置から軸索先端への順行性の小胞輸送と膜融合に関わること、さらに、Rab33aが軸索の伸長に関与することを示唆するデータが得られた。このような成果は当初予想されていなかったが、これまでに不明だった軸索伸長に関する基本的な問題に光を当てることとなり、研究は予想外の大きな発展がみられた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、本研究のもう一つの課題であるSingarノックアウトマウスの解析を重点的に行う。興味深いことにSingar ノックアウトマウスは肺や循環器系に明らかな異常は認められないが、生直後に死亡する。従ってノックアウトマウスの脳・神経系に異常があることが予想され、特に脳神経系に重点を置いて、嗅球から脊髄に至るまで神経細胞の形態を詳細に解析する。まず、ニッスル染色で脳の構造、細胞体の数や分布をコントロールの脳と比較する。また、脳内神経細胞のごく一部を染色することができるゴルジ染色で個々の神経細胞の形態を詳細に可視化し、軸索および樹状突起の形態、特に過剰軸索の形成に焦点を絞って詳細に解析を行う。これにより、脳内の様々な神経細胞におけるSingar1 の機能を網羅的に調べ、脳内における過剰軸索の形成抑制機構を解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究の遂行には、タイムラプス顕微鏡(既存)、レーザーピンセット(大学内の杉浦研究室に設置)、クリーンベンチ(既存)、CO2インキュベーター(既存)、遺伝子導入装置(既存)、コンフォーカル顕微鏡(大学共同利用施設に設置)、実験動物飼育施設(大学共同利用施設)、クラスターコンピュータ(大学共同利用施設に設置)等が必要であり、現施設で遂行が可能である。また、現施設で遂行が可能であるので研究経費の使用内訳を主に消耗品費として使用する。消耗品として、1次培養神経細胞および組織を得るための実験動物、細胞・組織培養のための血清・メディウムやガラス・プラスチック器具、遺伝子発現やライブイメージング等に必要なDNA作成のための分子生物学用試薬等が必要である。また、研究成果発表および研究打ち合わせのための旅費と、英語論文校閲のための謝金も必要である。
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Research Products
(3 results)