2012 Fiscal Year Annual Research Report
脳内各領域での神経伝達物質受容体翻訳後修飾パターンの同定と応用
Project/Area Number |
23650187
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
林 崇 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80547472)
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Keywords | シナプス形成 / グルタミン酸 / 受容体 / 翻訳後修飾 |
Research Abstract |
学習や記憶といった脳神経系の可塑的な高次機能の発現において、シナプスは神経可塑性を担う神経ネットワークにおける神経細胞同士の接点である。中枢神経系でのシナプス可塑性の分子レベルの素過程として、神経伝達物質受容体の蛋白質翻訳後修飾による機能制御が知られている。本研究は、哺乳類中枢神経系の主要な興奮性神経伝達を担うイオンチャンネル型グルタミン酸受容体について、そのリン酸化やパルミトイル化といった可逆的な翻訳後修飾に着目し、脳内各領域での各発達段階におけるグルタミン酸受容体の時空間的な翻訳後修飾パターンの変化を解析した。平成23年度は、興奮性シナプス伝達とシナプス可塑性の過程で重要な役割を果たす、AMPA受容体とその結合蛋白質の翻訳後修飾に関して解析を行なった。その結果、パルミトイル化を触媒する一群のパルミトイル・アシルトランスフェラーゼの内、躁鬱病および統合失調症にそれぞれ関連するDHHC-5とDHHC-8が、AMPA受容体結合蛋白質であるGRIP1に会合して、GRIP1のパルミトイル化を亢進し、神経細胞において樹状突起へのGRIP1の輸送を制御する事を見出した。更に、このGRIP1パルミトイル化は、AMPA受容体の輸送を促進していた(Neuron 73, 482-496 (2012))。また同時に、生体でのグルタミン酸受容体の翻訳後修飾に関し、マス・スペクトル法を用いた解析を行なった。そして、成体マウス全脳可溶化液から調整したNMDA受容体のGluN2B (NR2B)サブユニットについて、以前にin vitroレベルで見出していたパルミトイル化修飾部位が、in vivoでもパルミトイル化を受けていることを一部同定した。平成24年度は、このNMDA受容体パルミトイル化のシナプスにおける局在制御とその生理的意義を明らかにした(PLoS One 7, e49089 (2012))。
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