2011 Fiscal Year Research-status Report
脳内各領域での神経伝達物質受容体翻訳後修飾パターンの同定と応用
Project/Area Number |
23650187
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
林 崇 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80547472)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | シナプス形成 / グルタミン酸 / 受容体 / 翻訳後修飾 |
Research Abstract |
学習や記憶といった脳神経系の可塑的な高次機能は、様々な視点から研究が進められている。シナプスは、この神経可塑性を担う神経ネットワークにおける神経細胞同士の接点である。中枢神経系でのシナプス可塑性の分子レベルの素過程として、神経伝達物質受容体の蛋白質翻訳後修飾による機能制御が示されている。本研究は、哺乳類中枢神経系の主要な興奮性神経伝達を担うイオンチャンネル型グルタミン酸受容体について、そのリン酸化やパルミトイル化といった可逆的な翻訳後修飾に着目し、脳内各領域での各発達段階におけるグルタミン酸受容体の時空間的な翻訳後修飾パターンの変化を解析する。平成23年度は、先ず、興奮性シナプス伝達とシナプス可塑性の過程で重要な役割を果たす、AMPA型グルタミン酸受容体(AMPA受容体)とその結合蛋白質の翻訳後修飾に関して解析を行なった。その結果、パルミトイル化を触媒する一群のパルミトイル・アシルトランスフェラーゼの内、躁鬱病および統合失調にそれぞれ関連するDHHC-5とDHHC-8が、AMPA受容体の結合蛋白質であるGRIP1に会合して、GRIP1のパルミトイル化を亢進し、神経細胞において樹状突起へのGRIP1の輸送を制御する事を見出した。更に、このGRIP1パルミトイル化は、結合するAMPA受容体の輸送を促進していた(Neuron 73, 482-496 (2012))。また同時に、生体でのグルタミン酸受容体の翻訳後修飾に関し、マス・スペクトル法を用いた解析を行なった。これまでに、成体マウス全脳可溶化液から調整したNMDA型グルタミン酸受容体(NMDA受容体)のGluN2B (NR2B)サブユニットについて、以前にin vitroレベルで見出していたパルミトイル化修飾部位が、in vivoでもパルミトイル化を受けていることを一部同定した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに、AMPA受容体とその結合蛋白質に関してパルミトイル化による新たな分子制御機構を見出し、その研究成果を公刊した。これは、グルタミン酸作動性シナプスの可逆的翻訳後修飾による制御機構を明らかにすると共に、躁鬱病や統合失調といった精神疾患の分子レベルでの発症機構の一端を示唆するものである。また、グルタミン酸受容体自体の翻訳後修飾に関しては、マス・スペクトル法による解析を行ない、in vivoでのパルミトイル化修飾を確認した。
|
Strategy for Future Research Activity |
マス・スペクトル法を用いたパルミトイル化解析に関しては、各グルタミン酸受容体サブユニットについて、条件検討を順次進める。また、リン酸化修飾に関しては、各グルタミン酸受容体サブユニットのリン酸化部位特異的抗体を使った解析を行なう。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度研究費は、当初計画通り、主に試薬や消耗品等の購入に充てる。また、研究成果を取りまとめ、国内外での学会に参加し、研究成果の発表および情報収集と情報交換を行なう。
|