2011 Fiscal Year Research-status Report
独自に作成したミエリン肥厚化マウスを用い、脱ミエリン病の治療標的分子を解明する
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23650200
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Research Institution | National Research Institute for Child Health and Development |
Principal Investigator |
山内 淳司 独立行政法人国立成育医療研究センター, 薬剤治療研究部, 室長 (20335483)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ミエリン形成 / 脱ミエリン現象 / 分子標的治療 / シグナル伝達 / グリア細胞 / 神経細胞 / 共培養 / 組織形成 |
Research Abstract |
研究計画初年度は、in vitroでの脱ミエリン現象を抑制する実験を中心に行っている。[脱ミエリン現象を再現する共培養]胎生15日目のラットの後根神経節(DRG)を単離し、トリプシンで細胞を分散させ、それをコラーゲンコートしたシャーレにまく。その後3週間の間にNGFを含む培養液とNGFとフルオロウリジンを含む培養液で交互に培養することによって、線維芽細胞とシュワン細胞前駆細胞を除去し、精製DRG神経細胞を得た。一方、新生児ラットの座骨神経からコラーゲン/トリプシン混合液を用いて細胞を分散し、シャーレにまき、AraC処理を行い、線維芽細胞を除去し、精製シュワン細胞を得る。このシュワン細胞をトリプシン溶液ではがし、先に精製したDRG神経細胞上にまき、ミエリンを形成させた。共培養後、右図のCMT病変異をもった原因遺伝子をコードした少量のレトロウイルスをシャーレに添加する。このとき、増殖性のシュワン細胞にしかレトロウイルスは感染できないため、病態遺伝子はシュワン細胞でしか発現しない。その後、共培養を継続すると、一か月後から脱ミエリン現象が起こる。これは応募者が独自に開発した培養系である。ミエリンの有無はマーカー蛋白質の染色で判断される。[脱ミエリン現象の改善効果の検討]この条件下で、IA型CMT病の変異遺伝子をコードしたレトロウイルスの感染時に、「Dock7」を標的としたRNA干渉配列をコードしたウイルスを共感染させたところ、脱ミエリン現象の改善が見られ、その経路に関与する分子群を単離することに成功しており、この分子群に関しても現在解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ミエリン変性を再現する培養系の作成にも成功し、これを用い、脱ミエリン現象を改善する分子の同定に成功しているため、おおむね順調に研究は進展していると考えられる。今後はさらに、これら治療標的分子群の同定を進めることが重要である。
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Strategy for Future Research Activity |
IA型CMT病の変異遺伝子をコードしたレトロウイルスの感染時に、Dock7を標的としたRNA干渉配列をコードしたウイルスを共感染させたところ、脱ミエリン現象の改善が見られた。Dock7経路の分子群をノックダウンするための配列をコードしたレトロウイルスと脱ミエリンが主要な病態を示すCMT病変異をもつ他の遺伝子(上の表を参照)をコードするウイルスとの共感染を行い、多様な原因遺伝子に起因した脱ミエリン現象もDock7経路上の分子のノックダウンで改善されるかを検討する。今後はさらに、これら治療標的分子群の同定を進めることが重要である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究計画初年度の計画を推進するとともに、研究計画二年目以降は、in vivoにおける実験を並行する。治療標的分子群のノックダウンマウスの作成は、治療標的分子群を標的としたRNA干渉(ノックダウン)配列をコードし、緑色蛍光蛋白質を発現する配列を有したDNA断片を、通常のトランスジェニック(TG)マウスの作成方法と同じ要領で受精卵にインジェクションし、行う(オリジナルの作成方法の文献:Pengら Proc.Natl.Acad.Sci.USA 2006,103,2252-2256)。応募者らはインジェクションするRNA干渉配列のプロモーター付近と転写終了直後の配列に改良を加え、in vivoでのノックダウン効率を上昇させることに成功している。この治療標的モデルマウスと病態モデルマウスを交配し、今後脱ミエリン現象の改善に関与する分子を明らかにしていく。
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Research Products
(4 results)