2011 Fiscal Year Research-status Report
リモコン光操作による運動学習の促進と運動障害の改善への試み
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23650171
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
岩井 陽一 独立行政法人理化学研究所, 神経グリア回路研究チーム, 研究員 (40332332)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 光遺伝学 / 運動学習 / アストロサイト |
Research Abstract |
1、無線LED照射装置の効果確認。錐体細胞でChR2を発現するトランスジェニックマウスの運動野上の頭蓋骨に無線LEDを装着し、麻酔下の光照射によって、手足に筋活動電位および筋収縮が誘発されることを確認した。さらに、自由行動時でも運動野の経頭蓋照射によって、筋収縮が誘発されることを観察した。このように、自由行動時の光遺伝学実験に適した無線の光照射装置を開発し、成果として報告した(Iwai et al., Neurosci Res 2011)。2、無線LEDの改良。無線LEDの小型・軽量化と集光性の向上を進めている。報告済みの無線LEDは直径3mmの円筒型であるが、より小型の表面実装型のLEDでも、ChR2トランスジェニックマウスに手足の筋収縮を誘発できる結果を得ている。受信機についても表面実装型の各パーツを入手し、動作確認を済ませている。現在、プリント基板化を進めている。3、任意の細胞種の細胞内カルシウムを光学操作できるトランスジェニックマウスの作製。OptoXRを発現させた培養細胞で、光照射によって細胞内カルシウム濃度が上昇することを確認した。OptoXRを任意の細胞種(例:大脳皮質興奮性細胞)で発現させる目的で、二種類のコンストラクトを構築した。両方のコンストラクトの導入を終え、現在トランスジェニックマウスを樹立中である。4、運動学習系の立ち上げ。餌取り用の装置を作製・改良し、運動学習の実験を開始している。訓練を受けたマウスで、餌取り成功率が上昇し、最初期遺伝子のArcが運動野で発現する結果を得ている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
無線LED照射装置の開発および改良は予定通り進められた。アストロサイトの細胞内カルシウムを光操作できるトランスジェニックマウスの作製は、コンストラクトの構築に予定以上の時間を要した。アストロサイトで選択的に発現する遺伝子のプロモーターとOptoXRを繋いだコンストラクトに加え、OptoXRの発現を時間的・空間的により正確に制御できるコンストラクトも構築した。各々のコンストラクトが15kb以上と長いことと、OptoXRの挿入に用いた制限酵素の活性が高くないこともあり、数か月の試行錯誤を要した。運動学習系の立ち上げは改良に時間を要した。餌を特定の場所に短時間で供給することは容易ではなく、さらに、供給中の餌にマウスが手を伸ばすことも問題であった。そこで、任意のタイミングで特定の場所に餌を供給できる装置を開発した。この供給装置と無線LED 装置を連動制御することで、餌を取る前、餌を取る際、あるいは、餌を取った後のLED照射が容易になる。現在、餌台の高さ、餌までの距離を調節し、餌取り学習に好適な餌の場所の決定を急いでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
1、アストロサイトの細胞内カルシウムを光学操作できるトランスジェニックマウスの樹立。樹立中のトランスジェニックマウスから、OptoXRがアストロサイトで特異的に強く発現している系統を選別する。選別した系統の脳を用いて、光照射によるカルシウム上昇の誘発をイメージングで確認する。2、運動学習系の確立および学習時に活性化される脳領域の特定。餌取り運動学習系を最適化する。訓練マウス数を増やし、運動能の向上を統計的に確認する。また、学習の各段階で最初期遺伝子が発現する脳領域を特定する。さらに、その脳領域の神経細胞とアストロサイトの活動を電気生理実験やカルシウムイメージングで調べたい。3、運動学習期におけるアストロサイトの細胞内カルシウムの光学操作。1、のトランスジェニックマウスに対して、2、で特定した脳領域上に小型・集光型の無線LEDを装着する。餌取り学習の各段階で任意のタイミングでアストロサイトを光活性化し、運動学習の促進を試みる。4、アストロサイトの細胞内カルシウム操作による血管・シナプスの可塑的変化の検討。1、のトランスジェニックマウスの脳を光照射した後、光照射部位でインシュリングロースファクター等の血管内物質が局所的に脳内に取り込まれるかを調べる。また、照射部位でシナプス形態に変化が見られないかを調べる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
進捗が遅れているアストロサイトの細胞内カルシウムを光操作できるトランスジェニックマウスの樹立のために、OptoXRの発現を調べるための試薬費とカルシウムイメージング用の試薬費を、引き続き申請する。餌取り運動学習系の最適化を継続するために、装置の改良製作費を申請する。運動学習時に活性化される脳領域を特定するために、最初期遺伝子の発現を調べるための試薬費と電気生理学実験に必要な試薬費を申請する。運動学習期におけるアストロサイトの細胞内カルシウムを光学操作するために、無線LEDの各パーツおよびプリント基板費と運動学習実験のデータ保持・バックアップのために電算機関連費を申請する。アストロサイトの細胞内カルシウム操作による血管・シナプスの可塑的変化を検討するために、血管内物質の局在およびシナプスの形態解析に必要な試薬費を申請する。
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