2011 Fiscal Year Research-status Report
ヒトES細胞の神経分化を制御するノンコーディングRNAの解析
Project/Area Number |
23650194
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
岡田 洋平 慶應義塾大学, 医学部, 特任講師 (30383714)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | ncRNA / ヒトES細胞 / 神経幹細胞 / 神経分化 |
Research Abstract |
これまでの研究で確立したヒトES細胞からの神経幹細胞の誘導システムを、ヒト神経発生のin vitroモデルとして活用し、神経分化に重要な役割を果たすncRNAを同定し、その機能を解析する。 今年度は、ヒトES細胞から神経分化誘導の各段階においてゲノムタイリングアレイによる解析を行い、神経分化に伴って発現が大きく上昇する転写領域を同定した。その中で、非翻訳領域と考えられ、これまでに報告されていない、57個の転写領域を同定した。定量的RT-PCR解析により、この57個の転写領域では、未分化状態に比べて最大10,000倍以上に発現が上昇していることを確認した。 次に、ヒトES細胞を、単層接着培養で迅速・簡便に神経分化誘導する培養システムの開発を行った(迅速神経分化誘導法)。この方法では、未分化ヒトES細胞を単一細胞まで分散した上で、接着培養のプレートに単層接着培養で播種することで、分化誘導の開始から6日間で、神経幹細胞のマーカーであるSOX1を発現誘導することに成功した。また、この方法では、分化誘導の開始から神経細胞の誘導まで、細胞を継代することなく、培地交換のみで培養することができるため、簡便に培養でき、スクリーニングに適していると考えられた。 そこで、この方法を用いて、神経分化に重要な役割を果たすことが知られる既知の遺伝子を、Neonを用いたエレクトロポレーション法によりノックダウンしたところ、分化誘導に伴うSOX1の発現上昇が抑えられることを確認できた。この結果から、これらの既知遺伝子は、スクリーニングにおけるpositive controlとして使用できること、迅速神経分化誘導法が、神経分化誘導において重要な役割を果たす遺伝子のスクリーニングに有用であると考えられた。 また、SOX1のレポーターヒトES細胞である、ヒトSOX1-ffLucヒトES細胞の作成を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、ゲノムタイリングアレイを用いて神経分化に伴って発現が上昇するncRNAを57個(114個)同定することができた。また、スクリーニングのための迅速神経分化誘導法の開発に成功した。また、神経分化を可視化するSOX1レポーターヒトES細胞は、現在樹立中であり、次年度にかけて進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
1. SOX1レポーターヒトES細胞の樹立とその評価樹立したSOX1レポーターヒトES細胞の各クローンを、従来より用いてきたヒトES細胞から神経幹細胞を誘導する方法を用いて神経分化誘導し、各クローンの神経分化能を評価する。また、神経分化誘導前後で、レポーターである蛍光タンパクVenusまたは、Luciferaseの活性により評価し、神経分化レポーターとしての機能を評価する。さらに、迅速神経分化誘導法を用いて、同様に神経分化能の評価とレポーターであるVenus、Luciferaseの発現を評価する。さらに、同定したpositive controlのノックダウンにより、神経分化誘導を阻害できるかを確認する。2. siRNAを用いたノックダウンによるスクリーニングと機能解析次に、57個の転写領域(114個の転写領域)について、Neonによるエレクトロポレーションにより、siRNAを導入し、神経分化の程度をSOX1レポーター遺伝子の発現、または、SOX1の発現定量解析(定量的RT-PCR)により評価することで、スクリーニングを行う。数回のスクリーニングを行ってターゲットを20個以下に絞り込んだ上で、さらに複数のsiRNAを作成し、再現性の確認を行う。最終的には5個以下に絞り込み、shRNAによる長期抑制、全長クローニング、強制発現などの実験を行い、同定したncRNAの機能解析を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度に引き続き、ヒトES細胞の培養を行う予定である。特に神経分化を可視化するSOX1レポーターヒトES細胞の樹立は、次年度に引き続き行う予定であり、この樹立に必要な試薬、器具類は、今年度より繰り越して次年度においても購入予定である。未使用額の発生は、効率的な物品調達を行った結果であり、翌年度の消耗品の購入に充てる予定である。 次年度からは、本格的にノックダウンによるスクリーニングを開始するため、必要な試薬、器具類などの消耗品を主に購入予定である。また、情報収集、成果発表のための学会等に参加予定であり、そのための旅費、参加費、および、論文投稿のための準備に必要な英文校正料や投稿料を支出予定である。
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Research Products
(10 results)
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[Journal Article] RNA-Binding Protein Musashi1 Modulates Glioma Cell Growth through the Post-Transcriptional Regulation of Notch and PI(3) Kinase/Akt Signaling Pathways2012
Author(s)
Muto J, Imai T, Ogawa D, Nishimoto Y, Okada Y, Mabuchi Y, Kawase T, Iwanami A, Mischel PS, Saya H, Yoshida K, Matsuzaki Y, Okano H
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Journal Title
PLoS One
Volume: 7(3)
Pages: e33431
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Effect of κ-opioid receptor agonist on the growth of non-small cell lung cancer (NSCLC) cells2011
Author(s)
Kuzumaki N, Suzuki A, Narita M, Hosoya T, Nagasawa A, Imai S, Yamamizu K, Morita H, Nagase H, Okada Y, Okano HJ, Yamashita JK, Okano H, Suzuki T, Narita M
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Journal Title
Br J Cancer
Volume: 106(6)
Pages: 1148-52
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Grafted human induced pluripotent stem cell-derived neurospheres promotes motor functional recovery after spinal cord injury in mice2011
Author(s)
Nori S, Okada Y, Yasuda A, Tsuji O, Takahashi Y, Kobayashi Y, Fujiyoshi K, Koike M, Uchiyama Y, Ikeda E, Toyama Y, Yamanaka S, Nakamura M, Okano H
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Journal Title
Proc Natl Acad Sci USA
Volume: 108(40)
Pages: 16825-30
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Gene targeting and subsequent site-specific transgenesis at the β-actin (ACTB) locus in common marmoset embryonic stem cells2011
Author(s)
Shiozawa S, Kawai K, Okada Y, Tomioka I, Maeda T, Kanda A, Shinohara H, Suemizu H, Okano HJ, Sotomaru Y, Sasaki E, Okano H
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Journal Title
Stem Cells and Development
Volume: 20(9)
Pages: 1587-99
DOI
Peer Reviewed
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